2019年7月26日金曜日

韓国は「敵」なのか


いまや日韓の文化交流、市民交流は途方もない規模で展開しています。300万人が日本から韓国へ旅行して、700万人が韓国から日本を訪問しています。ネトウヨやヘイトスピーチ派がどんなに叫ぼうと、日本と韓国は大切な隣国同士であり、韓国と日本を切り離すことはできないのです。安倍首相は、日本国民と韓国国民の仲を裂き、両国民を対立反目させるようなことはやめてください。意見が違えば、手を握ったまま、討論をつづければいいではないですか。


日韓関係が泥沼のような対立に陥っている事態を憂慮し、感情的ではなく合理的な対話で問題の解決を求める声明が発せられました。声明は賛同署名をも求めています。その声明の全文を、ネット上から転載します。
75人の呼びかけ人には、植村裁判の支援を続けている方々も多数います。
声明 韓国は「敵」なのか https://peace3appeal.jimdo.com/


はじめに 
 私たちは、7月初め、日本政府が表明した、韓国に対する輸出規制に反対し、即時撤回を求めるものです。半導体製造が韓国経済にとってもつ重要な意義を思えば、この措置が韓国経済に致命的な打撃をあたえかねない、敵対的な行為であることは明らかです。
 日本政府の措置が出された当初は、昨年の「徴用工」判決とその後の韓国政府の対応に対する報復であると受けとめられましたが、自由貿易の原則に反するとの批判が高まると、日本政府は安全保障上の信頼性が失われたためにとられた措置であると説明しはじめました。これに対して文在寅大統領は7月15日に、「南北関係の発展と朝鮮半島の平和のために力を尽くす韓国政府に対する重大な挑戦だ」とはげしく反論するにいたりました。

1、韓国は「敵」なのか
 国と国のあいだには衝突もおこるし、不利益措置がとられることがあります。しかし、相手国のとった措置が気にいらないからといって、対抗措置をとれば、相手を刺激して、逆効果になる場合があります。
 特別な歴史的過去をもつ日本と韓国の場合は、対立するにしても、特別慎重な配慮が必要になります。それは、かつて日本がこの国を侵略し、植民地支配をした歴史があるからです。日本の圧力に「屈した」と見られれば、いかなる政権も、国民から見放されます。日本の報復が韓国の報復を招けば、その連鎖反応の結果は、泥沼です。両国のナショナリズムは、しばらくの間、収拾がつかなくなる可能性があります。このような事態に陥ることは、絶対に避けなければなりません。

 すでに多くの指摘があるように、このたびの措置自身、日本が多大な恩恵を受けてきた自由貿易の原則に反するものですし、日本経済にも大きなマイナスになるものです。しかも来年は「東京オリンピック・パラリンピック」の年です。普通なら、周辺でごたごたが起きてほしくないと考えるのが主催国でしょう。それが、主催国自身が周辺と摩擦を引き起こしてどうするのでしょうか。
 今回の措置で、両国関係はこじれるだけで、日本にとって得るものはまったくないという結果に終わるでしょう。問題の解決には、感情的でなく、冷静で合理的な対話以外にありえないのです。

 思い出されるのは、安倍晋三総理が、本年初めの国会での施政方針演説で、中国、ロシアとの関係改善について述べ、北朝鮮についてさえ「相互不信の殻を破り」、「私自身が金正恩委員長と直接向き合い」、「あらゆるチャンスを逃すことなく」、交渉をしたいと述べた一方で、日韓関係については一言もふれなかったことです。まるで韓国を「相手にせず」という姿勢を誇示したようにみえました。そして、六月末の大阪でのG20の会議のさいには、出席した各国首脳と個別にも会談したのに、韓国の文在寅大統領だけは完全に無視し、立ち話さえもしなかったのです。その上でのこのたびの措置なのです。
 これでは、まるで韓国を「敵」のように扱う措置になっていますが、とんでもない誤りです。韓国は、自由と民主主義を基調とし、東アジアの平和と繁栄をともに築いていく大切な隣人です。

