2016年7月29日金曜日

札幌訴訟第3回期日


植村裁判札幌訴訟(被告、櫻井よしこ氏と新潮社、ダイヤモンド社、ワック)の第3回口頭弁論は7月29日午後、札幌地裁805号法廷で開かれた。
この日の弁論は、原告側が提出した第2準備書面をめぐるやりとりが中心となった。最初に原告弁護団の竹信弁護士が要旨を説明した。第2準備書面は、札幌訴訟の核心となる重要な主張であり、櫻井氏が書いた雑誌記事6点の17個所にわたる名誉棄損表現のどこが「摘示されている事実」にあたるかを具体的に整理している。この主張に対して、岡山忠広裁判長が、一部は「事実の摘示」というよりは「論評」と読めるのではないか、また今後、「論評」による名誉棄損表現も加えるのかどうか、とやわらかな口調で質問した。さらに、被告側からは準備書面の中の重複した記述など細かな点について質問があった。結局、裁判長も含め、双方のやりとりが10回ほどあった。この回数は前2回に比べ倍増している。裁判は重要な段階に達していることが傍聴席にも伝わってきた。
開廷は午後4時20分、閉廷は同40分だった。開廷は定刻から50分ほど遅れた。被告側弁護士2人が搭乗した東京からの飛行機が機材繰りで延着したためだった。
この日も地裁1階の会議室には傍聴券を求める長い列ができた。73の座席に対して107人が並び、倍率は1.5倍の高率だった。

裁判の後の報告集会は、午後5時から地裁近くの札幌市教育文化会館で開かれた。

















はじめに「植村裁判を支える市民の会」共同代表の上田文雄・前札幌市長があいさつしたあと、小野寺信勝弁護士による裁判報告があった。小野寺さんは、「裁判は非常に重要な局面にさしかかった」と述べ、名誉棄損訴訟における「名誉」の定義、その判断の枠組み、「事実の摘示」と「論評」の区別について、パワーポイントを使って詳しい説明をした。そのあと、植村隆さんがソウルの「少女像」をめぐる韓国内の動きを紹介し、韓国政府が設立した「慰安婦財団」が抱える問題点についてコメントした。
つづいて、野田正彰さん(精神病理学者、京都市在住、北大卒)が講演した。演題は「日本軍の性暴力」。精神科医として中国の「慰安婦」被害者を治療・診察・鑑定した経験をもとに過酷で悲惨な「虜囚」の被害を語り、「日本軍はなぜここまで暴力化したのか」、「日本人はきちんと反省をしたのか」と問いかけた。そして最後に、櫻井よしこ氏の言動を厳しく批判し、「自己の生き方や感情を隠してただわめくだけのひとが政治、社会を牛耳っている」「個の感情を国民全体のものとしようとしている、これこそが全体主義だ」と語った。
集会のしめくくりは、東京からかけつけた「支える会」共同代表の崔善愛さん(ピアニスト)。指紋押捺拒否にかかわる自身の訴訟で最高裁まで争った体験を語り、植村さんを支援することの意味を熱く語った。

写真上=107人が参加してほぼ満席。予定を30分オーバーして7時半に終わった。
下=この日の発言者。左から、上田文雄さん、植村隆さん、野田正彰さん、崔善愛さん。

2016年7月27日水曜日

相次ぐ謝罪とお詫び

高木健一弁護士の名誉棄損訴訟、2件とも「実質勝訴」

藤岡信勝氏(拓大教授)、「WiLL」に謝罪広告掲載し解決金50万円支払い
池田信夫氏(ブロガー)、自身のブログに謝罪文掲示し和解金30万円支払い

元慰安婦らによる戦後補償の訴訟を多く手がけた高木健一弁護士を批判する記事を雑誌やブログに書いた藤岡信勝・拓殖大客員教授と、アゴラ研究所所長の池田信夫氏が、それぞれ記述の誤りを認めて高木氏にお詫びする謝罪文が載ることになった。高木氏が起こした名誉毀損訴訟2件が、相次いで和解したためだ。

726日発売の月刊誌「WiLL9月号には以下の謝罪広告が載った。
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WiLL20139月号に掲載した藤岡信勝「『従軍慰安婦』で日本の名誉を売った二人の弁護士」と題する記事において、高木健一弁護士がインドネシアを訪問し、地元紙に元慰安婦を募集する「広告」を出したと述べた記述は、誤りであることを認め、お詫び致します。
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高木氏はサハリン残留韓国人の帰還問題や日本軍の慰安婦問題など戦後補償の裁判を多く手がけた弁護士。藤岡氏は、従来の歴史教科書が「自虐史観」の影響を受けていると批判して1997年に「新しい歴史教科書をつくる会」を発足させ、現在は副会長。「WiLL」は今年初めまで文藝春秋出身の花田紀凱氏が編集長を務め、保守系の論客が多く寄稿する言論誌だ。

