2019年4月12日金曜日

5月10日に東京弁論再開!

裁判長交代せず、強引に再結審か
判決言い渡し期日も指定の公算?

中断していた東京訴訟の口頭弁論が5月10日(金)午後3時から東京地裁706号法廷で開かれることになりました。

東京訴訟は3月20日に予定されていた判決言い渡しが延期された後、裁判官忌避申し立ての即時抗告が東京高裁で却下されたため(同26日付)、最高裁への特別抗告と事態は進み、弁論は中断していました。一方、裁判所にも動きがあり、東京地裁でこの訴訟を担当する原克也裁判長が4月1日付人事異動で東京高裁に、佐古剛裁判官(右陪席)が鹿児島地裁に転出したことが明らかになりました。この異動により裁判官は交代するものと植村弁護団は予想していました。ところが、裁判所からの連絡では、原裁判長ほか裁判官全員に変更はない、とのことです。
植村弁護団によると、どういう方法かはわかりませんが、裁判官は異動してもこの訴訟は引き続き担当し、交代はしない、ということになったようです。5月10日の期日には、2月に再開されたまま忌避申し立てで中断していた口頭弁論が再び結審され、判決日が指定されることが予想されます。
裁判所の2月以降の強引で性急な進め方からすると、判決文がすでに原裁判長名でほぼ完成しているのかもしれません。だとすれば、言い渡し自体は別の裁判官による代読になったとしても判決内容はそのまま言い渡されることになるのではないか、と植村弁護団は警戒しています。


2019年4月3日水曜日

名誉棄損に賠償命令

 東京地裁判決               
 信州大・元医学部長が訴えた裁判で 

「捏造」と決めつけた雑誌と筆者に

賠償、謝罪、記事削除を命令!


医学分野の研究成果を雑誌やウェブで「捏造」と決めつけられた大学教授が、発行元の出版社と筆者、編集長を名誉毀損で訴えた裁判の判決が3月26日東京地裁であり、裁判所は被告に慰謝料の支払いと謝罪広告の掲載、ウェッブ記事の削除を命じました。原告の請求をすべて認めた「完全勝訴」です。
この判決を報じた記事を以下に引用します。また、この裁判の重要な書面(原告の訴状、原告と被告の尋問調書、原告の最終準備書面)と、敗訴した筆者のコメントがインターネットで公開されています。そのURLも記しておきます。
※は編注です。

 ■朝日新聞の記事(朝日新聞デジタル3月27日)
(見出し)
子宮頸がんワクチン研究めぐる記事
月刊誌側に賠償命令
(記事)
子宮頸(けい)がんワクチンの副作用に関する研究発表を「捏造(ねつぞう)」と報じた月刊誌「ウェッジ」の記事で名誉を傷つけられたとして、信州大医学部の池田修一・元教授が発行元と、執筆したジャーナリストらに約1100万円の損害賠償などを求めた訴訟の判決が26日、東京地裁であった。男沢聡子裁判長は「記事の重要な部分が真実とは認められない」と述べ、ウェッジ側に330万円の支払いと謝罪広告の掲載などを命じた。
ウェッジの2016年7月号やウェブマガジンは、池田氏が同年3月に発表した研究について、ワクチンの影響が強く出たマウス実験の結果を意図的に抽出したと報じた。判決は「池田氏が虚偽の結論をでっちあげた事実は認められない」と指摘。裏付け取材も不十分で、ウェッジ側が「捏造」だと信じた「相当な理由はない」と述べた。
池田氏は「私の主張を的確に捉えてくれた判決」と評価。同社は「判決を真摯(しんし)に受け止めつつ、対応を検討する」とコメントした。

■弁護士ドットコムニュース(3月26日) https://www.bengo4.com/c_7/n_9425/
(みだし)
HPVワクチン名誉毀損 
出版社などに330万円の支払いを命じる 東京地裁
(記事)
子宮頸がんの原因となるヒトパピローマウイルス(HPV)の感染を予防するための「HPVワクチン」の副反応を研究している元信州大医学部長の池田修一氏が、月刊誌「Wedge」の記事で名誉を毀損されたとして、出版社や医師でジャーナリストの村中璃子氏らを訴えていた裁判は3月26日、東京地裁で判決があった。
男澤聡子裁判長は、出版元(ウエッジ)や村中氏、当時の編集長に対し、330万円の支払いと謝罪広告の掲載、ネット記事中の記述の一部削除を命じた。
●「捏造」の表現が争点に
村中氏らは、「Wedge」の2016年7月号や関連するネットの記事で、池田氏が厚労省の成果発表会(2016年3月)で行なった発表の問題点を指摘し、見出しも含め「捏造」という言葉を複数回使った。
池田氏は、意図的な不正はしていないと主張し、「捏造」は名誉棄損に当たるとして、約1100万円の損害賠償や謝罪広告の掲載などを求めて提訴。対する村中氏は、スラップ(いやがらせ)訴訟だと反訴していた。
判決では、池田氏が「自分に都合が良いスライドだけを選び出した」などとする記述について、事実とは認められないと判断。裏付け取材も不足しているとして、真実相当性も否定した。
なお、研究発表そのものについては、厚労省が「国民の皆様の誤解を招いた池田氏の社会的責任は大きく遺憾」と発表。所属していた信州大が設けた外部有識者による調査委員会も「混乱を招いたことについて猛省を求める」などと報告している。

■NHK(長野放送局)のニュース(3月26日)
(みだし)雑誌記事は名誉棄損 賠償命じる
(以下、記事と映像)

■WEBニュースサイト「Buzzfeed」(3月26日)
(みだし)
HPVワクチン「捏造」報道の名誉毀損訴訟 村中璃子氏らが全面敗訴
「判決の内容と子宮頸がんワクチンの安全性はまったく関係ない」
(以下記事URL)
※裁判の争点と判決の骨子、判決に対する原告、被告のコメントなどが詳しく書かれている

■「守れる命を守る会」訴訟記録公開 
訴訟記録の一覧 URL=https://www.mamoreruinochi.com/top/publication/
※「守れる命を守る会」は「科学的根拠に基づいた言論を支援する」ことを掲げる団体で、この裁判では原告ではなく、被告側を支援している。代表は産婦人科医の石渡勇氏。同会は、訴訟の経緯解説と、訴状、調書、準備書面、証拠、意見書などの重要書類をホームページで公開している。なお、判決文は公開していない(4月3日現在)


