2017年11月23日木曜日

本人尋問期日が決定

札幌訴訟 

櫻井よしこ氏と植村氏の本人尋問
2018年3月23日(金)に決定

植村裁判札幌訴訟の進行協議が11月22日、札幌地裁で開かれ、原告植村隆氏と被告櫻井よしこ氏が出席する本人尋問(第11回口頭弁論)は2018年3月23日(金)に実施することになりました。
また、それに先立つ第10回口頭弁論(2月16日、開始時間未定)で行う証人尋問についても協議が行われましたが、結論は来年1月11日(木)に開く進行協議に持ち越されました。本人以外の証人の人選は、これまでに原告側は喜多義憲(元北海道新聞ソウル特派員)、吉方べき(言語心理学者)、田村信一(北星学園大学学長)の3氏を、被告側は西岡力(元東京基督教大学教授、東京訴訟の被告)、秦郁彦(歴史学者)の2氏をそれぞれ申請し、本人の陳述書もすでに提出されています。この日の協議で、岡山忠広裁判長は、「主尋問に対する反対尋問を必要とするかどうかで証人の採否を考える。学者は専門的知見を意見書として提出すればいいのではないか」との考えを示しました。この考えによると、証人は喜多氏以外は不採用となります。被告側は強く反対しました。そのため、裁判長は協議をつづけることにしました。

<以上は、同日夜に開かれた植村裁判報告集会で小野寺信勝弁護士(原告弁護団事務局長)が報告した内容の要約です>

11月22日報告集会

札幌訴訟の進行協議があった11月22日、報告集会が札幌市教育文化会館で午後6時半から開かれた。弁護団事務局長の小野寺信勝弁護士が証人尋問についての協議結果を報告した後、植村さんが韓国での3つのできごと(女子高での講演、日韓学生セミナー、ナヌムの家遺品館開所)をスライドを上映しながら語った。講演は、日本報道検証機構代表で弁護士の楊井人文さんが「フェイクニュース問題とは何か」と題して行い、誤報を検証し監視するファクトチェック組織が海外で大きく広がっている現状を紹介した。
楊井さんの講演と植村さんの報告の要旨は次の通り。

■楊井さんの講演
《フェイクニュース問題とは何か~「捏造」決めつけの背景に迫る》
ことしの流行語大賞の候補のひとつに「フェイクニュース」がなっているそうだ。フェイクニュースは偽装ニュースと訳されている。ウソのニュース、でっちあげ、などという意味でトランプ氏が使っている。単なる誤報ではなく、それを発信する側を非難する文脈で使われている。私には今もってよくわからないところがあり、フェイクニュースという語は極力使わないようにしている。
私は「誤報」問題をずっと扱ってきた。メディアが日々提供するニュースが正しいのかどうかは一般読者にはわからないことが多い。判断できるのはニュースの当事者か、専門家だ。私たちは誤報にさらされていることに気づかないでいた。日本のメディアには、訂正をしないという共通の病理がある。ニューヨークタイムスの訂正欄はいちばん目立つページにあり、毎日10本程度の詳しい訂正記事が載っている。
5年前に「GoHoo」というサイトを設立した。マスコミ誤報検証・報道被害救済サイトで、一般社団法人日本報道検証機構が運営している。これまでに700件あまりの指摘をしてきた。このようなサイトは日本にはひとつしかないが、海外では欧米、アフリカ、アジアで広がっている。現在136以上のサイトがあるといわれている。そこで使われているのは、ファクトチェックという言葉だ。私も、フェイクニュースではなくファクトチェックという言葉を使いたい。ファクトチェックとは、取材過程のチェックではない。見解・評価が正しいかどうかを判定することでもない。すでに発表された事実に関する言明の真偽・正確性を検証する活動だ。
ファクトチェックには人とお金も必要だが、まずネットワーク作りが必要だ。ことし7月、スペイン・マドリッドでファクトチェック国際会議「GlobalFact4」が開かれ、40カ国以上から約180人が参加した。この会議は、2015年に発足した国際ファクトチェックネットワーク(IFCN)が主催している。私も参加した。印象に残ったのは女性が多いということだった。既存のメディアが男性支配であることの反映だろうか。韓国ではことし3月にソウル大学にファクトチェックセンターが開設され、大手新聞や公共放送16社が活動に共同参加している。ファクトチェックの取り組みは先進国では日本がいちばん遅れている.
私は6月にファクトチェックイニシアティブ(FIJ)を設立した。FIJは、10月の総選挙で政治家の発言や新聞の報道、ネット上に流れた言説などの情報を扱った。松井・大阪府知事の発言(大阪では教育無償化を実現している)、産経新聞の報道(立憲民主党の新党結成要件に衆院解散後の前職はカウントされない)など22件ある。松井知事はその後、言わなくなった。産経は訂正したが、ネット上で広がったままで、それを使う人がいたりした。私たちのこのプロジェクトは朝日新聞の一面でも紹介されたが、それは名古屋本社版だけだった(笑い)。
朝日新聞社は、森友・加計学園問題についての報道を「戦後最大級の報道犯罪」と書いている本の著者と出版社に対して抗議・訂正の申し入れを送り、同社のサイトで公開した(11月21日)。16カ所に及ぶ記述を事実誤認、名誉棄損とし、具体的に反論している。(同じようなことは)これまではほったらかしにして、まわりまわって蒸し返されたりした。その教訓だろうか、きちんと出すことはいことだし、重要だ。
ジャーナリズムでは捏造と盗用をすれば一発退場だ。ファクトチェックせずして、偽ニュースを語るなかれ。植村さんは捏造と決めつけられたが、捏造という決めつけ表現は、よほど慎重に調査してやらなければならない。安易に使ってはいけない。


