2016年8月21日日曜日

朝日「声」欄の投書

植村隆さんの娘さんへのネット上での中傷に対して損害賠償を命じた東京地裁判決(8月3日)について、元大学教授の男性が朝日新聞「声」欄で「今回の判決はネット世界の無法状態に大きな警鐘を鳴らしたことは間違いない。裁判長の英断に敬意を表したい」と述べています。
朝日新聞8月21日付朝刊14面「声」
同判決については、当ブログの記事をご参照ください。
◆8月3日 植村さん家族、全面勝訴!
◆8月7日 ネット中傷訴訟の判決全文




2016年8月16日火曜日

植村さんの講演の旅

「植村裁判を支える市民の会」公式FB(フェースブック)より転載します
<おことわり:この記事は一部に追記があります。8月18日>



植村裁判を支える市民の会さんの写真
植村隆さんの全道スピーキングツアーは8月9日の旭川から始まりました。10日の岩見沢に続き、15日には「不戦の日 8.15北海道集会]が自治労会館で開かれました。お盆にも関わらず会場は補助いすを出しても足りないぐらの参加者300人で埋まりました。(写真上)
植村隆さんは映像データを駆使して話し始めました。
まずはNEWS23(2014.12.23放映)で、北星と植村さんへのバッシングをテーマにして6分にわたって詳細を伝えた映像です。
キャスターの岸井さんは「一連の圧力の背景に歴史の事実を書きかえようとする勢力がいる」と鋭い指摘をしていると語りました。
次に写しだされたのはDVDドキュメンタリー「終わらない戦争」の中で紹介された1991年8月14日の金学順(キム・ハクスン)さんの記者会見の様子です。植村さんを攻撃する歴史修正主義者らは、キムさんは挺身隊として連行されたとは言っていない、と主張していますが、本人が挺身隊として連行されたと言っている大事な映像です。
最新のニュースも盛り込みました。それは植村さんの娘さんの裁判の結果を伝えた8月3日のNHKニュースです。
植村隆さんの娘さんが、ネットで中傷の書き込みをした投稿者を相手取って起こした裁判の判決が8月3日午後、東京地裁で言い渡されました。原告(娘さん)が請求した170万円満額が認められ原告側全面勝訴の判決です。代理人の弁護士が次のように読み上げました。「匿名の不特定多数からのいわれのない誹謗中傷は、まるではかり知れない『闇』のようなものでした」「こうしたことは他の人にも起こりうる出来事。こうした攻撃にさらされることのない社会になってほしい。今回の判決が、そのきっかけになってほしいと思います」。
娘の毅然として戦った姿に植村さんは励まされた、と語りました。自身の裁判も負けられないと。
何故、植村さんが標的にされたのかについても、客観的に語りました。一つには1990年代後半から歴史修正主義のバックラッシュがあります。
植村さんは、国連のデービット・ケイ氏が4月に政府や報道関係者の聞き取りをもとに調査結果を発表し、日本の報道の自由が脅かされていると指摘したことに触れました。その中には「慰安婦問題を報じた元朝日新聞記者の植村隆氏やその娘に対し、殺害予告を含む脅迫が加えられた。当局は脅迫行為をもっと強く非難すべきだ」と指摘したことを紹介。 報道の自由度が世界で72位と低いのは報道者が圧力に屈していることを物語っています。世界が日本をどう見ているか、私たちに何ができるのか?と考えさせられました。
慰安婦問題の日韓問題にも触れました。「少女」像を移転させては駄目だと考える市民が76パーセントもいること。特に若い世代が多く、少女像の前で交代でテントを張って守っている写真も紹介しました。植村さんは、日本人の心のなかに「少女像」を、という考えを述べていました。
植村さんのお話は日々進化中。不屈の精神で闘っています。支える人の輪も大きくなっています。今日もこれから新ひだか町で講演します。
uploaded on 2016.8.16,  text and photo by M.Higuchi 
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2016年8月 植村隆さんスピーキングツアー
◆旭川 8月9日(火)18:30~ 旭川建設労働者福祉センター 主催:旭川平和運動フォーラム
◆岩見沢 8月10日(水)18:00~ 岩見沢自治体ネットワークセンター 主催:平和運動フォーラム空知地域協議会
◆札幌 8月15日(月)18:00~ 北海道自治労会館 主催:北海道平和運動フォーラム
◆新ひだか町 8月16日(火)18:30~ 同町コミュニティセンター 主催:北海道平和運動フォーラム日胆地域協議会
◆室蘭 8月18日(木)18:30~ 東町中小企業センター 主催:拳法を守る室蘭地域ネット
◆名古屋 8月20日(土)13:30~ 市博物館講堂 主催:植村裁判支援名古屋集会実行委員会
◆四日市 8月21日(日)
◆倶知安 8月23日(火)18:30~ 後志労働福祉センター 主催:後志平和フォーラム後志連絡会
(9月には福岡、熊本、水俣、北九州市で開催予定)

2016年8月13日土曜日

崔牧師の生涯描く劇

「支える会」の在京共同代表のひとり、崔善愛(チェソンエ)さんがきょう(8月13日)の朝日新聞朝刊で紹介されています(2面「ひと」欄)。崔善愛さんは、在日への差別と闘った父親のキリスト教牧師、崔昌華さんの生涯を舞台化した「Kyokai 心の38度線」公演に音楽監督として参加します。この記事で崔善愛さんはインタビューに答えて、幼少期の父とピアノの思い出、いまは亡き父への娘の思いを語っています。
朝日新聞8.13朝刊2面より
「Kyokai 心の38度線」公演は、8月18日(木)から22日(月)まで、東京・池袋の東京芸術劇場・シアターウェストで。
チケット前売り料金は一般5,000円。申し込み・問い合わせは、東京芸術座へ。
電話03-3997-4341、メールtg@tg-za.com、HPはhttp://www.tokyogeijutsuza.co.jp

追記◆8月17日付朝日新聞朝刊の東京版でも大きく報じられています。こちら


おすすめ情報◆崔昌華牧師の生涯を描いた小説『行動する預言者 崔昌華――ある在日韓国人牧師の生涯』(田中伸尚著)は岩波書店から2014年に刊行されています。3000円+税。

2016年8月11日木曜日

8.11は植村さんの日

25年前の1991年8月11日、朝日新聞の朝刊(大阪本社版)社会面トップに、植村隆さんの署名記事が掲載されました。植村隆さんは当時33歳。社会の弱者や差別を受ける人たちの声を読者に届けることに使命感をもつ心やさしき社会部記者でした。記事は、元朝鮮人従軍慰安婦のひとりが韓国の団体の聞き取りに応じて証言を始めた、というものでした。その慰安婦のおばあさん(金学順さん)は3日後に単独インタビュー(北海道新聞)と共同記者会見で自身の辛く悲しい体験を語りました。それまで韓国社会で閉ざされていた従軍慰安婦の存在はこうして大きくクローズアップされ、元慰安婦が次々と名乗り出ることになったのでした。