以下は同会HP上のURL

■原告(池田修一氏)の訴状
※2016年8月17日付。名誉毀損とされた記事も資料として収録されている。池田氏は、当時、信州大学の副学長と医学部長を兼ねていた。厚生労働省の子宮頸がんワクチン研究班の統括責任者もつとめていた。専攻は神経内科。雑誌発売後に、副学長と医学部長を辞任し、2018年定年退官。現在は同大で特任教授として勤務している。
※ウエッジはJR東海系の出版社が発行する月刊ビジネス誌。東海道新幹線のグリーン車内で無料常備されるほか一般書店でも販売されている。


■原告(池田修一氏)の尋問調書
※2018年7月30日に行われた池田氏の本人尋問調書。捏造決めつけによって受けた被害について次のように語っている。「ああいう訴えが出た途端に私はもうそれは罪人のような扱いになっちゃって一切医学部長室のパソコンとか、そういうことも凍結されてしまって、使えなくなっちゃいましたから、通常の診療業務に大きな支障を来しました。とうとう挙げれば枚挙にいとまがないようになりましたし、結局、捏造、不正という言葉のレッテルを言葉を貼られて、私は日常診療、日常の研究活動も実際にできなくなったということです。さらに、私子供も同じ領域で働いているんですが、子供たちも診療の時に、あ、捏造先生の息子ですか、というようなことまで言われて、私はかなりの名誉を毀損されています」

■被告(村中璃子氏)の尋問調書
※7月31日に行われた村中氏の本人尋問調書。同氏は記事の筆者。尋問の後半では、裁判長と裁判官が執筆に至る取材経過について、詳細な説明を求めている。当該記事によるとプロフィルは
「むらなか・りこ 医師・ジャーナリスト。一橋大学社会学部・大学院卒、社会学修士。北海道大学医学部卒。WHO(世界保健機関)の新興・再興感染症対策チーム等を経て、京都大学大学院医学研究科非常勤講師も務める」
とある。

■被告(大江紀洋氏)の尋問調書
※同日に行われた大江氏の本人尋問調書。同氏は当時、JR東海から出向し、雑誌「Wedge」の編集長を務めていた。「捏造」表現は同氏が主導していたことが尋問で明かされている。

■原告側の最終準備書面
※原告(池田氏)が2018年11月1日付で提出した書面。被告側の強引で一方的な取材方法や事実関係の確認が不十分だったことを指摘し、被告側には真実性、真実相当性、公益目的性がないことを論述している。村中氏については、結審に至るまで、本名や住所・連絡先など本人の基本情報を明らかにしなかったことを問題にし、ジャーナリストとしての責任から逃れている、と厳しく批判している。大江氏については、当該記事掲載号の発売前に同誌を信州大学と厚生労働省に送付し、処分や調査を求めていたことも問題とした。同氏は信州大学学長に書状を添えて「大学として何らかの措置をとるべき」と圧力を加えていたという。このような振る舞いは編集者にあるまじき行為であり、神戸松蔭女学院大学に就職が内定していた植村隆氏への妨害攻撃と同じではないか。最終準備書面は、大江氏のこの行動を植村バッシングに火をつけた週刊文春に重ね合わせて、次のように批判している。「攻撃相手である原告の勤務先に圧力を加える被告大江の手法は、『週刊文春』2014年2月6日号が「“慰安婦捏造”朝日記者がお嬢様女子大学教授に」という記事を掲載し、当該大学に対して「重大な誤り、あるいは意図的な捏造があり、日本の国際イメージを大きく損なったとの指摘が重ねて提起されています。貴大学は採用にあたってこのような事情を考慮されたのでしょうか」と書いた質問状を送った『週刊文春』の手法に酷似している」(同書面10ページ)

■敗訴した村中氏のコメント
※2019年3月26日に発表した。英文も併記されている。


雑誌「Wedge」2016年7月号の
目次(上)と記事トビラページ(下)



2019年3月30日土曜日

3月20日東京集会

植村裁判報告集会は3月20日、東京・日比谷公園内の図書文化館で開かれた。平日午後2時からの開催にもかかわらず会場(同館地下1階小ホール)には130人ほどの市民、支援者らが集まり、弁護団報告と、対談などに耳を傾けていた。

この日に予定されていた東京訴訟判決は延期となり、弁論もなかった。集会では最初に、東京訴訟の判決延期の背景にある裁判所の異例な対応について弁護団から詳しい説明があり、さらに、4月25日に始まる札幌訴訟控訴審についての報告があった。対談では、青木理氏(ジャーナリスト)と中島岳志氏(東京工業大教授)が「植村裁判をめぐる日本社会の底流」を1時間、語り合った。この後、植村氏の近況報告、映像ドキュメント「標的」短縮版の上映、訴訟費用カンパの呼びかけがあり、集会は午後4時15分に終わった。

