2016年9月21日水曜日

「ニュースの真相」評

いま公開中の映画「ニュースの真相」(2015年製作、ジェームズ・バンダービルト監督)を紹介します。

ブッシュ米大統領が再選を目指していた2004年、米国最大のネットワークCBSの女性プロデューサー、メアリー・メイプス(ケイト・ブランシェット)は、著名ジャーナリストのダン・ラザー(ロバート・レッドフォード)がアンカーマンを務める看板番組で、ブッシュの軍歴詐欺疑惑をスクープします。

しかし、その「決定的証拠」を保守派勢力に「偽造」と断定されたことから事態は一転。メアリーやダンら番組スタッフは、政権と世間から猛烈な批判を浴び、メアリーは退職、ダンは降板します。ニュース番組の裏側からアメリカ社会とメディア産業の内実を描いた実話です。原題は「TRUTH」、真実、です。

ブッシュの再選の行方を左右しかねないスクープに、政権側はネットを利用して、文書は偽造だという情報を拡散させます。メアリーには、バッシングのメールが殺到します。激しい非難にさらされながら、それでも矜持と信念を失わずに、圧倒的に不利な闘いに挑むメアリーやダンらの取材チームに心揺さぶられました。メアリーの「真実だから報道するのよ」という力強い言葉が、ジャーナリスト魂を見せつけて爽快です。

「真実」をつかまれたときの権力の反応の素早さ。組織を守ろうとする上層部と真実を追求する制作現場の対立も描かれます。今、日本でも同様のことが起きていて、とてもタイムリーな作品です。最近のメディアの萎縮ぶりは、安倍政権下で「報道の自由度」が世界72位になったことが如実に物語っています。市民の目線で報道し続けてきたキャスターやジャーナリストが「偏向」を理由に放送界から追放されたことを許してはならないと思います。

植村さんの真実を訴える闘いを孤立させてはならない、と強く思いました。「植村裁判を支える市民の会」をたくさんの人に知ってもらいたい。(樋口みな子)
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札幌では、ディノスシネマ札幌劇場で公開中(10月13日まで)