四半世紀の歳月が流れました。植村さんはいま58歳。この25年前のスクープ記事を「捏造」と誹謗中傷し、植村さんの記者生命と名誉を傷つけようとした大学教授(西岡力氏)とジャーナリスト(櫻井よしこ氏)、文藝春秋など出版4社を相手取って、東京と札幌で名誉棄損訴訟を闘っています。
NY同時多発テロの9.11、東日本大震災の3.11と同じように、8.11は私たち「植村裁判を支える市民の会」にとって、大きな意味をもっています。植村裁判の原点ともいうべき日、それが8.11です。
「私は捏造記者ではない」との植村さんの叫びと、支える会の参加呼びかけ「不屈の民主主義をつくるために」を、きょうあらためて胸に刻み、さらに支援の輪を広げ、絆を強く固くしていこうと思います。
25年前の8.11、朝日新聞朝刊社会面(大阪)。
右肩のトップに植村さんの署名記事がある













































2016年8月9日火曜日

小野寺弁護士の寄稿

札幌弁護団事務局長の小野寺信勝弁護士が、法学館憲法研究所(JICL)のホームページの「今週の一言」欄に寄稿し、植村裁判への理解と支援を全国に呼びかけています(8月8日付)。
http://www.jicl.jp/hitokoto/index.html
植村裁判のポイントと経過、支援の意味を法律家の立場からわかりやすく簡潔にまとめられた文章です。その全文を転載収録します。

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植村さんと植村裁判を支える市民の会にご支援を

小野寺信勝さん(弁護士・植村隆氏名誉毀損裁判札幌訴訟弁護団事務局長)


http://www.jicl.jp/search/img/0.gif
1 直接対決

 2016年4月22日午後3時30分、札幌地方裁判所805号法廷。朝日新聞元記者の植村隆氏が、自身の書いた慰安婦の証言記事を「捏造した」などと繰り返し非難するジャーナリストの櫻井よしこ氏及び出版社であるワック、新潮社、ダイヤモンド社に対し、損害賠償や謝罪広告等を求めた名誉毀損訴訟の第1回口頭弁論は、植村氏、櫻井氏がそれぞれ法廷で意見を述べる直接対決となった。
 「櫻井さんは、訴状にないことを付け加え、慰安婦になった経緯を継父が売った人身売買であると決めつけて、読者への印象をあえて操作したのです。これはジャーナリストとして許されない行為だと思います」
 植村氏は、法廷で櫻井氏のジャーナリストとしての姿勢をこのように非難した。植村氏の指摘は次のようなものだ。
 植村氏は1991年に元従軍慰安婦である金学順氏の証言を記事にした。櫻井氏はこの記事について2014年3月3日の産経新聞に「真実ゆがめる朝日報道」と題したコラムを発表し「この女性、金学順氏は後に東京地裁に訴えを起こし、訴状で、14歳で継父に40円で売られ、3年後、17歳のとき再び継父に売られたなどと書いている」にも関わらず、「植村氏は彼女が人身売買の犠牲者であるという重要な点を報じ」ていないと非難した。
 ところが、金学順氏が日本国に戦後補償を求めた訴状には人身売買されたなどどこにも書かれていない。つまり、櫻井氏は金学順氏の訴状に書かれていない事実を引用し、植村氏が慰安婦の真実を歪めて報じたという印象を強調しようとしたのである。
 他方、櫻井氏は、法廷での意見陳述で「『従軍慰安婦問題』と、悲惨で非人道的な強制連行の話は、朝日新聞が社を挙げて作り出したものであります」と、「慰安婦問題=朝日捏造説」を全面展開した。そして、「まるで運動家のように司法闘争に持ち込んだ植村氏の手法は、むしろ、言論・報道の自由を害するものであり、言論人の名に悖る行為ではないでしょうか。」と批判した。 
 まるでネットの言論をなぞるように朝日捏造説を滔々と述べ、事実に基づかない記事を平気で書く。どちらが言論人の名に悖るかは明らかだろう。

2 なぜ裁判に踏み切ったのか?

 櫻井氏は、意見陳述で「言論には言論」ともっともらしい理屈をもって司法に救済を求めた植村氏を難じた。しかし、櫻井氏の言説は「言論」といえるだろうか。
 
 櫻井氏の言説の一例を紹介する
。

 「過去、現在、未来にわたって日本国と日本人の名誉を著しく傷付ける彼らの宣伝はしかし、日本人による『従軍慰安婦』捏造記事がそもそもの出発点になっている」「 植村隆氏の署名入り記事である」(雑誌WiLL2014年4月号)
 「植村氏は金氏が女子挺身隊として連行された女性たちの生き残りの一人だと書いた。一人の女性の人生話として書いたこの記事は挺身隊と慰安婦は同じだったか否かという一般論次元の問題ではなく、明確な捏造記事である」(2014年10月23日週刊新潮)
 「若い少女たちが強制連行されたという報告の基となったのが「朝日新聞」の植村隆記者(すでに退社)の捏造記事である。植村氏は慰安婦とは無関係の女子挺身隊という勤労奉仕の少女たちと慰安婦を結び付けて報じた人物だ」(2014年9月13日週刊ダイヤモンド)

 ところで、なぜ櫻井氏は植村氏の記事を「捏造」と断定するのか。その出発点となったのが1991年8月11日付朝日新聞大阪版の以下の記事である。
 思い出すと今も涙 元朝鮮人従軍慰安婦 戦後半世紀重い口開く 【ソウル10日=植村隆】日中戦争や第二次大戦の際、『女子挺(てい)身隊』の名で戦場に連行され 、日本軍人相手に売春行為を強いられた「朝鮮人従軍慰安婦」のうち、一人がソウル市内に生存していることがわかり「韓国挺身隊問題対策協議会」(尹貞玉・共同代表 、十六団体約三十万人)が聞き取り作業を始めた。」(1991年8月11日朝日新聞大阪版社会面1面)

 これが「捏造」批判の対象となっている記事の一つである。その主な論拠は、勤労動員する「女子挺身隊」と無関係の従軍慰安婦とを意図的に混同させて日本が強制連行したかのような記事にしたというものである。櫻井氏もこの論拠に依っている。
 しかしながら、植村氏が記事を書いた当時、韓国では「挺身隊」という言葉は「慰安婦」を意味し、日本のメディアもそれを踏襲していた。朝日だけでなく、読売、産経などの他紙も慰安婦のことを「挺身隊」と表記していたのである。
 過去の慰安婦報道を調べれば植村批判に根拠がないことがわかるはずであるし、せいぜい言葉遣いという枝葉の問題に過ぎない。
 つまり、櫻井氏は、植村氏を慰安婦問題捏造の象徴に祭り上げて意図的に批判を加えているのである。そして、櫻井氏は、植村氏が歴史修正主義者から「捏造記者」と苛烈なバッシングを受け、娘を「殺す」と脅迫され、勤務する北星学園大学も「暴力」に晒されるなかで、あたかもその流れに便乗するように、執拗に植村氏を攻撃し続けたのである。これは言論ではなく人身攻撃に他ならない。植村氏は司法に救済を求めざるを得なかったのである。