対談「植村裁判をめぐる日本社会の底流」

東京工大教授中島岳志氏  ジャーナリスト青木理氏

青木、中島両氏とも、植村バッシングとそれに続く植村裁判には、早い時期からかかわってきた。青木氏は2014年12月に、植村氏と朝日新聞関係者へのロングインタビューをもとにした『抵抗の拠点から――朝日新聞「慰安婦報道」の核心』(講談社)を出版した。中島氏は北海道大に勤務していた当時、植村氏と北星学園大への脅迫や攻撃を間近にし、植村氏と北星を守る運動の先頭で積極的に発言してきた。戦中戦後の論壇と社会の動向を主な研究テーマとし、昨年8月には『保守と大東亜戦争』(集英社新書)を出版した。
この日の対談で両氏は、植村バッシングとの関わりを振り返ったあと、①植村氏が書いた記事と吉田清治証言記事の社会的影響、②植村氏と朝日新聞だけが標的にされた理由、③日本社会のバックラッシュ(反動、逆流)と自民党政治との関係、④植村裁判が問うことの意味、について意見を交わした。
以下は主な発言の要約。
■植村記事と吉田証言の社会的影響
青木:植村さんの記事は飛び跳ねた記事ではない。各社同じように、産経にも読売にも出ている。当時植村さんがいた大阪は私の初任地だった。大阪の空気はよくわかっている。それが23、4年たって、あたかもとんでもない遺物のように扱われるようになってしまった。時代の風潮がものすごい勢いで逆回りしている中で、たまたまとばっちりを受ける立場に植村さんが立たされたのではないか。メディア対権力という議論もあるが、植村さんはとばっちり、それだけのこと。支援している人がいることに敬意を持ちつつ、時代状況がおかしくなっていることの象徴だととらえている。
中島:慰安婦報道で大きな影響を与えたという意味では、北海道新聞の2つの記事の方が大きい。金学順さんを初めて実名で独占インタビューした喜多義憲特派員の記事(1991年8月15日付)と、吉田清治証言を報じた記事(同年11月22日付)だ。とくに吉田証言の記事には、「アフリカの黒人奴隷のように朝鮮人を狩り出した」という個所があり、これが韓国メディアに大きく取り上げられた。朝日新聞の吉田証言記事が国際社会に影響を与えたと右派は言うが、実証主義的にはそうはいえない。吉田証言は偽証だった、というところから飛躍と拡大で慰安婦問題はなかったという議論が横行するようになった。
■植村氏と朝日新聞だけが標的にされた理由
青木:朝日新聞の慰安婦報道で唯一問題があったのは、吉田証言記事だ。吉田証言は虚偽ではあったが、裏付けをきちんととらなかった。ただ、「首相や官房長官が『辺野古に赤土は入れていない』と語った」と書いても、(事実は虚偽でも)誤報ではないように、吉田清治が言っていることを書いたのだから誤報ではない、という見方もある。朝日新聞が批判されるべきは、歴史修正主義勢力に対して意固地になって、訂正、軌道修正が遅れたことだ。朝日は自分たちの新聞が一番なのだという意識が強い。だから、象徴としてたたかれるというふうになった。
中島:植村さんの記事が世論をリードしたとは言えない。吉田証言の記事を植村さんは1本も書いていない。朝日新聞が火をつけたわけでもない。二重の意味で関係がないのに、朝日新聞をたたくという政治運動があって、朝日が標的とされた。植村さんは朝日の記者だから、朝日をバッシングすることで象徴的な何かを獲得しようとし、標的にされた。
■90年以降のバックラッシュと自民党政治
中島「重要なポイントは1980年代にある。それまでの保守派論客は青春期に体験した戦争がいやでしょうがなかった、すべて戦争に反対していた。そのような戦中派保守が退場し、世代交代すると、戦後教育の中で歴史を学んだ反発として、戦争には意義があったと言い始めた。幼少期の戦争体験がかなり違っていて、大東亜戦争は植民地の解放戦争という考えを押し出すようになった。80年代のそういう動きの中で育ってきたものが90年代に開花した。その先端にいるのが、いまの首相、安倍晋三氏だ。
青木:80年代から90年代にかけてバックラッシュは起きていたが、2002年の小泉訪朝時の日朝首脳会談でそれが公然化した。戦争責任を問われる「加害者」だった日本が、拉致問題が契機となって、戦後初めて「被害者」の立場になり、鬱積していたものが出てきて、いまの首相の地位を上げていった。
中島:3年前の総選挙の時、吉祥寺での街頭演説でヤジを浴びた安倍氏は、「私は小さい時にお母さんに人の話はよく聞きなさいと言われましたよ」と反論していたという。お母さんの話を持ち出す政治家はあまりいない。安部氏はそういう幼児期の体験が土台となって大きなマグマの中に入っていたということだろう。
青木:安倍氏が初当選して衆院議員になった1993年7月の総選挙で自民党は負けて、自民党は下野した。だから安部氏は野党議員としてスタートした。彼は神戸製鋼の社員時代は上司に忠実に従う子犬のような存在だったが、オオカミの仲間の中で右派のプリンスとして育てられ、オオカミになった。
■植村裁判が問うこと
青木:誤報をしたことのない新聞記者などいない。もしいたとしたら、よほどのウソつきか、まったく仕事をしなかったかだろう。そういうときにどうふるまうべきか、メディアはどうあるべきか、こういう時代だからこそ、後の歴史家にあの時何をしていたの、と笑われないようにがんばらなければならない。
中島:植村裁判は時代の大きなマグマの典型だ。私たちは後の歴史家から検証される舞台に立たされている。この流れを許してしまっていいのか。私たちの子や孫に、あの時どうしていたのか、何と言ったのか、と問われる時が必ず来ると思う。

※この対談の詳しい内容は、「週刊金曜日」が掲載する予定です(掲載号発行日は未定)


弁護団報告要約


穂積剛弁護士◆東京訴訟「裁判官忌避」について
原克也裁判長ら3裁判官の審理には「公正な裁判が妨げられる事情」がある、として忌避申し立て手続きを進めている。東京に先がけて出された札幌訴訟の判決は、櫻井よしこを免責する理由の中で吉田清治証言を使っている。裁判所はそれを東京訴訟でも使おうとして、弁論再開までして被告側に新証拠を出させようとしたのではないかと、弁護団は疑っている。忌避には十分な理由がある。忌避の主な理由は次の4点だ。
①すでに結審し、判決言い渡しが迫っているのに、弁論を再開したことはきわめて異例だ。結審後の弁論再開が認められるのは、当事者(原告と被告)が、判決に重大な影響を及ぼす証拠を提出したいと申し入れ、裁判所が認めた場合が通常である
②今回は当事者からの申し出ではなく、裁判所から被告側に要請して新証拠を提出させた。これは、民事訴訟の基本的な大原則である「弁論主義」に反する。裁判所は当事者が提出した証拠事実のみを基礎としなければならない
③その新証拠は、「慰安婦報道に関する朝日新聞社第三者委員会報告書の全文」である。しかし、その要約版はすでに被告側が証拠提出している。また、植村側も、植村記事にかかわる部分の抜粋は証拠提出している
④裁判所はなぜこのようなことをするのか。新証拠「第三者委員会報告書全文」の重要なテーマである「吉田清治証言」の経緯や影響は、東京訴訟の弁論では原告、被告側双方とも争点にすることなく結審した。それなのに、あえて新証拠として採用するのは、報告書全文のうち当事者が提出した植村記事関連部分以外の個所に被告側に有利と思われる部分があり、それを材料として判決を導き出すため、と疑わざるを得ない
※東京高裁への抗告は3月28日却下された。弁護団は同日、最高裁に特別抗告状を提出した。

