2019年3月25日月曜日

東京訴訟中断の理由


植村裁判東京訴訟は3月20日、予定されていた判決言い渡しが延期となり、弁論も行われなかった。「20日には法廷を開かない」との連絡が裁判所からあったのは前日の19日だった。
裁判官の交代を求める忌避申し立ての審理は、東京地裁民事37部での却下を経て、東京高裁に移っている。高裁への即時抗告理由書の提出期限は3月25日である。植村弁護団によると、高裁の判断が下されるのは早ければ翌26日以降になるが、高裁で却下された場合はすぐに最高裁への特別抗告と進むので、裁判の事実上の進行停止状態はさらに続くことになる。

では、停止している裁判の再開はいつになるのか。
再開は、最高裁の決定が出た後になる。それに要する期間はわからないが、東京地裁の最近の例では、昨年7月に「安保法制違憲・東京国賠訴訟」で忌避申し立てがあり、東京高裁を経て最高裁で却下が確定して弁論が再開されたのはことし1月だった。半年かかったことになる。
ただ、いまの時期は裁判所の人事の定期異動時期に重なっている。また、過去には忌避申し立てを無視して判決を言い渡した裁判例もある。そうしたことから、植村弁護団によると、3月中に弁論再開や期日指定を強行するなどの急展開もあり得るし、裁判官の人事異動による交代も考えられるという。

裁判所は、西岡・文春側に有利な証拠を
提出させようとしたのではないか?! 
植村弁護団は忌避申し立てについて、すでに声明を発表し、原克也裁判長ら3裁判官の審理には「公正な裁判が妨げられる事情」がある、と強く批判している。3月20日に開かれた裁判報告集会でも、植村弁護団の穂積剛弁護士から詳しい説明があった。要点は次の通り。

①すでに結審し、判決言い渡しが迫っているのに、弁論を再開したことはきわめて異例だ。結審後の弁論再開が認められるのは、当事者(原告と被告)が、判決に重大な影響を及ぼす証拠を提出したいと申し入れ、裁判所が認めた場合が通常である
②今回は当事者ではなく、裁判所が被告側に要請して新証拠を提出させた。これは、民事訴訟の基本的な大原則である「弁論主義」に反する。裁判所は当事者が提出した証拠事実のみを基礎としなければならない
③その新証拠は、「慰安婦報道に関する朝日新聞社第三者委員会報告書の全文」である。しかし、その要約版はすでに被告側が証拠提出している。また、植村側も、植村記事にかかわる部分の抜粋は証拠提出している
④裁判所はなぜこのようなことをするのか。新証拠「第三者委員会報告書全文」の重要なテーマである「吉田清治証言」の経緯や影響は、東京訴訟の弁論では被告側も争点にすることなく結審した。それなのに、あえて新証拠として採用するのは、報告書全文のうち当事者が提出した植村記事関連部分以外の個所に被告側に有利と思われる部分があり、それを材料として判決を導き出すため、と疑わざるを得ない

穂積弁護士は、「札幌訴訟の判決は、櫻井よしこを免責する理由の中で吉田清治証言を使っている。裁判所はそれを東京訴訟でも使おうとして、被告側に出させようとしたのではないかと、弁護団は疑っている」と語り、「忌避には十分な理由がある」と強調した。

※この日の報告集会では、穂積弁護士の報告に続き、札幌弁護団の小野寺信勝、秀嶋ゆかり両弁護士から札幌判決の問題点と控訴審に向けての取り組みについての報告があった。その後、ジャーナリスト青木理氏と東京工業大教授・中島岳志氏との対談、植村隆氏の報告などがあった。
<報告集会のまとめレポートは月内に掲載します>

報告集会には130人が参加した(3月20日、日比谷図書文化館)