3 札幌訴訟の提訴と移送を巡る攻防

 札幌訴訟が提起されたのは2014年2月10日であり、裁判が始まるまで1年以上かかったことになる。それは提訴後、櫻井氏側が、植村氏が札幌訴訟提訴前に文藝春秋、西岡力氏(東京基督教大学教授)を相手に東京地裁に提訴提起していたことなどを理由として、東京地裁への移送を申し立てていたからである。
 札幌地裁は、櫻井氏側の移送申立てを受けて、事件を東京地裁に移送する不当決定を下した。しかし、植村さんは捏造記者という汚名を受け激しい誹謗中傷、更には脅迫まで受けている。こうした被害と社会的影響力のある櫻井氏の言説とは切り離して考えることができないはずである。弁護団は、札幌高裁に不服を申立てて植村さんの被害実態を繰り返し主張した。また、北星大卒業生の有志が短期間で2629通を超える署名を集めてくれた。こうした主張と活動が功を奏し、札幌高裁は東京地裁への移送を認めない逆転勝利決定を下し、札幌地裁で審理されることになった。これは裁判管轄に留まらない大きな勝利である。

 札幌訴訟は第3回口頭弁論期日まで進行している。現時点では櫻井氏の表現が「事実の摘示」か、「論評」かについて、それぞれの主張を整理している段階である。これは前者であれば櫻井氏は植村氏が捏造したことが真実であること等の立証が必要であり、後者であればそこまでの立証は必要ないことになる。極めて法技術的論点ではあるが、訴訟の帰趨に関わる重要な争点について、双方の主張を闘わせている。

4 市民に支えられて

 2014年は異様な年であった。同年8月5日、朝日新聞の「慰安婦問題を考える」・「読者の疑問に答えます」と題した検証記事をきっかけに巻き起こった朝日バッシングは、植村氏や北星大に飛び火して苛烈な「暴力」に晒され、大学は植村氏の雇用継続を決めかねていた。他方、報道機関の多くは火の粉が降りかかるのを恐れてか報道を自粛し、地元紙ですら北星大を取り巻く異様な状況を積極的に報じようとしなかった。

 こうした状況下で、暴力に毅然と立ち向かったのは市民であった。2014年10月6日、学者、ジャーナリスト、弁護士等が発起人となり「負けるな北星!の会」(略称マケルナ会)が発足し、国内外の賛同者は1000名以上に膨らんだ。また、同年11月7日には、北星大に届いた脅迫状に関して、全国の弁護士380名が札幌地検に威力業務妨害で刑事告発し、同年12月26日にも全国352人が告発人、全国の弁護士438人が告発代理人となり、北星大への電凸※1の模様を動画サイトで公表した人物を札幌地検に刑事告発した。暴力による言論弾圧、歴史の書き換え、大学の自治への圧力を許さないという社会の意思を示したのである。
 そして、植村氏の雇用継続に揺れ続けた北星大は、2014年12月17日に記者会見を開き、2015年度の契約更新を発表したが、記者会見で方針転換の理由について、マケルナ会の激励や弁護士の告発、弁護士会の支援表明などの支援を挙げた。
また、上田文雄元札幌市長や香山リカ氏らは、植村氏の裁判は報道・表現の自由、民主主義を守るための闘いであるとして広く支援を呼びかけ、「植村裁判を支える市民の会」を設立した(ブログで裁判期日等を詳しく報告しているので、ぜひご覧頂きたい)。

 つまり、植村氏は、慰安婦問題を否定したい人々にとっては慰安婦捏造の象徴であるが、私たちにとっては自由の象徴であり、植村裁判は日本の右傾化への抵抗なのである。私たちはこの問題を裁判と支援の両輪で抗していきたい。

※1デントツ。「電話突撃取材」あるいは「電話突撃」の意味で、企業・宗教団体・公的機関・政治家・政党などに対して電話し、それらの組織の活動(主に広報・報道など)について「組織としての意見を問いただす」行為のこと。インターネットスラング。

◆小野寺信勝(おのでら のぶかつ)さんのプロフィール
2006
年弁護士登録。
北海道合同法律事務所所属。
自由法曹団、青年法律家協会、日本労働弁護団所属。
外国人技能実習生問題弁護士連絡会共同代表
日弁連人権擁護委員会技能実習問題PT嘱託委員
植村隆氏名誉毀損札幌訴訟弁護団事務局長



<転載終わり>

2016年8月7日日曜日

ネット中傷訴訟の判決全文

 ツイッターで植村隆さんの娘さんを誹謗中傷した男性に対し、170万円の損害賠償金支払いを命じた東京地裁判決(8月3日)の全文を、以下に掲載します。(■部分の固有名詞は不掲載)
 判決は、「実名、学校名、写真を掲載された当時17歳の高校生にとって、恐怖と不安は耐え難いものであったと考えられ、精神的損害を慰藉するには200万円が相当というべき」と断じています。
 判決についての記事「植村さん家族、全面勝訴!」は当ブログ8月3日付に掲載ずみです。

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平成28年(ワ)第5885号 損害賠償請求事件

判   決

原告 植村■■

同訴訟代理人弁護士 坂口徳雄
同             西岡弘之
同             廣田智子
同             大西啓文
同             出口裕規
同             斎藤悠貴

      被告 ■■■■

主   文

1 被告は、原告に対し、170万円及びこれに対する平成26年9月8日から支払い済みまで年5分の割合による金員を支払え。

2 訴訟費用は被告の負担とする。

3 この判決は、第1項に限り、仮に執行することができる。


事   実

第1 当事者の求めた裁判

1 請求の趣旨
  主文と同旨。

2 請求の趣旨に対する答弁
(1)原告の請求を棄却する。
(2)訴訟費用は原告の負担とする


第2 当事者の主張

 1 請求原因

(1)被告は、平成26年9月8日、インターネット上のサービスであるツイッターにおいて、原告の写真を掲載し、「朝日新聞従軍慰安婦捏造の植村隆の娘、■■■■■■■■2年植村■■が、高校生平和大使に選ばれた。詐欺師の祖母、反日韓国人の母親、反日捏造工作員の父親に育てられた超反日サラブレッド。将来必ず日本に仇なす存在になるだろう。」との投稿をした(以下「本件投稿」という。)、
 本件投稿は、原告の親族に犯罪者や日本を害する思想を有する者がおり、原告自身も将来日本を害する存在になる人物であるとの事実を摘示するものであり、原告の社会的評価を低下させ、原告の名誉権を侵害するものである。
 また、本件投稿は、原告の父が元朝日新聞記者の植村隆であること、原告の氏名、所属する高校名及び学年を原告の容姿が写った写真とともに明らかにするものであるところ、これらは、原告の私事に関する事実であり、原告の立場に立たされた一般人において公開を望まない事柄である、特に、原告の父は、かつて作成した記事により、不特定多数の者から脅迫等を受け、インターネット上の書き込みの中には、家族への攻撃を示唆するものも多数存在したのであり、本件投稿により、原告の生命及び身体に危険が生じる可能性があるから、原告の立場に立たされた一般人において絶対に公開を望まない事柄を摘示したものといえる。したがって、本件投稿は、原告のプライバシー権を侵害するものである。
さらに、本件投稿は、原告の容貌が写った写真を添付して行われているところ、これは、原告の意に反し、原告の容貌及び姿態をみだりに公表するものであるから、原告の肖像権を侵害する。
 