小野寺信勝弁護士◆札幌訴訟「控訴審開始」について
控訴理由書は1月10日に提出した。総ページ数は100を超える。さらに控訴理由補充書を2通用意している。控訴理由のポイントはふたつある。
①櫻井を免責した札幌地裁の「真実相当性」の判断は、これまで最高裁が積み上げてきた判断の枠組みから大きく外れている。「真実だと信じるにやむを得ない事情」の「やむを得ない事情」を認めるには高いハードルがある。真実相当性を認めなかった代表的な判例としては、警察がリークした事件が冤罪だった事案や、やロス疑惑報道の名誉毀損などがある。ところが札幌地裁判決は、ハードルを軽々と越えてしまった。
②櫻井の慰安婦についての表現が大きく変遷していることが、その後の調べでわかった。櫻井は1992年に「週刊時事」コラムで「強制徴用された従軍慰安婦」などと書き、慰安婦問題に同情的だった。「強制連行」は否定していなかった。92年というのは、植村さんが金学順についての記事を書いた翌年だ。櫻井はその後、「強制連行」に否定的になり、2014年には植村記事を「捏造」と決めつけるまでになった。しかし、櫻井はこの変遷の理由をはっきり説明していない。札幌地裁判決は、櫻井の「真実相当性」の根拠として韓国紙ハンギョレの記事などの資料をあげているが、これらは92年当時に櫻井が読んでいたものである。同じ資料をもとに「強制連行」について真逆のことを言っていることになり、「真実相当性」が崩れることになる。
札幌訴訟と高裁とのかかわりでいうと、地裁の裁判が始まる前、櫻井側が申し立てた東京への移送を地裁が認めたが、その決定を高裁は逆転却下した。また、地裁判決は櫻井の名誉毀損表現の多くを「論評・意見」ではなく「事実の摘示」と認定しており、この点でも「真実相当性」で免責するためのハードルは高くなっている。これらは、控訴審での好材料だと思う。
秀嶋ゆかり弁護士◆札幌訴訟「控訴審開始」について
地裁判決には、従軍慰安婦を「公娼制度の下での売春婦」と認定する記述がある。裁判官のこのような歴史認識と人権感覚の欠落を、控訴理由補充書では厳しく批判している。また、「捏造」決めつけにより植村氏が大学での教育研究者の道を閉ざされたことは重大な人権侵害だ、との主張を盛り込んだ憲法学者の意見書も準備している。高裁の審理は1回では結審させない、という考えで進める。
※控訴理由補充書2通は、3月22日に提出されている。



植村隆さんの話

私は吉田清治さんを取材したこともないし記事を書いたこともない。その吉田証言が亡霊のように出てきた。結審したらもう証拠は出せないのに裁判所は吉田証言を証拠に出させ、それ使って判決を書くのではないか。
私はいまも、巨大な敵と闘っている。私のほかにも、攻撃を受けている人がいる。根っこでは、戦争中の人権侵害の記憶を抹殺しようというテロリズム、記憶を継承しようという作業に対するテロリズムが起きている。裁判の勝訴をめざし、そのような時代の風潮とも闘っていく。


映像ドキュメンタリー「標的」

植村さんがたたかいの様々な場面で発する言葉を、植村さんの豊かな表情とともに記録したヒューマンドキュメンタリー。映像ジャーナリスト西嶋真司さん(元RKB毎日放送ディレクター)が集会、記者会見、自宅などで植村さんに密着して制作を続けている。集会では12分に短縮された試作版が初めて公開された。

訴訟費用カンパ呼びかけ

札幌控訴審開始を機に新たに設立された組織「植村隆名誉回復裁判を応援する会」の発起人、植田英隆氏(グリーン九条の世話人、札幌市)が集会で、訴訟費用支援のカンパへの参加を呼びかけた。同会の発起人には、上田文雄(前札幌市長)、木村真司(札幌医大教授)、早苗麻子(精神科医)、鶴田昌嘉(北海道画廊代表)、ノーマ・フィールド(シカゴ大名誉教授)各氏が名を連ねている。
カンパは1口1000円以上、何口でも可。
受付口座=ゆうちょ銀行振替口座 02760-0-101987 
(他行からの振り込みは、ゆうちょ銀行279店、当座預金0101987)
口座名義=植村応援隊
事務局=makenaiuemura3@gmail.com


2019年3月29日金曜日

最高裁に特別抗告

東京訴訟の裁判官忌避申し立ては、3月26日、東京高裁が即時抗告を却下した。植村弁護団は28日、最高裁への特別抗告の手続きをした。

2019年3月25日月曜日

東京訴訟中断の理由


植村裁判東京訴訟は3月20日、予定されていた判決言い渡しが延期となり、弁論も行われなかった。「20日には法廷を開かない」との連絡が裁判所からあったのは前日の19日だった。
裁判官の交代を求める忌避申し立ての審理は、東京地裁民事37部での却下を経て、東京高裁に移っている。高裁への即時抗告理由書の提出期限は3月25日である。植村弁護団によると、高裁の判断が下されるのは早ければ翌26日以降になるが、高裁で却下された場合はすぐに最高裁への特別抗告と進むので、裁判の事実上の進行停止状態はさらに続くことになる。

では、停止している裁判の再開はいつになるのか。
再開は、最高裁の決定が出た後になる。それに要する期間はわからないが、東京地裁の最近の例では、昨年7月に「安保法制違憲・東京国賠訴訟」で忌避申し立てがあり、東京高裁を経て最高裁で却下が確定して弁論が再開されたのはことし1月だった。半年かかったことになる。
ただ、いまの時期は裁判所の人事の定期異動時期に重なっている。また、過去には忌避申し立てを無視して判決を言い渡した裁判例もある。そうしたことから、植村弁護団によると、3月中に弁論再開や期日指定を強行するなどの急展開もあり得るし、裁判官の人事異動による交代も考えられるという。

裁判所は、西岡・文春側に有利な証拠を
提出させようとしたのではないか?! 
植村弁護団は忌避申し立てについて、すでに声明を発表し、原克也裁判長ら3裁判官の審理には「公正な裁判が妨げられる事情」がある、と強く批判している。3月20日に開かれた裁判報告集会でも、植村弁護団の穂積剛弁護士から詳しい説明があった。要点は次の通り。

①すでに結審し、判決言い渡しが迫っているのに、弁論を再開したことはきわめて異例だ。結審後の弁論再開が認められるのは、当事者(原告と被告)が、判決に重大な影響を及ぼす証拠を提出したいと申し入れ、裁判所が認めた場合が通常である
②今回は当事者ではなく、裁判所が被告側に要請して新証拠を提出させた。これは、民事訴訟の基本的な大原則である「弁論主義」に反する。裁判所は当事者が提出した証拠事実のみを基礎としなければならない
③その新証拠は、「慰安婦報道に関する朝日新聞社第三者委員会報告書の全文」である。しかし、その要約版はすでに被告側が証拠提出している。また、植村側も、植村記事にかかわる部分の抜粋は証拠提出している
④裁判所はなぜこのようなことをするのか。新証拠「第三者委員会報告書全文」の重要なテーマである「吉田清治証言」の経緯や影響は、東京訴訟の弁論では被告側も争点にすることなく結審した。それなのに、あえて新証拠として採用するのは、報告書全文のうち当事者が提出した植村記事関連部分以外の個所に被告側に有利と思われる部分があり、それを材料として判決を導き出すため、と疑わざるを得ない

穂積弁護士は、「札幌訴訟の判決は、櫻井よしこを免責する理由の中で吉田清治証言を使っている。裁判所はそれを東京訴訟でも使おうとして、被告側に出させようとしたのではないかと、弁護団は疑っている」と語り、「忌避には十分な理由がある」と強調した。