■植村さんの報告《韓国2017秋》
カトリック大学のある地元、プチョン(富川)市の冨川女子高校に招かれて講演に行った。校舎に入ると階段に沿って「少女像」のポスターがたくさん掲示されていた。よく見ると有名な少女像の顔ではなく、生徒たちの顔であることに気がついた。生徒たちは慰安婦問題を自分自身のこととして重ね合わせて考えているのだ、ということがわかった。講演の後、記念撮影やサイン会で盛り上がった。約100人の生徒たちから送られた1冊の寄せ書きノートには、私へのメッセージや上手な似顔絵がびっしりと書かれていた。
ジャーナリストをめざしている学生たちが日本からやって来て、韓国の学生と交流するセミナーが開かれた。日本ジャーナリスト会議や新聞労連の有志が企画した催しで、私はコーディネーター役を務めた。11月1日から5日まで、ソウルの新聞社見学やソウル市長インタビュー、板門店取材などを行った。慰安婦だったハルモニ(おばさん)たちが暮らすナヌムの家も訪問し、つらい体験談に学生たちは耳を傾けた。日本からの参加学生は24人で、うち4人が中国人留学生だ。日中韓の若者たちが語り合う5日間のセミナーだった。このような交流から生まれるものに私は期待したい。
ナヌムの家に遺品館が作られ、11月18日に開所式が行われた。ナヌムの家で亡くなったハルモニの思い出の品や似顔絵が展示されている。アンネ・フランクは日記を残すことができた。日記を残さないハルモニたちは、ここで、みなアンネになった。慰安婦の記憶が遠ざけられようとしているいま、こうして記憶をつないでいくことが大事だと思う。日本からもたくさんのボランティアが訪れていた。札幌から来た看護師さんはハルモニの身体をリフレクソロジーでマッサージして喜ばれていた。

楊井講演、植村報告とも、ブログ管理人H.Nがまとめました。文責はH.Nにあります>


2017年11月19日日曜日

解説マガジン発行!

大詰めの重要局面にさしかかった植村裁判のすべてを、わかりやすくまとめたマガジンタイプの「徹底解説本」ができました。11月22日に発行します。
東京、札幌両訴訟の争点を整理し、原告弁護団の法廷での迫真の弁論をつぶさにたどり、被告たちの主張の根拠が完全に崩れ落ちたことを明らかにする渾身のドキュメント集です。解説、記録、情報、資料をたっぷり収録しました。
【主な内容】Q&A植村裁判の争点、植村隆・意見陳述全文、東京・札幌訴訟の口頭弁論全傍聴記、弁護士と新聞記者による論考集「被告たちの主張は最初から破綻していた」、慰安婦報道をめぐる裁判、全国に広がる支援の輪と応援の声、訴状全文、ブックガイドほか。B5判、本文横組み60ページ、表紙カラー4ページ。頒価300円。

◆購入申し込みは下記あてにお願いします。①お名前②住所③電話番号④冊数、を明記してください。代金と送料(1冊180円)は、こちらから本に同封する振込用紙でお支払いください(後払いです)。
uemurasasaeru@gmail.com または、FAX011-351-6292

表紙2、4ページ


目次ページ