(2)本件投稿による損害の発生
 ア 精神的損害
 本件投稿は、原告の社会的評価を低下させ、同人の父に対するバッシングなどの攻撃が原告に及ぶことを意図してされたものであること、不特定多数の者に容易に閲覧され、伝播性が強いインターネット上のツィッターにおいてされたものであること及び原告の写真や所属する学校名や学年を特定してされたものであることなどに照らせば、本件投稿当時17歳の高校生であった原告の恐怖及び不安は耐え難いものであり、原告の精神的損害は300万円を下らない。
イ 鯛査費用及び弁護士費用
(ア)訴外ツィッターインクに対する発信者情報開示の仮処分に関する弁護士費用 20万円
(イ)訴外ツィッターインクに対する発信者情報開示の仮処分に関ずる翻訳費用 20万円
(ウ)経由プロバイダに対する発信者情報開示手続に関する弁護士費用 20万円
(エ)本件訴訟の弁護士費用 10万円

(3)よって、原告は、被告に対し、不法行為に基づき、一部請求として、精神的損害300万円のうち100万円及びその他の損害70万円の合計170万円並びにこれに対する不法行為の日である平成26年9月8日から支払済みまで年5分の割合による遅延損害金の支払を求める。

2 請求原因に対する認否
 認める。
 本件投稿を行ったこと、その違法性及び損害額については争わない。ただし、本件投稿のみが原因で原告の生命及び身体に対する危険が増加したわけではない。


理   由

1 請求原因に争いはなく、本件投稿が、原告のプライバシーや肖像権を侵害する違法なものであることは明らかである。
2 損害額についても当事者間に争いがないが、精神的損害の額については、弁論主義の適用がないことから、この点について、以下検討する。
 証拠(甲2及び甲3)によれば、原告の父は、平成26年2月頃から、自身が執筆した従軍慰安婦に関する記事がねつ造であるなどとして、不特定多数の者からバッシングを受け、同年5月頃には、生命に危害を加える旨の脅迫状が勤務先に送付されてきたこと及び家族に対する攻撃を示唆するインターネット上の書き込みも多数存在していたことが認められる。このような状況下において、被告は、原告について、「朝日新聞従軍慰安婦捏造の植村隆の娘」と記載した上で、原告の容姿が写った写真とともに、原告の氏名、通学先の高校名及び学年を摘示して原告の特定が容易にされるようにしたものであり、また、原告の父がその仕事上した行為に対する反感から未成年の娘に対する人格攻撃をしたものであって、その行為態様は、悪質で違法性が高いものというべきである。
 そして、上記各情報による原告の特定可能性の高さや、ツイッター利用による伝搬可能性の高さからすれば、本件投稿がされた当時17歳の高校生であった原告の恐怖及び不安は耐え難いものであったと考えられる。さらに、本件投稿自体は削除されたものの、平成28年6月16日の時点においても、本件投稿をスクリーンショットによって撮影した画像がインターネット上に残存しており(甲18及び甲19)、本件投稿による権利侵害の状態が継続していると認められること等、本件に顕れた事情に照らすと、本件投稿によって被った原告の精神的損害を慰藉するには、200万円が相当というべきである。

3 結論
以上によれば、原告の請求は理由があるから、これを認容することとし、主文のとおり判決する。

東京地方裁判所民事第24部

裁判長裁判官 朝倉佳秀
     裁判官 奥田大助
     裁判官 佐々木康平

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2016年8月4日木曜日

東京訴訟第6回期日

法廷で初めて示された誹謗中傷の全容

■文春側の「積極的な害意」を厳しく追及

植村裁判(東京)の第6回口頭弁論が、8月3日午後3時から東京地裁民事33部で開かれた。96席ある大きな103号法廷の傍聴席はこの日ほぼ満席。傍聴席から見て左側の原告席に、韓国から帰国中の植村隆さんと、弁護団が10余人。対する被告席には、相変わらず喜田村洋一弁護士ら代理人だけが2人。
裁判官が定刻に入廷した。陪席裁判官の交代によって、原克也裁判長の両側は前回からいずれも女性裁判官となっている。

まず、原告側代理人が準備書面と証拠多数を提出した。
提出証拠の主なものは、神戸松蔭女子学院大学と北星学園大学に殺到した、植村さんを非難し大学を脅す匿名のメールやはがきのたぐいだ。段ボール箱2箱にもなったという誹謗中傷の全容が、初めて法廷で白日の下にさらされた。

植村弁護団の永田亮弁護士はこれらの証拠を出した理由として、「原告の植村さんに向けられた苛烈なバッシングの内容を明らかにし、それが週刊文春の記事に起因していること、及び被告文藝春秋にバッシングを発生させようとの積極的な『害意』があったことを主張・立証する」として、準備書面要旨を朗読した。その要点は次の通りだ。

主張・立証■■■バッシングは週刊文春の記事に起因している

1.     植村さんは2014年4月から神戸松蔭女子学院大学で教鞭をとることになっていた。ところが同年1月30日、被告文藝春秋発行の週刊文春に「”慰安婦捏造”朝日新聞記者がお嬢さま女子大教授に」という記事が掲載されると、記事は瞬く間にインターネット上に拡散し、同大学への激しいバッシングが始まった。

2.     1月30日のうちに、ブログに同大学の電話、ファクス番号などが載り、「本日、神戸松蔭女子学院大学の方に電凸(電話での抗議)してみました」というコメントが付された。「週刊文春、読みました。みなさんの声が大きければ、採用取り消し、ということになるかも……楽観的すぎるかな?」などの投稿がなされた。
メール、ファクスは、1月30日から2月5日までに計247件に及んだ。「貴学は朝日新聞記者・植村隆氏を教授として迎へられるといふ週刊誌報道がありましたが、それは事実でせうか。植村氏は……所謂『従軍慰安婦』問題の禍根を捏造した人物の一人です。いはば彼は証明書付き、正真正銘の『国賊』『売国奴』です」といった内容だ。これらのメールやファクスは、週刊文春の記事を引用していることなどの点で共通する。

3.     同大学は、「週刊文春の記事が出てからは抗議の電話、メールなどが毎日数十本来ている。学校前で右翼の行動も危惧される。マイナスイメージが出たら存亡の危機にかかわる」などとして、植村さんに雇用契約の解除を申し出た。植村さんは、同大学も被害者と考え契約解除に応じざるを得なかった。