※この日の報告集会では、穂積弁護士の報告に続き、札幌弁護団の小野寺信勝、秀嶋ゆかり両弁護士から札幌判決の問題点と控訴審に向けての取り組みについての報告があった。その後、ジャーナリスト青木理氏と東京工業大教授・中島岳志氏との対談、植村隆氏の報告などがあった。
<報告集会のまとめレポートは月内に掲載します>

報告集会には130人が参加した(3月20日、日比谷図書文化館)



2019年3月11日月曜日

3月20日東京集会

3月20日に判決言い渡しはありません
弁論の開廷もありません
集会は予定通り開催します
 
DL用のPDFはこちら

2019年3月9日土曜日

屋山太郎の名誉毀損

日韓関係に関する静岡新聞のコラム記事で評論家の屋山太郎氏に「徴用工問題を政争の具にしている」「実妹が朝鮮にいる」などと書かかれた福島瑞穂参院議員が3月6日、屋山氏を名誉毀損で東京地裁に提訴しました。福島議員のフェースブック上のコメントと、関連記事を引用します。
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福島みずほ議員のコメント
本日3月6日、屋山太郎氏に対し、名誉毀損の裁判を起こしました。
2月6日付けの静岡新聞「論壇」に、私に関して虚偽の事実を書いたためです。
「ギクシャクし続ける日韓関係」と題した記事では、こう書かれています。
「徴用工に賠償金を払えと言うことになっているが、この訴訟を日本で取り上げさせたのは福島瑞穂議員。日本では敗訴したが韓国では勝った。
福島氏は実妹が北朝鮮に生存している。政争の具に使うのは反則だ。」
しかし、私は徴用工の訴訟に関わったことはありません。そもそも妹はおらず、全くの虚偽です。
また、これらを政争の具にしたこともなく、明らかな名誉毀損にあたります。
少し調べればわかるような事実であるにもかかわらず、政治評論家でもある人物が新聞に堂々と虚偽を述べているのです。
こうしたフェイクニュースが蔓延することを止めるためにも、今回の提訴に踏み切りました。
ぜひ応援してください。
(3月6日、福島みずほfacebook)

――引用開始――
共同通信の記事
社民・福島氏が評論家提訴 「コラムで名誉毀損」

社民党副党首の福島瑞穂氏は6日、政治評論家の屋山太郎氏に新聞のコラムで「実妹が北朝鮮にいる」などと虚偽を書かれ、名誉を傷つけられたとして、屋山氏に330万円の損害賠償を求めて東京地裁に提訴した。
訴状によると、屋山氏は「ギクシャクし続ける日韓関係」と題するコラムを執筆し、静岡新聞の2月6日付朝刊に掲載された。コラムでは、元徴用工訴訟を日本で取り上げさせたのは福島氏だとし、「福島氏は実妹が北朝鮮に生存している。政争の具に使うのは反則だ」と書いた。
福島氏は、そもそも妹がおらず、自身は生まれも育ちも国籍も日本だと指摘。元徴用工訴訟には関与しておらず、内容は虚偽で名誉毀損に当たると主張した。
屋山氏は「違う人を福島さんだと思い込んでしまった。間違えて申し訳なかった」とのコメントを出した。
静岡新聞は、2月9日付朝刊で謝罪し、訂正している。
(3月6日18:38配信)
――引用おわり――

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

静岡新聞の訂正記事(2月9日付、朝刊2面下1段)はこうである。
<6日付朝刊2面論壇「ギクシャクし続ける日韓関係」で、「徴用工に賠償金を払えということになっているが、この訴訟を日本で取り上げさせたのは福島瑞穂議員」「福島氏は実妹が北朝鮮に生存している」とあるのは、いずれも事実ではありませんでした。おわびして訂正します。>
ところが、屋山氏自身の訂正記事(同氏が主宰する「日本戦略研究フォーラム」のホームページ)はこうである。
<文中、「福島氏の実妹は北朝鮮に生存している。」との記載がありましたが、ご本人より、実妹はいないとの申し出がありましたので、当該部分を削除致しました。訂正してお詫び申し上げます。>
これが「訂正とお詫び」なのだろうかしらん。

2019年3月2日土曜日

書評と新刊最新情報

ネットや新刊書で、植村裁判を支援する声や意見、解説がいまも静かに広がっています。その最新情報をお伝えします。
ネット書評 昨年12月発行のブックレット「慰安婦報道『捏造』の真実」の書評を、日本女性学研究会のホームページ(facebook)と個人ブログ「加害者の孫を生きる」が掲載しています。
2つの書評とも、同書に書かれている櫻井、西岡両氏のウソに力点を置いています。また、裁判で争点となっている金学順さんが慰安婦とされた経緯(強制連行か人身売買か)についても、共通する考えを注記の形で示しています。たとえ人身売買であっても日本軍、政府は免責されず、また問題の本質はそこにある、との考えです。慰安婦問題運動者の視点と問題意識がよくわかる書評です。
新刊書 朝日OBの山田厚史氏が「アベ友トンデモ列伝」で櫻井よしこ氏を徹底的に批判し、毎日新聞OBの臺宏士氏は、「アベノメディアに抗う」で植村隆氏のたたかいに寄り添いながら、裁判の経過を克明にたどっています。また、植村氏自身も月刊「マスコミ市民」に寄稿し、札幌地裁判決は「結論ありきの司法判断」だと批判し、「私は屈しない」との決意を明らかにしています。



アベ友トンデモ列伝■関連記事は47~62ページ、山田厚史「従軍慰安婦訴訟で暴かれた櫻井よしこ氏のデタラメ捏造裁判~強制連行をめぐる主張はでっちあげだった」。宝島社、2018年12月発行、本文224ページ、1500円+税。
アベノメディアに抗う■46~65ページ「第2章、私は捏造記者ではない」。臺宏士著、緑風出版、2019年1月発行、本文272ページ、2000円+税。
月刊「マスコミ市民」■関連記事は42~47ページ、植村隆「元朝日記者の言論の自由を守る闘い」。第601号、マスコミ市民フォーラム、2019年2月発行、本文80ページ。

ネット掲載書評を以下に引用転載します。
(引用開始)