謝罪文(左)を掲載した「WiLL」9月号
139月号の記事で藤岡氏は、高木氏ら2人の弁護士を「慰安婦問題をでっち上げ、世界にその噓をばらまいて国際的な大問題に仕立て上げた」と批判。高木氏について「インドネシアを訪問し、地元紙に『補償のために日本からやってきた。元慰安婦は名乗り出て欲しい』という内容の広告を出した」と書いた。

高木氏は「記事で名誉を傷つけられた」などとして、藤岡氏と同誌発行元ワックを相手取り、慰謝料など1100万円の支払いと謝罪広告掲載を求めて1312月に提訴。「1993年の日弁連によるインドネシア調査には参加しておらず、現地紙に広告を出したとの事実はない」と主張した。

東京地裁は20154月の判決で、高木氏がインドネシアを訪れ広告を出したとの記述について「真実との証明があったとはいえない」と認定する一方、「広告を掲載したかどうかは重要とはいえない」とも述べて、高木氏側の請求を棄却した。高木氏側は控訴。控訴審の東京高裁で今年620日、和解が成立した。被告側が「WiLL」誌上に謝罪広告を掲載し、原告側に解決金50万円を支払うとの内容だ。

一方、池田氏のブログ「池田信夫blog」のトップページには、7月末までに以下の内容で謝罪文が載る予定だ。
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201491日に当ブログに掲載した記事において「慰安婦を食い物にする高木健一弁護士」「ハイエナ弁護士」と記載したことは誤りでしたので、高木健一弁護士に多大なご迷惑をお掛けしたことをお詫び申し上げます。
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池田氏は元NHK職員の経済学者。主宰する言論サイト「アゴラ」や自身の「池田信夫blog」に時事問題に関するブログを掲載している。

高木氏は記事で名誉を傷つけられたとして20149月、池田氏を相手取り、慰謝料など330万円の支払いや謝罪文の掲載を求めて提訴。「戦後補償の訴訟では韓国人被害者から費用を一切受け取っていないのに『慰安婦を食い物にするハイエナ弁護士』とレッテルを貼られた」と主張した。

今年720日、東京地裁で和解が成立。被告側が問題とされたブログの記述を削除し、トップページに7月末から30日間、謝罪文を掲示。原告側に和解金30万円を支払うとの内容だ。

高木氏は「藤岡、池田両氏は事実と異なる記事を書き、元慰安婦を支援する運動をおとしめた。両者とも誤りを認めて謝罪広告や謝罪文を掲載し、解決金や和解金を支払うことになった。実質上の勝訴といえる和解だ」と話している。

(朝日新聞編集委員・北野隆一)


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ハフィントンポスト(日本版)7月27日付より転載 こちら

「池田信夫ブログ」 訂正記事 こちら

2016年7月22日金曜日

札幌第3回期日迫る

植村裁判札幌訴訟(被告櫻井よしこ氏と出版3社)の第3回口頭弁論は、7月29日(金)午後3時30分から、札幌地裁805号法廷で開かれます。裁判終了後の報告集会は午後4時30分から札幌市教育文化会館で開催、弁護団と植村さんの報告の後、精神病理学者の野田正彰さんが講演をします。

2016年7月15日金曜日

東京訴訟第6回期日

植村裁判東京訴訟(被告西岡力、文藝春秋)の第6回口頭弁論が8月3日に東京地裁で行われます。報告集会とシンポジウムのプログラムは下記のように決まりました。

第6回口頭弁論
8月3日(水)午後3時から午後3時半
東京地方裁判所 103号法廷
*東京メトロ丸ノ内線・日比谷線・千代田線「霞が関」駅A1出口から1分。有楽町線「桜田門」駅出口より3分
*傍聴は整理券の発行と抽選が予想されます。2時15分までにお集まりください。
                                                  
報告集会とシンポジウム
同日午後4時15分~5時45分
弁護士会館502A~F *裁判所のすぐ隣。日比谷公園側です
◇第1部:裁判の報告 植村東京訴訟弁護団から 
≪週刊文春記事が喚起した憎悪のメールとファックス≫
◇第2部:シンポジウム ≪メディアの萎縮を打ち破れ≫
香山リカさん(立教大教授、放送倫理・番組向上機構(BPO)前委員)
新崎盛吾さん(日本マスコミ文化情報労組会議(MIC)議長、新聞労連委員長)
岩崎貞明さん(「放送レポート」編集長)
*ジャーナリズムを担うメディア(報道各社)の萎縮が指摘され、「メディアの危機」が深まっている。なぜ萎縮は起こっているのか。それを打破するためには何をすべきなのか――。
*資料代500円。事前申し込みは不要です。
 ◆主催:植村東京訴訟支援チーム 
 ◆共催:新聞労連/民放労連/日本ジャーナリスト会議(JCJ)
 ◆問い合わせ先:日本ジャーナリスト会議 電話03・3291・6475

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