4.     2014年8月1日、文藝春秋は今度は、植村さんが以前から非常勤講師を続けていた北星学園大学に対し、取材と称して「大学教員としての適性には問題ないとお考えでしょうか」とする文書を送り付け、植村さんとの雇用契約の解除を迫った。同月6日には週刊文春に「慰安婦火付け役朝日新聞記者はお嬢様女子大クビで北の大地へ」と題する記事を掲載し、「韓国人留学生に対し、自らの捏造記事を用いて再び”誤った日本の姿”を刷り込んでいたとしたら、とんでもない売国行為だ」などと書いた。

5.     8月6日当日のうちに、「『韓国人留学生に対し、自らの捏造記事を用いて再び誤った日本の姿を刷り込んでいたとしたら、とんでもない売国行為だ』と文春。つまり貴校にはねつ造を教え込まれ『日本人には何をしても無罪』と思い込んだ韓国人学生がいる可能性があると言う事?」などといった攻撃メールが、同大学に相次いだ。みるみるエスカレートし、「くぎ入りガスボンベ爆弾を仕掛ける」などの脅迫状も届いた。この記事が載る前の7月に北星学園大学に送られた抗議のメールは19件、電話は7件だったが、記事掲載のあった8月には、メールが530件、電話が160件に激増した。

6.     さらに植村さんの高校生の娘さんの写真をブログに掲載し、「晒し支持!断固支持!」「こいつの父親のせいでどれだけの日本人が苦労したことか。親父が超絶反日活動で何も稼いだで贅沢三昧で育ったのだろう。自殺するまで追い込むしかない」などと記すものもあった。

7.     バッシングが少しずつ社会問題化すると、2014年10月23日付け週刊文春は、「朝日新聞よ、被害者ぶるのはお止めなさい~”OB記者脅迫”を錦の御旗にする姑息」と題する記事を載せ、その記事の中で櫻井よしこ氏は「社会の怒りを掻き立て、暴力的言辞を惹起しているものがあるとすれば、それは朝日や植村氏の姿勢ではないでしょうか」と述べ、西岡力氏は「脅迫事件とは別に、記者としての捏造の有無を大学は本来きちんと調査する必要がある」と発言。文藝春秋は、植村さんとその家族の受けた被害を知ってもなお、その被害を嘲笑って、さらなるバッシングを扇動した。

8.     2015年2月には、北星学園大学に「6会場で実施される一般入学試験会場とその周辺において、その場にいる教職員及び受験生、関係者を無差別に殺傷する」「『国賊』植村隆の娘である〇〇(実名)を必ず殺す。期限は設けない。何年かかっても殺す。何処へ逃げても殺す。地の果てまで追い詰めて殺す。絶対にコロス」という殺害予告状まで届いた。

9.     北星学園大学は度重なる脅迫などへの対応の為、警備費用として2年間で5千万円近くの負担を余儀なくされた。同大学は植村さんとの契約更新を躊躇せざるを得ず、植村さんは大学への影響も踏まえて苦渋の決断をし、韓国のカトリック大学の客員教授に就任することになった。

10. 以上の経緯に照らせば、週刊文春の記事により、植村さんへのバッシングが引き起こされ、植村さんの名誉と生活の平穏が害されたことは明らかだ。植村さんがこの裁判を起こさざるを得なかったのは、被告文藝春秋によって引き起こされた激しいバッシング、中傷、脅迫が、植村さんとその職場、そして愛する娘さんにまで及んだからである。

永田弁護士の陳述で改めて聞くバッシングのひどさに、廷内は水を打ったように静まった。果たして裁判官たちの胸には、どの程度届いたか。

裁判の今後の進行予定は、被告側が反論を11月末までに提出することになった。
次回口頭弁論は、12月14日の15時から開くことも決まった。

法廷は15時18分で終了。閉廷直後に、傍聴していた男性1人が立ちあがって声をあげ「週刊文春は正しい」などと二言、三言口走ったが、誰も相手にすることはなかった。

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「ネット中傷訴訟」勝訴に沸いた報告集会 
■シンポジウムでは「メディアの萎縮」を論議












100人近い傍聴者のほとんどが、そのまま東京地裁に隣接する弁護士会館へ移動し、この日16時10分から、報告集会が同会館5階会議室で開かれた。

正面の壁には、おなじみの「植村隆裁判報告集会 『私は捏造記者ではありません』」の横断幕。しかし、この日はそれに並んで、「ネット中傷訴訟判決 勝訴」という新しい垂れ幕が掲げられた。この日に判決があったばかりの勝訴の速報である。
実は、植村さんが起こした東京、札幌の名誉棄損訴訟のほかに、植村さんの娘さんが、ツイッターに自身の顔写真や誹謗中傷の投稿をされたとして、投稿主の中年男性に損害賠償を求めた「ネット中傷訴訟」が水面下で進められていた。植村さん側からのいわば「第三の訴訟」と言えるが、匿名の投稿者をIPアドレス、プロバイダーから割り出し追及する上で仮処分などを繰り返す難しい過程を辿り、プライバシーにも配慮して、これまでは公にされてこなかった。
奇しくも、植村さんの名誉棄損裁判の弁論で、娘さんが受けた人身攻撃が法廷に引き出された8月3日に、その娘さんが原告の「第三の訴訟」の判決が、東京地裁の別の部で言い渡されたのだ。
判決は、「投稿は、プライバシー、肖像権を侵害する違法なもの。未成年の高校生に対する人格攻撃であり、悪質だ」として、投稿した男性に原告の請求通りの170万円を支払うように命じた。植村さんの娘さんの全面勝訴である。この日、判決後の記者会見で娘さんの次のようなコメントが読み上げられた。「匿名の不特定多数からのいわれのない誹謗中傷は、まるではかり知れない『闇』のようなものでした」「こうしたことは他の人にも起こりうる出来事。こうした攻撃にさらされることのない社会になってほしい。今回の判決が、そのきっかけになってほしいと思います」
思いがけない娘さんの「第三の訴訟」の勝訴の報告に、弁護士会館で始まったばかりの報告集会の会場は沸いた。
植村弁護団事務局長の神原弁護士が立ち、、「この種事案で認められた慰謝料としては、きわめて高い」と、娘さんが勝ち取った判決の意義の大きさを補足説明した。
続いて、永田亮弁護士が、この日の植村裁判第6回口頭弁論についての報告をした。「植村さんは名誉のみならず、生活の平穏も破壊された。植村さんの損害の中核にバッシングがある。裁判官に損害に向き合ってもらうよう、きょうの書面を出した」と語った。
新崎盛五さん■■■「委縮」しない記者と記事をもっと応援しよう
岩崎貞明さん■■■放送界の現場では「圧迫」を自覚する人が少ない
香山リカさん■■■ヘイトスピーチ支持者は「集団催眠」にかかっている