日本女性学研究会■ホームページ 2019年2月1日
1991年、朝日新聞記者の植村隆氏は、元「慰安婦」の金学順(キムハクスン)さんの証言を伝える記事を執筆した。それに対して、ジャーナリスト・櫻井よしこ氏と東京基督教大学教授の西岡力氏は、その記事は「捏造」だと非難してきた。植村氏は、名誉棄損で櫻井・西岡両氏と新潮社などを訴えた。その裁判の記録が本書である。
植村氏は記事の中で、たとえば、金学順さんが日本軍に強制連行されたことを伝えた。それに対して、櫻井氏は、金さんは継父によって人身売買されたのであって、植村氏の記事は捏造だと言う。しかし、櫻井氏が挙げた典拠にも、そんなことは書かれていない。むしろ、日本軍によって継父が刀で脅されて連行されたと書かれている(金さんによると、自分も脅迫されてトラックに乗せられた)。
また、たとえ金さんが親に売られたのだとしても、日本軍「慰安所」で性行為を強制された以上、日本軍はまったく免責されないことは、性暴力の問題を少しでも知っている人には明らかなことだ(私は、本書でも、この点も右派の論理に対する批判として強調したほうがいいと思う)。
櫻井氏と西岡氏は、裁判に提出された証拠を前にして、ついに証人尋問で自らの記述の誤りを認めざるを得なくなった。本書は、その尋問記録を、50ページ余りにわたって収録している。
しかし、櫻井氏を訴えた裁判の札幌地裁判決(昨年11月)は、「金さんは継父によって売られた」という同氏の記述は「真実だと認めることは困難」と言いつつも、同氏がそう信じたことには「相当の理由がある」として免責した。しかし、判決の論理はとても成り立つものではない(103-107頁)。「捏造」という記者生命を失わさせるような非難に対して、不当な判決と言うほかない。(遠山日出也) 
2019年2月1日

ブログ■「加害者の孫を生きる~日本軍「慰安婦」問題のこと、その他のこと」
2019年2月22日


植村裁判取材チーム・編『慰安婦報道「捏造」の真実~検証・植村裁判』(花伝社)読了。『慰安婦報道「捏造」の真実』というタイトル、いいですね。言いえて妙です。
植村事件とは多方面の社会問題をはらんでいて、日本軍「慰安婦」問題に限らずいろんな語り口ができると思っています。が、この本に関してはほぼ一点に絞られます。

櫻井よしこと西岡力は、植村記者の書いた記事を「捏造」と批判しましたが、櫻井よしこと西岡力の「捏造」批判の論拠そのものが「捏造」であるということを明らかにしたことです。二人に対する法廷での証人尋問で、二人の「捏造」が暴かれしどろもどろになり、あるいは開き直っていく様は、読んでいて痛快です。結局二人とも、自分の論拠が誤りであると認めました。

櫻井裁判は名誉棄損裁判としては有罪にまで持ち込めませんでしたが(それ自体はとても腹立たしいことです)、それでも十分「勝利した」と私は思います。そして西岡裁判の方は今春に判決があると言われていますが、こちらの方は櫻井裁判と同じようになるとは限りません。

二人の主張は、それほど難しいものではありません。
櫻井よしこはWill2014年4月号にこのように書いています。

《訴状には、14歳のとき、継父によって40円で売られたこと、3年後、17歳のとき、再び継父によって、北支の鉄壁鎮というところに連れて行かれて慰安婦にさせられた経緯などが書かれている。植村氏は、彼女は継父によって人身売買されたという重要な点を報じなかっただけでなく、慰安婦とは何の関係もない『女子挺身隊』と結びつけて報じた。》

このことはWill誌上だけではなく、右派論壇誌やテレビなどで、繰り返し繰り返し主張していました。
しかし実際には、金学順さんの訴状にはそんなことどこにも書かれていないのです。まるっきりのウソ、「捏造」なのです。

「40円で売られた」ということは臼杵敬子による月刊宝石1992年2月号のインタビュー記事ですが、売られた先は妓生専門学校であり(妓生は売春婦ではない、念のため)、「慰安婦」にさせられる3年も前のことです。そして同記事では「養父は将校たちに刀で脅され、土下座させられたあと、どこかに連れ去られてしまったのです」とも書いています。

また「慰安婦」と「挺身隊」が結び付けられて語られていたのは、当時は普通のことでした(私自身も当時混同していました。)。「慰安婦」は「挺身隊」ではありませんが、当時の韓国でも日本でもそのように語られていたのは事実です。そして実際、金学順さんも自身のことを「挺身隊慰安婦として苦痛を受けた私が」と、自身のことを「挺身隊」と語っているのです。

西岡力は「捏造」の基準として、①「本人が語っていないことを書く」、②「書くべき事実である事実を書かない」、③「筆者が利害関係者であるという」という3点から植村さんの記事を批判し「捏造」認定してきました。つまり
①「女子挺身隊の名で戦場に連行された」という本人が述べていない経歴を加えた。
②本人が述べた「親に40円でキーセンに売られた」ことを書かなかった。
③対日訴訟を起こしている「義母から便宜」を受けて記事を書いた。

①②のウソについてはもう説明不要ですよね。③については、植村さんが記事を書いた理由は朝日新聞元ソウル支局長の誘いがあったからで、義母は関係していないことがすでに裁判の中で確定しています。
そして西岡力自身の「捏造」認定は、ブーメランのように自分に跳ね返ってきます。
①「継父に40円で売られて慰安婦になった」と、本人が語っていないことを書いた。
②「私は日本軍に連行されました」という本人の証言など、書くべきことを書かなかった。
③ソウル取材は「文春関係者から」もらったネタを。「文藝春秋」の記事にするため、編集部の丸抱えで行った。西岡は文藝春秋の利益関係者。
西岡力のほうが「捏造」学者であるということが、完膚なきまでに暴露されたのです。

法廷では櫻井よしこも西岡力も、自らの過ちを認めています。櫻井よしこは(その内容に問題があるとはいえ)訂正記事も掲載しています。
しかしそれだけでは足らないと思うのは、私だけではないでしょう。
二人の捏造バッシングのために植村さんは職を失い、娘までもが身の危険にさらされました。
対して櫻井よしこと西岡力は、今でも保守論壇に強い影響力を持っており、いまだに二人の「捏造」は右派の中で受け入れられ、再生産されています。金学順さんの証言は、いまだに毀損されたままです。なぜこんなことが許されているのでしょうか?

私が思うに、歴史修正主義は嘘と「捏造」を前提として成り立っているからです。歴史修正主義とは歴史学の領域ではなく、単純に政治闘争です。ウソを百回繰り返せば本当になるという理屈で、政治闘争が行われているだけです。
だれもが「捏造」だと知っているから、「捏造」した当の犯人が微塵も傷つかない。そういうことだとしか思えません。安倍首相のウソがいくら明らかになっても、政権はビクともしない。それにとても似ています。

それに、現実問題として市民が「捏造」を検証することなど、とても不可能なのです。
今回の金学順さんの証言問題にしても、普通の市民は金学順さんの証言に触れることなく櫻井よしこや西岡力の記事に接する機会のほうが圧倒的に多いわけですから、真偽の判断を下す必要さえ感じることなく「信じてしまう」のです。
なぜ? 自分が求めている嘘を上手に提示してくれるから?

