2019年10月5日土曜日

韓国言論人らに学ぶ

10月10日に札幌高裁で控訴審が結審するのを機に、韓国から12人の言論・文化人が札幌を訪れ、裁判の傍聴や報告集会に参加する予定です。来札するのは、9月16日にソウルで結成された「植村隆を考える会」(ウセンモ)の呼びかけ人や賛同者です。このうち、ハンギョレ新聞元論説主幹の慎洪範(シン・ホンボム)さんと民主言論市民連合事務処長の金彦卿(キム・オンギョン)さんは、翌11日に札幌で開かれるシンポジウム「いまこそ報道の自由を我が手に!」に講師として出席します。
同シンポジウムの開催要領は以下の通りです。
日時■10月11日(金)午後1時30分~4時
会場■札幌市教育文化会館302会議室 (中央区北1西13)
参加費■500円
問い合わせ■韓国ジャーナリストから学ぶ会(080-1898-7037七尾)
テーマ■韓国記者、勇気と闘いの証言
講師■
ハンギョレ新聞元論説主幹 慎洪範(シン・ホンボム)さん=1941年生まれ。朝鮮日報記者として自由言論運動を展開し、解雇。その後、民主化運動にかかわる。1986年に「報道指針」事件で逮捕・拘束される。ハンギョレ新聞の創刊に参加し、論説主幹をつとめた
民主言論市民連合事務処長 金彦卿(キム・オンギョン)さん=1968年生まれ。民主言論市民連合の事務処長として、国会議員選挙、大統領選挙などのメディア監視を主導している
■主催者呼びかけ
1980年代、韓国の全斗煥軍事独裁政権は「報道指針」という名の言論統制を行っていた。文化広報部が連日、詳細な報道統制のガイドラインを秘密裏に各メディアに通告していたのだ。例えば「金大中の写真や単独会見は不可」(86年5月28日付けの指針)という具合である。事実上の検閲だった。
この報道指針を、86年9月に民主言論運動協議会(民言協)の機関誌「マル(言葉)」特集号が暴露した。警察は元朝鮮日報記者で民言協の中心になっていた慎洪範(シン・ホンボム)執行委員ら3人を連行。3人は、刑法の外交上の機密漏洩罪などで起訴され一審で有罪となった。しかし、「言論の自立性の保障」などをうたった87年6月の「民主化宣言」の後に行われた控訴審で、3人は無罪となり、最高裁で無罪が確定した。「(マル誌)事件は『報道指針』の撤廃はもとより、市民の民主化運動の導火線となった」(韓永学著『韓国の言論法』)と言われる。
今回、「マル」事件の中心メンバーだった慎洪範さんが札幌を訪れる機会に、過酷な言論統制の時代になぜ暴露ができたのか、その勇気と闘いについて語っていただく。
民主言論運動協議会は現在、民主言論市民連合(民言連)と名を変え、選挙報道の監視などメディアウオッチングを続けている。その事務処長の金彦卿(キム・オンギョン)さんも来札される。金さんからは、現在の活動についての報告を受ける。
日本では、安倍晋三政権下で、メディアの忖度報道が広がっている。それは、メディア自らが「報道指針」を定めていると言えるのではないか。隣国の過去は、日本の明日かもしれない。
韓国からのおふたりの証言と報告について、シンポジウム形式で意見交換と質疑を行い、両国の市民、ジャーナリストの間の理解と交流、連帯を深める機会としたい。