一連の報告が終わると、報告集会のもう一つの目玉であるシンポジウムに移った。
テーマは「メディアの委縮を打ち破れ」。新聞労連前委員長でマスコミ文化情報労組会議議長の新崎盛吾さん、放送レポート編集長の岩崎貞明さん、放送倫理・番組向上機構(BPO)前委員で精神科医の香山リカさんがパネリストだった。3人は、みな植村裁判支援に中心的に加わってきた人でもある。司会は、やはり東京の支援の中心を務めている朝日OBの佐藤和雄さん。
放送界の現状について、岩崎さんは「現場の委縮は深刻だという声がある。ただ、それを言う記者はまだ自覚的であり、考える時間さえないという人たちもいる」と話した。また、「放送界への政府の圧迫は、振り返れば93年の椿発言問題のころからすでに始まっていたことがわかる」と指摘した。
新崎さんは、新聞界の現状を「委縮している」と断じたうえで、その要因について、①会社の管理強化で行儀がよくなってしまった②ネットで記事が攻撃されやすくなった③現在の政権の問題。特に取材先が委縮して情報を得にくくなっている状況がある、と説明した。
香山さんはまず、「植村裁判を支援する市民の会」の共同代表の一人になった理由に触れ、北海道出身であること、発言すると自身も誹謗に遭ったため他人事ではないと思ったと話した。さらに現在のメディアの委縮をつくっているものとして、3つのレイヤー(層)がある、と指摘。①権力の介入②スポンサー(広告代理店)③ネットの無数の匿名者を挙げた。
こうした委縮状況を打破するためにはどうしたらよいのか。
新崎さんは、例として、朝日新聞社が福島原発の吉田調書記事を取り消したのは行きすぎだとし、調書を取ってきたこと自体は十分評価されるべきだと述べて、新聞労連があえてこのチームに労連特別賞を贈ったことを報告。「応援」の大切さを強調した。
岩崎さんは、「首相との会食などから、メディアは権力の一角のように思われている。これを自ら打破しないと、市民からの信頼回復はおぼつかない。とくに幹部が委縮している」。
香山さんは「1000通も誹謗メールが来ると、『こんなに来てしまって…』と委縮しがちだが、実際には10人くらいが何度もメールしているだけなのかもしれない。実態をよく知って、そういう攻撃に対しては、もっとタフになるべきだ」と話した。また、「ヘイトスピーチなどを支持する人はいわば集団催眠にかかっている。『事実を見ろ』と言ってもなかなか通じないかもしれない。そういう人には別の夢を見せることも大事だ」と、精神科医らしい見方を語った。
右から=香山さん、岩崎さん、新崎さん、佐藤さん














集会の最後に植村隆さんがあいさつに立ち、「娘の圧勝でますます元気になった。産経が嘘を書いたのでいま訂正要求も突き付けている。この闘いをがんばり、産経も我々の側に立つようになるといい。ジャーナリズムの再生を目指す」と、決意を語った。
text by K.F.

2016年8月3日水曜日

植村さん家族、全面勝訴!

速報!
娘さんに異例の全額認める判決
ネット中傷投稿者への損害賠償請求裁判で

植村隆さんの娘さんが、ネットで中傷の書き込みをした投稿者を相手取って起こした裁判の判決が8月3日午後、東京地裁で言い渡されました。原告(娘さん)が請求した170万円満額が認められ、原告側全面勝訴の判決です。

今回の訴訟は、植村さんの娘さんが2014年9月、写真と名前をツイッター上にさらされ「反日韓国人の母親、反日捏造工作員の父親に育てられた超反日サラブレッド。将来必ず日本に仇なす存在になるだろう」などと中傷の書き込みをされた問題をめぐる一連の裁判の一環。8月3日に言い渡されたのは、このツイッターを書き込んだ投稿者本人を相手取った訴訟の判決です。

ツイッター社に発信者情報開示命じる仮処分決定⇒プロバイダーに投稿者の住所氏名開示命じる判決⇒そして投稿者をプライバシー権と肖像権侵害で提訴⇒全面勝訴

原告側資料によると、植村さんの娘さんは代理人を通じて2015年3月、まずツイッター社に発信者情報の開示を求める仮処分を東京地裁に申し立て、同年6月に投稿者のIPアドレスの開示を命じる仮処分決定が出ました。ツイッター社からの開示を受けてプロバイダーを特定し、プロバイダーを相手取り投稿者の住所氏名の開示を求める訴訟を提起。今年2月の地裁判決で開示が命じられました。

プロバイダーが開示した個人情報で特定された投稿者を相手取り、「ツイッターの投稿で名誉が傷つけられ、プライバシー権と肖像権が侵害された」として2月に提訴。被告本人は法廷に出頭して、自分が投稿したことを認めたといい、8月3日に判決が言い渡されたものです。

2014年に植村さんやご家族、勤務先の大学を襲った一連のバッシングのうち、この1件だけですが、記事と何の関係もない娘さんを攻撃したツイッター投稿者の身元を裁判によって特定し、責任を追及したことになります。原告弁護団は、同種の匿名による誹謗中傷に対する抑止力になるよう、この判決の意義を広めたい、と言っています。

原告側はプライバシー保護を理由に、この訴訟を公にせず進めてきていました。
勝訴後に開いた記者会見の終了をもって解禁となったので、お知らせします。












この日、東京地裁ではこの判決の後、午後3時から別の法廷で植村裁判東京訴訟の第6回口頭弁論があり、午後4時すぎからは報告集会が開かれました。娘さんの完全勝訴の報はその集会の冒頭に報告されました。会場には大きな拍手が沸き起こりました。植村弁護団(東京)の神原元弁護士は、「認容額が高額であること、また満額であることは異例だが、高く評価できる」と解説しました。植村さんは、「裁判所は和解を勧めたが娘は判決を求めた、そして勝った。私はそんな娘に支えられている、だから私は負けない」と語りました(写真上=8月3日午後、報告集会会場となった霞が関の弁護士会館で)。



2016年8月2日火曜日

野田正彰さん講演録

日本軍の性暴力=慰安婦問題を考えるということは、私たちの社会のゆがみを見つめ、私たちの人間性を振り返っていくということです

札幌訴訟第3回口頭弁論後の報告集会での講演を要約して収録します(7月29日) 

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慰安婦問題との関わりを振り返りますと、1990年ごろだったと思いますが、鑑定を依頼されたことがあります。私は天邪鬼なところがあって、韓国の慰安婦については多くのマスコミが報道していて、同じことはしたくないので、私は中国の慰安婦の鑑定を引き受け、台湾、フィリピンのおばあさんたちを診ました。
そこで一つの視点を、みなさんに提起したい。マスコミや社会的な評判になっていることに関して、フォーカス効果といわれることがある。光がある一つのところに当たると、その周りが見えなくなることを言うのですが、慰安婦問題もそうではなかったか。
日本軍はひどいことをいろいろなところで行ったのですが、韓国の慰安婦問題が90年代にああいう形で提起されると、多くの日本人は慰安婦問題は韓国の女性問題と焦点化し、理知的にはそうではないとしても、感覚としてはそのように捉えたのではないか。今回の日韓の合意に関して、政府は今回の交渉は台湾、中国などに広げるものではないと、とすぐに言いました。多くの女性が性奴隷にされたことが忘れられています。これが私たちの政府の姿であり、私たちの意識の反映であることを忘れてはならない。