歴史修正主義者が政治闘争として挑むように、市民もまた見たいものしか見ない(歴史の真実は興味がない)ということのようにも思えます。
これに対抗するにはどうすればいいのかというのは、なかなか難しいと思っています。政治闘争に対して「いや、正しい歴史はこうだから」と主張することがどれほど有効なのかということにも、最近は疑問を感じずにはいられません。
それでも訴え続けること。それが問われているのだと思います。正しいことは正しいのだと、正義は正義なのだと訴え続けるしかありません。(だい)

[追伸1]
植村さんの著書『真実 私は「捏造記者」ではない』の感想について、2017年に書きました。当ブログにアップしていますので、こちらもご参照ください。

[追伸2]
本旨ではないので触れないでおきましたが、櫻井よしこと西岡力の「捏造」……つまり金学順さんが40円で「慰安婦」として売られたのだったとしても、それが何か問題でしょうか? ふたりの主張は金学順さんは借金で売られたのだから売春婦であって、国に責任はないという主張です。
借金で縛られる……それこそが債務奴隷の典型であり、性奴隷制度そのものです。そして売ったのが継父であったとしても、第一義的に責任を負わなければならないのは、そういう女性たちを戦地・占領地に連れて行き慰安所にいれ性暴力にさらした日本軍・日本政府にあります。料金の決定からコンドームの配布に至るまで、慰安所の運営・監督は日本軍が行いました。責任を免れ得るものでは決してありません。
櫻井・西岡の「捏造」が仮にそのまま本当のことだったとしても、日本の加害性を明らかにするばかりであり、日本を免罪する理由にはなりません。

(引用終わり)

2019年2月25日月曜日

裁判官忌避申し立て


 東京訴訟  原克也裁判長ら3裁判官

裁判の公正を妨げる訴訟指揮!

判決の直前に弁論を再開し、

「吉田証言」関連の新証拠を

被告側に指示し、提出させた!

西岡力氏と文藝春秋社を訴えた東京訴訟で、植村弁護団は「裁判の公正が妨げられている」として原克也裁判長ら担当裁判官3人の忌避を申し立て、2月25日に東京地裁に理由書を提出しました。いったん結審しながら判決の直前になって、裁判所が突然「22日に弁論を再開する」と通告して被告側に新たな証拠の提出を求めたためです。この申し立てが認められるかどうかはわかりませんが、3月20日に予定されていた判決の言い渡しが、ずれ込む可能性も出てきました。

民事裁判では裁判官は原告と被告の双方が法廷に提出した証拠に基づいて判決を下すのが基本ルールです。この4年間の法廷でまったく争点になっていなかった「吉田清治証言」についての証拠(朝日新聞社第三者員会報告書全文)を、結審した後に裁判所がわざわざ指示して提出させるというのは異例であり一方的です。新たな証拠に対しては、主張・反論の機会が十分に与えられなければならないはずです。
忌避申し立てについて、東京弁護団が発表した声明は以下の通りです。

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■忌避申立に関する弁護団声明


本件(植村隆東京訴訟)は、元朝日新聞記者である植村隆氏が1991年に執筆した所謂「従軍慰安婦」に関する報道について麗澤大学客員教授等の地位にある西岡力より、「意図的な捏造」等とくり返し誹謗中傷を受け、その名誉を毀損された事案である。

本件訴訟は、2015年1月9日、西岡力及び同氏の言説を掲載した株式会社文藝春秋を被告として、慰謝料の支払い及び謝罪広告の掲載を求めて提訴された。本件の審理は、2015年4月27日に第1回期日、2018年9月5日の証拠調べを経て、同年11月28日の第14回口頭弁論にて結審し、2019年3月20日の判決言い渡しを待つのみとなっていた。

ところが、判決言い渡しの1ヶ月半前、2019年2月8日になって、本件審理を担当する裁判体より双方代理人事務所に「従軍慰安婦報道に関する朝日新聞社第三者委員会報告書の全文を証拠採用したい。弁論を再開するので、被告からこれを証拠提出するように」等とする電話があった。

これに対して、原告代理人は、同報告書のうち植村氏に関連する部分はすでに甲号証として提出されていること等を理由に反対する旨を述べた。しかし、裁判体の指示で弁論期日の日程を定めることとなり、2019年2月22日に弁論期日が設定されたのである。

裁判長である原克也は、すでに、従軍慰安婦問題に関連する訴訟を2件担当しており、本件訴訟においても極めて偏向的な訴訟指揮を行っていた。
また、本件審理においては、専ら「金学順が『挺身隊の名で連行された』と証言したか否か」のみが争点とされ、吉田証言の真偽等については全く争点になっておらず、これに関する証拠も提出されていなかった。それにもかかわらず、吉田証言の信憑性等に関連する150頁に亘る証拠が、判決のわずか1ヶ月前に採用され判決の基礎となることは、当事者の攻撃防御権を著しく侵害するものであり、そのような手続き進行を裁判所が主導したという点においても異常であり、弁論主義・当事者主義という訴訟法の根本理念に反し、裁判の公正が著しく妨げられているものである。

よって我々弁護団としては、民訴法24条「裁判の公正を妨げるべき事情」が存在すると考え、裁判体3名の裁判官の忌避を申し立てた。

今後も、植村氏の人権と元慰安婦らの尊厳を守り、歴史における正義を実現すべく全力で取り込む所存である。

2019年2月22日
植村隆東京訴訟弁護団


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※注=声明日付が22日とあるのは、同日に忌避申立書を提出したたため。忌避申立理由書は25日付で提出された。

2019年2月13日水曜日

杉田議員の名誉毀損

日本の女性運動や慰安婦問題などを科研費(国の科学研究費)で共同研究している4人の女性学者が、2月12日、杉田水脈議員に対して名誉毀損による損害賠償と謝罪文掲載を求め、京都地裁に提訴しました。朝日新聞記事と声明文を引用転載します。
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【朝日新聞デジタル、2月13日】より引用

