2019年5月10日金曜日

東京訴訟が再び結審

うpupdated:2019/5/19 8:50pm

 異例の事態のまま 

判決言い渡しは6月26日(水)に

原裁判長、有無を言わさぬ事務的な口調で終結宣言


植村裁判東京訴訟(被告西岡力、文藝春秋)の口頭弁論は5月10日午後、東京地裁で再開され、原克也裁判長は審理の終結を宣言した。判決は6月26日午前11時30分から言い渡されることになった。

開廷は午後3時。冒頭、植村弁護団は「進行意見書」を提出し、神原元弁護士が7分間にわたって要旨を読み上げた。主張の要点は、被告側が結審後に追加提出した新証拠(朝日新聞社第三者委員会報告書全文)について植村側が反論するための期間を裁判所は設けよ、というもの。読み上げが終わると、原裁判長は被告側の喜田村洋一弁護士に意見を求めた。喜田村弁護士は「植村側は第三者委報告書の全文を精査して2016年にその抜粋版5ページ分を証拠提出しているのだから、全文が証拠採用されても不意打ちにはならないし、期間が延びるだけだから、本日結審が相当と考える」と述べた。これに対し、植村弁護団の穂積剛弁護士が、「読んだかどうかが問題なのではない。裁判所が重要だと考えたその部分はどこなのかを明らかにし、主張と立証を尽くさせるべきだ」と反論したが、裁判長は応じることなく、「それでは弁論を終結する」と述べた。有無を言わさぬ事務的な口調の再結審宣言だった。植村弁護団の梓澤和幸弁護士は「先ほどの主張に応答はないのか」と裁判長に迫った。裁判長は「何かおっしゃりたいことがあれば書面で」と述べて、やりとりを打ち切った。
閉廷は午後3時10分だった。
※「進行意見書」はこの記事の下に掲載

この日の法廷はいつもよりも小さな706号が使われた。開廷前に傍聴抽選の整理券は発行されたが、整列者が定員にわずかに満たなかったため、抽選は行われなかった。48席の傍聴席はほぼ埋まった。植村弁護団は20人が席に着き、被告弁護団はいつものように2人だった。西岡氏の姿もいつものように、なかった。裁判官席の3人はこれまでと同じ顔ぶれだった。しかし、3人とも4月1日付で東京地裁から転出している(原裁判長は東京高裁、佐古裁判官は鹿児島地裁、小久保裁判官は大阪地裁堺支部へ)。にもかかわらず担当を続けているのは、裁判所内で特例措置がとられたためとみられる。
法廷では裁判官の入退廷時に全員が起立する慣例がある。しかし、この日、裁判官が立ち去る時に起立する人は少なく、表情を曇らせて座ったままの人が多かった。
昨年11月にいったん結審した後に再開され、証拠の追加提出、裁判官の忌避申し立て、弁論の中断、そして再開という展開をたどった東京訴訟は、異例事態が続く重苦しい空気の中で再結審した。

報告集会は午後5時から、参議院議員会館101会議室で開かれた。
最初に神原弁護士が、裁判所は「朝日新聞社第三者委員会報告書」をどのように使おうとしているのか、なぜそれが植村側に不利なのか、などについて解説をした。続いて札幌弁護団の小野寺信勝弁護士が、札幌控訴審の重要な論点と裁判所の訴訟指揮ぶりについて説明をした。
このあと、徃住嘉文さん(元北海道新聞記者)、西嶋真司さん(映像ジャーナリスト)、植村隆さんが順に話した。
徃住さんは、櫻井よしこ氏の言説の重大な変遷を詳細に読み解いて、ジャーナリストとしての揺れと乱れを厳しく批判した。西嶋さんは、制作中の映画「標的」のクラウドファンディングへの支援と協力を呼びかけた。植村さんは、「裁判が進むにつれて、私への捏造批判がデタラメだったという証拠が次々に出てくる。多くの人と一緒にたたかう充実感がある」と語った。
神原弁護士から植村さんまで、マイクを握る人はみな明るく元気がよかった。法廷の重苦しい空気はどこかに行ってしまったようだった。集会の参加者は50人ほど。閉会は午後6時50分だった。