■日本軍の特異性――性的暴力に加え、虐待、暴行の限りを尽くす

私は海南島、中国とベトナムの間の大きな島ですが、東京高裁の鑑定で2度訪ね、10数人を診ました。また中国の太原も訪ね、台湾では当時確認されていた40数人のうち10数人を診察し、その後も相談に乗ってきました。東京高裁に提出した事例のいくつかはみすず書房から出した「虜囚の記憶」にサンプルとして紹介している。
中国・山西省のあるケースでは、日本軍はある村の役場を占拠してから、近くの若い女性をさらいに行く。当時の敵の八路軍に男を出しているのではないかといった口実を一応付けるが、実は若い女性がいる情報を事前に集めておいてから行くわけです。そして八路軍に家族を出しているとか口実をつけて、若い女性を縛って、担いで駐屯地へ設けた慰安所へ連れていく。3畳ほどの、窓もない部屋が並ぶ長屋のようなところに4、5人の女性を放り込んで、男たちが順々に強姦していく。人により違うが、昼間は3、4人、夜は将校のクラスが来る。

日本軍の特異性というのは、こうした性的暴行の対象としたうえで、さらに慰安婦たちを日中連れ出して、村で何が行われているか言えと責めて、暴行を加えているということです。軍靴で蹴とばし、銃座で殴る。それで骨が砕ける。3、4カ月もすると衰弱し、使い物にならなくなる。すると、駐屯地の近くにむしろで包んで捨てる。それを村の人が助け出す。しかし、多くの人は死んでいく。そんななか奇跡的に命を救われた一人は、両大腿骨と腰椎が砕けて、身長が数センチも縮んでいた。こうした状況はほとんどのところで聞かれました。
 
さて皆さんの想像力ですが、私の今の話を聞いて、どう思われたでしょうか。私たちはいま、韓国の女性のことを聞きながら、日本軍が中国はじめ東南アジアの各地の戦線で、何をしてきたのか考えたでしょうか。これまで想像できたでしょうか。もう一つ質問したい。(日本軍から捨てられた)16、17歳の女性がその後、どう生きていくことができたか。どんなに大変だったか。メタメタにされた体で、多くの人は乞食をしながら生きていく。その場所は黄土高原の穀物もほとんど獲れないところです。もう一つ想像してください。では簡単に乞食ができただろうか。多くの人からは〝日本の女〟として差別され、排除され続けました。

■彼女たちの思いが届かない日本社会の鈍感さ、醜さ

彼女たちがその後、生きていくことが、いかに大変だったか、日本のマスコミは問題にしたでしょうか。報道したでしょうか。彼女たちがなぜここまで名誉の回復を求めるのか。その言葉の裏には、戦後の60-70年を生きていくことがいかに困難だったかがあるわけですが、それを想像できるでしょうか。一人一人が受けた困難を日本政府が認めることによって、自分が生きてきたことに意味があったことを確認し、そして自分の地域社会に認めてもらいたいという思いがあったからです。裁判を起こしたのはそういう思いがあったからです。しかし、それは日本の社会、市民に届いていない。まして、いつまでも何を言ってんだという声が出てくる。これは人間の鈍感さ、醜さの表れです。

裁判は精神的外傷の認定を求めるものですが、それは当たり前のこと。私はPTSD(Post Traumatic Stress Disorder:心的外傷後ストレス障害)は米軍が戦争遂行のため、保険を通すために作った誤った概念と思っている。加害も被害も一緒くたにして、殺したこと、死ぬということを一定期間のインターバルで思い出す、フラッシュバックするなんてありえない。私はベトナムに派遣された韓国兵にインタビューし、生き残ったドイツ兵を診断したが、すべての人に苦しみはずーっと続いていました。忘れた期間があるなんてありえない。
慰安婦の人たちも一瞬たりとも忘れられない。60数年たっていても、村の道を歩いていて竹林がざわざわ揺れると、日本兵が飛び出してくるのではないかと足がすくんでしまう。夜中に扉が風で揺れると、中にいたおばちゃんがキャーっといって家を飛び出して震えている。孫が「戦争は終わったのよ」と抱きしめ続けても、おばあちゃんは日本軍が雨戸を破って入ってきて連れ出していく感覚の中に連れ戻されている。

PTSDの症状はこうして全員に続いているわけだが、私は「破局的体験後の人格障害」という概念を東京高裁に提出した。それは持続的に人格が変わってしまうということです。どんなに変わるかというと、望まれるままに素晴らしく成長した女性も、(ああいう経験をすると)、人格が硬直してしまう。基本的に世間に対して疑い深く、周りに警戒的、家族も信じられない。引きこもり―積極性がなくなる。何事にも無力感があり、生きていることに空虚感を持つ。常に危機に瀕している慢性的な感情、人に対するよそよそしい態度…人間としての尊厳が徹底的に、かつ持続的に壊されると、人の性格はこうも変わってしまう。

■破局的な体験の後に人格障害で苦しむ被害者たち

海南島のおばあさんの1人は人格的に変わっているし、村も(変わってしまった彼女を)受け入れる力がない。そこでおばあさんは小さな掘っ立て小屋を建ててもらって、牛だけと鼻をくっつけるようにして生きてきた。子宮筋腫だと思うが、年老いて大量の出血と貧血に苦しむようになった。それを若いときの性の乱れ―決して本人の責任ではないが―と苦しみながら、日本に謝罪を求めて、村落の名誉回復のために裁判を起こした。
東京高裁では私の鑑定書が全面的に採用されました。判決文は「破局的な体験後の人格障害」にいずれの女性も苦しんでいるとし、軍の威圧のもとで自己の性的満足を得ようとする本件の凌辱行為は陸軍刑法や海軍刑法でも強姦罪という重大な犯罪行為というべきで、最も卑劣な行為と厳しい批判を受けなければならない。本件女性たちの被害は重大で、癒されたとか、償われたとも言えない、とした。しかし、1972年の日中の平和条約締結で請求権は消滅したとして、最終決定はおばあさんたちの訴えを棄却した。このように判決は鑑定内容を全面的に認めているが、私たちはこうしたことをほとんど理解していない。
 
ところで、韓国では日本は女性たちをさらっていった。外地に行けば看護助手の仕事があるとか、食事の世話をするとかいってだまし、明らかに軍が関与する船でシンガポールやミャンマーなどに送りだした。
しかし、これらと中国や南方の人の扱いは明らかに違いがある印象だ。中国の女性たちは性的暴行の対象にされたうえ、暴行で殺されている。これは日本人の、日本の男の精神性がどうだったのかを示している。つまらん比較をするなとも言われるが、私は考え込まざるを得ない。日本軍の兵士は暴行した女性を殺しただけでなく、妊娠していた女性の腹まで割いている。こうした事例は枚挙にいとまない。なんで、ここまでするのか。軍の教育に希望がない。男たちは生きて帰る希望のない戦争を強いられた。何をしてもおしまいだという戦争を強いられていた。