自民党の杉田水脈(みお)衆院議員(51)に研究内容を中傷されたとして大学教授ら4人が12日、計1100万円の損害賠償とツイッターへの謝罪文掲載を求めて京都地裁に提訴した。杉田議員から「ねつ造」「活動家支援に科研費(国の科学研究費)流用」などと言われ、社会的評価を低下させたと主張している。
原告は大阪大の牟田(むた)和恵教授、同志社大の岡野八代教授、大阪府立大の伊田久美子教授、大阪市立大の古久保(ふるくぼ)さくら准教授で、ジェンダー論やフェミニズム論の研究者。1人あたり110万~660万円の賠償を求めている。
4人は2014年から4年間、国から1755万円の助成(科研費)を受け、性の平等に向けた日本の女性運動や従軍慰安婦問題に関して共同研究をした。
訴状によると、杉田議員は昨年3~7月、ツイッターやインターネットの番組、雑誌で牟田教授や岡野教授の名前を出し、この研究を批判。ツイッターには「国益に反する研究」「反日活動」「ねつ造」と書き込み、科研費が使われたことを問題だと指摘したという。動画番組でも、原告らが開いた研究目的のワークショップを「放送禁止用語を連発」と揶揄(やゆ)したと主張している。
提訴後、4人は記者会見し、牟田教授は「ネットで誤った情報が拡散されて誹謗(ひぼう)中傷を受けた。影響力が大きい国会議員の発言として言語道断だ」と訴えた。杉田議員の事務所は取材に「訴状を見ておらずコメントできない」と話した。
杉田議員は2期目。昨年7月、月刊誌「新潮45」(休刊)への寄稿で同性カップルを念頭に「生産性がない」と主張し、批判が集まった。
(引用終わり)

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声明の全文を、WAN(ウィメンズアクションネトワーク)のサイトより転載します。
 WANのURL こちら
 声明PDF こちら
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2019年2月12日

杉田水脈衆院議員提訴にあたっての声明

JSPS科研費基盤(B)「ジェンダー平等社会の実現に資する研究と運動の架橋とネットワーキング」JP26283013平成26-29年度研究グループ
牟田和恵(大阪大学)・
岡野八代(同志社大学)
伊田久美子(大阪府立大学)・
古久保さくら(大阪市立大学)


本日、私たちは衆議院議員杉田水脈氏に対し、名誉毀損等による不法行為についての損害賠償等請求を京都地方裁判所に提訴しました。
杉田議員は、私たちが行った研究に対し、無理解と偏見に基づく誹謗中傷をインターネットテレビ、ツイッター、雑誌等種々のメディアを通じて繰り返し、私たちの名誉を大きく傷つけました。その詳細は訴状および今後法廷に提出する書面で明らかにしていきますが、ここでは簡単に3点に触れます。

第一に、杉田議員は、「慰安婦」問題を扱った私たちの研究について「ねつ造」と述べ発信しました。「強制連行」に関する一部の証言に問題があったとしても、それは「慰安婦」の存在、そして日本軍慰安所の強制性を否定するものでは全くありませんし、かつて日本軍が行った戦時性暴力は多くの研究者が調査によって明らかにしています。また、1993年の河野官房長官談話ほか、「慰安婦」問題について政府が謝罪し反省を述べた文書は現在も日本政府の公式見解です。杉田議員はこの事実を無視して、「慰安婦」問題はねつ造とし、この問題について検討考察を行う研究まで貶めたのです。研究者にとって研究がねつ造とされるのは、研究者生命を危うくする、きわめて重大な名誉毀損です。

第二に、杉田議員はフェミニズムへの無理解から、私たちの研究を貶める発言を繰り返しています。私たちの研究では、ジェンダー平等の実現のためにはさまざまな社会運動や活動と架橋していくことが重要であることを、理論的にも実践知としても明らかにしてきました。それなのに杉田議員は「あんなのはフェミニズムではない」「活動であって研究ではない」などと、自らの偏った理解や無理解によって研究を貶めました。また、女性の身体や性は第二波フェミニズム以降の重要なテーマであり、国際連合の条約や日本の法律にも盛り込まれています。しかし杉田議員は、それを扱ったイベントについて「放送禁止用語を連発」などと浅薄な形容を繰り返して嘲笑し、研究に価値がないかのような印象操作を繰り返しました。これは、私たちのみならずフェミニズムやジェンダー研究全体に対する抑圧であり、とりわけ国会議員で男女平等を推進していくべき立場にある杉田氏のこのような言動は許されるものではありません。

第三に、杉田議員は、私たちが科学研究費助成期間終了後に研究成果を発表したことについて、助成期間を過ぎて科研費を使用しずさんな経費の使い方をしているかのように複数のメディアで発言しました。しかし助成期間が終わった後に科研費を支出することはあり得ませんし、実際、支出していませんから、経費のずさんな使用などと誹謗されるいわれはありません。また助成期間後に当該研究の成果を発表することは、科学研究費制度にも組み込まれた当然の学問的営為です。研究費や公費の使用に厳正さが強く求められる現在、こうした事実無根の「不正」疑惑をかぶせられることは、研究者として大きな憤りを禁じえません。

以上のような言動は、一般人においても許されるものではありませんが、国民の負託を受け憲法を遵守する責任を負っている、そして文科省はじめ行政に影響力を有している国会議員が行うとは言語道断です。

さらに杉田議員は、私たちに対して「反日」というレッテルを多用し、さらには「国益を損ねる」研究に科研費を助成することは問題であると繰り返しています。自らの偏った価値観から「国益」とは何かを決め付けること自体問題ですが、その上にそれを理由に学問研究に干渉・介入することは、学問の自由を保障する民主主義国家において許されません。私たち科研グループへの杉田議員の発言は、私たちに対するのみならず、学問の自由・学術研究の発展に対する攻撃であり、私たちへの誹謗中傷を放置することは将来にわたる学問の自由への介入の理由づけに利用されることが十分予想され、それを阻止するために今般の提訴に至りました。

学問研究への権力の介入を許さない人々、女性差別に反対する人々、「慰安婦」問題について歴史のねつ造を許さず責任ある解決を求める人々はじめ、多くの皆様に本裁判への注目と支援をよろしくお願いします。

本裁判への支援呼びかけ人(2019.2.12現在)
青山薫(神戸大学)、秋林こずえ(同志社大学)、浅倉むつ子(早稲田大学)、庵逧由香(立命館大学)、伊藤和子(東京弁護士会)、伊藤公雄(京都大学・大阪大学名誉教授)、上野千鶴子(認定NPO法人WAN)、江原由美子(横浜国立大学)、岡真理(京都大学)、香山リカ(立教大学)、小島妙子(仙台弁護士会)、佐藤学(学習院大学)、清水晶子(東京大学)、住友陽文(大阪府立大学)、千田有紀(武蔵大学)、髙谷幸(大阪大学)、田中利幸(歴史家・評論家)、角田由紀子(第二東京弁護士会)、中野晃一(上智大学)、西谷修(立教大学)、能川元一(大学講師)、林香里(東京大学)、平井美津子(吹田市立中学)、廣渡清吾(法学者)、ノーマ・フィールド(シカゴ大学)、三浦まり(上智大学)、テッサ・モーリス=スズキ(オーストラリア国立大学)、山口二郎(法政大学)、山口智美(モンタナ州立大学)、山下英愛(文教大学)、雪田樹理(大阪弁護士会)