2、日韓は未来志向のパートナー
 1998年10月、金大中韓国大統領が来日しました。金大中大統領は、日本の国会で演説し、戦後の日本は議会制民主主義のもと、経済成長を遂げ、アジアへの援助国となると同時に、平和主義を守ってきた、と評価しました。そして日本国民には過去を直視し、歴史をおそれる勇気を、また韓国国民には、戦後大きく変わった日本の姿を評価し、ともに未来に向けて歩もうと呼びかけたのです。日本の国会議員たちも、大きく拍手してこの呼びかけに答えました。軍事政権に何度も殺されそうになった金大中氏を、戦後民主主義の中で育った日本の政治家や市民たちが支援し、救ったということもありました。また日本の多くの人々も、金大中氏が軍事政権の弾圧の中で信念を守り、民主主義のために戦ったことを知っていました。この相互の敬意が、小渕恵三首相と金大中大統領の「日韓パートナーシップ宣言」の基礎となったのです。

 金大中大統領は、なお韓国の国民には日本に対する疑念と不信が強いけれど、日本が戦前の歴史を直視し、また戦後の憲法と民主主義を守って進むならば、ともに未来に向かうことは出来るだろうと大いなる希望を述べたのでした。そして、それまで韓国で禁じられていた日本の大衆文化の開放に踏み切ったのです。

3、日韓条約、請求権協定で問題は解決していない
 元徴用工問題について、安倍政権は国際法、国際約束に違反していると繰り返し、述べています。それは1965年に締結された「日韓基本条約」とそれに基づいた「日韓請求権協定」のことを指しています。
 日韓基本条約の第2条は、1910年の韓国併合条約の無効を宣言していますが、韓国と日本ではこの第2条の解釈が対立したままです。というのは、韓国側の解釈では、併合条約は本来無効であり、日本の植民地支配は韓国の同意に基づくものでなく、韓国民に強制されたものであったとなりますが、日本側の解釈では、併合条約は1948年の大韓民国の建国時までは有効であり、両国の合意により日本は韓国を併合したので、植民地支配に対する反省も、謝罪もおこなうつもりがない、ということになっているのです。

 しかし、それから半世紀以上が経ち、日本政府も国民も、変わっていきました。植民地支配が韓国人に損害と苦痛をあたえたことを認め、それは謝罪し、反省すべきことだというのが、大方の日本国民の共通認識になりました。1995年の村山富市首相談話の歴史認識は、1998年の「日韓パートナーシップ宣言」、そして2002年の「日朝平壌宣言」の基礎になっています。この認識を基礎にして、2010年、韓国併合100年の菅直人首相談話をもとりいれて、日本政府が韓国と向き合うならば、現れてくる問題を協力して解決していくことができるはずです。

 問題になっている元徴用工たちの訴訟は民事訴訟であり、被告は日本企業です。まずは被告企業が判決に対して、どう対応するかが問われるはずなのに、はじめから日本政府が飛び出してきたことで、事態を混乱させ、国対国の争いになってしまいました。元徴用工問題と同様な中国人強制連行・強制労働問題では1972年の日中共同声明による中国政府の戦争賠償の放棄後も、2000年花岡(鹿島建設和解)、2009年西松建設和解、2016年三菱マテリアル和解がなされていますが、その際、日本政府は、民間同士のことだからとして、一切口を挟みませんでした。

 日韓基本条約・日韓請求権協定は両国関係の基礎として、存在していますから、尊重されるべきです。しかし、安倍政権が常套句のように繰り返す「解決済み」では決してないのです。日本政府自身、一貫して個人による補償請求の権利を否定していません。この半世紀の間、サハリンの残留韓国人の帰国支援、被爆した韓国人への支援など、植民地支配に起因する個人の被害に対して、日本政府は、工夫しながら補償に代わる措置も行ってきましたし、安倍政権が朴槿恵政権と2015年末に合意した「日韓慰安婦合意」(この評価は様々であり、また、すでに財団は解散していますが)も、韓国側の財団を通じて、日本政府が被害者個人に国費10億円を差し出した事例に他なりません。一方、韓国も、盧武鉉政権時代、植民地被害者に対し法律を制定して個人への補償を行っています。こうした事例を踏まえるならば、議論し、双方が納得する妥協点を見出すことは可能だと思います。

 現在、仲裁委員会の設置をめぐって「対立」していますが、日韓請求権協定第3条にいう仲裁委員会による解決に最初に着目したのは、20118月の「慰安婦問題」に関する韓国憲法裁判所の決定でした。その時は、日本側は仲裁委員会の設置に応じていません。こうした経緯を踏まえて、解決のための誠実な対応が求められています。

