2018年11月15日木曜日

JCJが判決に抗議

日本ジャーナリスト会議(JCJ)が11月15日、判決に抗議する声明を発表しました。全文を掲載します。
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櫻井の「言いがかり」許す判決に抗議

札幌・植村裁判でJCJ声明

元朝日新聞記者の植村隆氏が櫻井よしこ氏(国家基本問題研究所理事長)と「週刊新潮」「週刊ダイヤモンド」「WiLL」を発行する出版3社に対し、名誉毀損を理由に慰謝料の支払いなどを求めた訴訟で、札幌地裁は11月9日、植村氏の請求を棄却する判決を下した。

植村氏が執筆した韓国人元慰安婦の証言記事(1991年)について、櫻井氏はずさんな「取材」で「捏造」と決めつけ、植村氏を攻撃した。確証もなく、事実の裏付けもない植村氏攻撃に対し判決は、記事を捏造と櫻井氏が「信じた」ことには相当の理由があると被告に甘い判断をし、櫻井氏を免責したのである。法廷の本人尋問で明らかとなった櫻井氏の事実確認を怠った、ずさんな「取材」には無批判だった。

日本ジャーナリスト会議(JCJ)は「言いがかり」や「難クセ」のような櫻井氏の攻撃を許し、記者の真面目な取材を冒涜する不当な判決に対し、断固として抗議する。

判決で見逃せない重大な問題は、韓国人の元慰安婦・金学順さんお証言について、あたかも義父によって日本軍に身売りされ、慰安婦になったかのような言説を示唆している点である。様々な証拠により①金さんは最終的に中国で、日本軍に力づくで慰安所に連れて行かれた②拒否したにもかかわらず将校にレイプされ、その後、日本兵相手に性行為を強要された――ことは明らかだ。この金さんの証言の核心部分を無視し、目をふさぐ判決になっている。

金さんが会見などで新聞記者に必死で訴えたのはこの部分である。判決はこの点に目を向けようとせず、櫻井氏が信じた「身売りされ慰安婦になった」言説を無批判に擁護している。証言への冒涜ともいえるだろう。

JCJは櫻井氏の一連の「捏造」攻撃がきっかけとなり、植村氏への脅迫が広がり、それも「娘を殺す」などの殺人予告につながっていった経緯を許すことはできない。判決はこうした脅迫行為のエスカレートに関しても、深刻に受け止める姿勢を見せていない。民主主義を守るべき裁判所、裁判官が自らの矜持を捨て去った判決であり、改めて抗議する。

2018年11月15日

日本ジャーナリスト会議(JCJ)
東京都千代田区神田神保町1-18-1