■日本軍国主義の”文化”は敗戦で消えたわけではない

ロシア(ソ連)の兵士たちが中国東北部(満州)に入り、ベルリンにも進撃し、性的暴行の限りを尽くしているが、日本の軍国主義とは異なる様相をみせる例がある。被害者女性と兵隊とのそれなりの戦場における人間的交流が報告されている。日本軍の性的暴行を受けた女性の話を聞くと、かなり違う。女性が親切をしたのに骨盤を砕かれて、両大腿骨を折られた。なぜ、ここまでする軍隊をつくったのか。それは現代まで続く日本社会の歪みではないでしょうか。あの硬直した―何かあると「生か死か」とアホなことをいって、怒鳴り声をあげる。こうした戦前の、常に緊張する文化が、敗戦と同時に消えたわけではない。

軍隊は解散されたけれど、すぐ防衛とか何とかいって復活させただけでなく、社会のあり方は〝硬直〟のままです。一つの手段を設定すると、それで最大の効率を上げればよいとなる。兵士たちは戦場でどうせ死ぬのだから何をやってもよいとなり、敵の女性を自分の性的対象にする。こうした文化が天皇制の下で強制され、今も続いているのではないでしょうか。

韓国の慰安婦問題はきちんとぜひ考え続けてほしい。しかし、政府、マスコミによってつくられる焦点(フォーカス)効果で、おそらく何十倍もの中国、東南アジアの被害者について私たちは考えないし、責任もとっていない。
挙句の果て、どこの国の軍隊も同じという論評がどこにでもあります。
韓国の慰安婦の女性に対して政府は公的な謝罪をする必要はあるが、しかし、反省というものは相手の社会に対するものではない。私たちの社会がまともになるため、硬直した、人間を性的奴隷にしてしまうまでに落ちぶれた社会を、私たちに取り戻すために反省するのです。

■中国、東南アジアに及ぶ被害を日本政府はどうするのか

中国には歴史学会の講演などで何度も行きました。印象的だったのは、中国の新聞社のトップの1人が小泉首相(当時)の靖国参拝について、日本の政治家は何か勘違いしているのではないか、といっていたことです。私たちは政治家に靖国に行ってくれるなといっているわけではない、この靖国参拝は日本のためにならないことだという。かつて私たちの国は立ち遅れ、国はバラバラだったが、いまは一国として軍備を整え、2度とあのような戦争を起こさせない自信がある。だから戦争で何をしたかを考えるのはあなた方の問題ではないでしょうか、というわけです。

あれから20年、中国の構えも変わってきたようです。しかし、戦争を振り返り、慰安婦のことを振り返るのは、私たちの社会をまともにする、よくするのであって、謝ってよい印象を持ってもらおう、相手の国との貿易をよくするとかというわけではない。
そして慰安婦にされた被害者には、よくぞ生きていてくださったと感謝を伝える必要があります。そして病気に苦しんでいる人に(私たちは)何ができるかを考えることではないだろうか。

私は韓国、台湾で、社会で孤立しているおばあさんたちと開く食事会に参加してきた。何度か頼まれて、往診もした。しかし、私たちの政府は何もしないままでいます。そして今回の日韓交渉での合意内容は中国や東南アジアに及ぶものではないと説明する。こうした政府をつくっているのは私たちです。よく〝普通の国〟にならなければといわれる。しかし、私は普通の社会でないのに、どうして〝普通〟ができるのかと思いますね。

■右傾化の中枢にいる櫻井よしこの威圧的、権威主義的パーソナリティ

そして櫻井よしこ氏です。何度となく食事したことがあるのですが、その櫻井氏が植村裁判の冒頭で、植村報道のためどれだけ多くの日本人が恥ずかしい思いをしたか、不名誉に苦しんでいるかと、とうとうと述べています。
私はこういう発想で、アジテーション的な発言すること自体が、ファッショ(全体主義)的な姿勢だと思います。どうして彼女は、日本人の感情を勝手に代表することができるのでしょうか。自分の都合のいいように、国家とか民族とかの論理にすり替え、人を威圧する。まさに近代日本が行ってきた権威主義的パーソナリティといえる。自ら行ってきたこと、感情を見つめることなく他人を攻撃する、少数者に対して威圧的に構えるのが権威主義的な人のパーソナリティです。

そんな彼女が、「日本会議」など右傾化を代表する組織の代表のような立場にいる。私には不思議です。勘ぐりですが、何か裏があると思う。彼女が右傾化する日本の政治の中枢になぜいるのか。自己の生き方、感情を隠して、集団を代表するような発言を繰り返す。それは近代日本が、ずーっとしてきたことです。「世界に冠たる日本」とか言って、人々を戦場に行って死ねと追い詰め、生きて帰らないのだから、証拠隠滅すれば何をしてもよいという日本を作り出した。

慰安婦問題を考えるということは、私たちの社会のゆがみを見つめ、私たちの人間性を振り返っていくということです。

(まとめと文責・山本)

2016年8月1日月曜日

東京訴訟第6回迫る

植村裁判東京訴訟(被告西岡力、文藝春秋)の第6回口頭弁論が8月3日に東京地裁で行われます。終了後には、報告集会と香山リカさんらが出席するシンポジウムがあります。
猛暑の中での裁判と集会です。体調にお気をつけのうえ、ご参加ください。

■第6回口頭弁論
8月3日(水)午後3時から午後3時半
東京地方裁判所 103号法廷
*東京メトロ丸ノ内線・日比谷線・千代田線「霞が関」駅A1出口から1分。有楽町線「桜田門」駅出口より3分
*傍聴は整理券の発行と抽選が予想されます。2時15分までにお集まりください。
■報告集会とシンポジウム
同日午後4時15分~5時45分
弁護士会館502A~F *裁判所のすぐ裏。日比谷公園側です
◇第1部:裁判の報告 植村東京訴訟弁護団から 
≪週刊文春記事が喚起した憎悪のメールとファックス≫
◇第2部:シンポジウム ≪メディアの萎縮を打ち破れ≫
香山リカさん(立教大教授、放送倫理・番組向上機構(BPO)前委員)
新崎盛吾さん(日本マスコミ文化情報労組会議(MIC)議長、新聞労連委員長)
岩崎貞明さん(「放送レポート」編集長)
*ジャーナリズムを担うメディア(報道各社)の萎縮が指摘され、「メディアの危機」が深まっている。なぜ萎縮は起こっているのか。それを打破するためには何をすべきなのか――。
*資料代500円。事前申し込みは不要です。
◆主催:植村東京訴訟支援チーム 
◆共催:新聞労連/民放労連/日本ジャーナリスト会議(JCJ)
◆問い合わせ先:日本ジャーナリスト会議 電話03・3291・6475