おわりに
 私たちは、日本政府が韓国に対する輸出規制をただちに撤回し、韓国政府との間で、冷静な対話・議論を開始することを求めるものです。
 いまや1998年の「日韓パートナーシップ宣言」がひらいた日韓の文化交流、市民交流は途方もない規模で展開しています。BTS(防弾少年団)の人気は圧倒的です。テレビの取材にこたえて、「(日本の)女子高生は韓国で生きている」と公然と語っています。300万人が日本から韓国へ旅行して、700万人が韓国から日本を訪問しています。ネトウヨやヘイトスピーチ派がどんなに叫ぼうと、日本と韓国は大切な隣国同士であり、韓国と日本を切り離すことはできないのです。
 安倍首相は、日本国民と韓国国民の仲を裂き、両国民を対立反目させるようなことはやめてください。意見が違えば、手を握ったまま、討論をつづければいいではないですか。
 2019年7月25日

呼びかけ人 *は世話人  
青木有加(弁護士)秋林こずえ(同志社大学教授)浅井基文(元外務省職員)庵逧由香(立命館大学教授)石川亮太(立命館大学教員) 石坂浩一(立教大学教員)*岩崎稔(東京外国語大学教授)殷勇基(弁護士)内海愛子(恵泉女学園大学名誉教授)*内田雅敏(弁護士)*内橋克人(評論家)梅林宏道(ピースデポ特別顧問)大沢真理(元東京大学教授)太田修(同志社大学教授)大森典子(弁護士)岡田充(共同通信客員論説委員)*岡本厚(元「世界」編集長)*岡野八代(同志社大学教員)荻野富士夫(小樽商科大学名誉教授)小田川興(元朝日新聞ソウル支局長)大貫康雄(元NHKヨーロッパ総局長)勝守真(元秋田大学教員)勝村誠(立命館大学教授)桂島宣弘(立命館大学名誉教授)金子勝(慶応大学名誉教授)我部政明(琉球大学教授)鎌田慧(作家)香山リカ(精神科医)川上詩朗(弁護士)川崎哲(ピースボート共同代表)小林久公(強制動員真相究明ネットワーク事務局次長)小森陽一(東京大学名誉教授)在間秀和(弁護士)佐川亜紀(詩人)佐藤学(学習院大学特任教授)佐藤学(沖縄国際大学教授)佐藤久(翻訳家)佐野通夫(こども教育宝仙大学教員)島袋純(琉球大学教授)宋基燦(立命館大学准教授)高田健(戦争させない・9条壊すな!総がかり行動実行委員会共同代表)髙村竜平(秋田大学教育文化学部)高橋哲哉(東京大学教授)田島泰彦(早稲田大学非常勤講師、元上智大学教授)田中宏(一橋大学名誉教授)*高嶺朝一(琉球新報元社長)谷口誠(元国連大使)外村大(東京大学教授)中島岳志(東京工業大学教授)永田浩三(武蔵大学教授)中野晃一(上智大学教授)成田龍一(日本女子大学教授)西谷修(哲学者)波佐場清(立命館大学コリア研究センター上席研究員)花房恵美子(関釜裁判支援の会)花房敏雄(関釜裁判支援の会元事務局長)羽場久美子(青山学院大学教授)広渡清吾(東京大学名誉教授)飛田雄一(神戸学生青年センター館長)藤石貴代(新潟大学)古川美佳(朝鮮美術文化研究者)星川淳(作家・翻訳家)星野英一(琉球大学名誉教授)布袋敏博(早稲田大学教授・朝鮮文学研究)前田哲男(評論家)三浦まり(上智大学教授)三島憲一(大阪大学名誉教授)美根慶樹(元日朝国交正常化交渉日本政府代表)宮内勝典(作家)矢野秀喜(朝鮮人強制労働被害者補償立法をめざす日韓共同行動事務局長)山口二郎(法政大学教授)山田貴夫(フェリス女学院大学・法政大学非常勤講師、ヘイトスピーチを許さないかわさき市民ネットワーク事務局)山本晴太(弁護士)和田春樹(東京大学名誉教授)*
=2019年7月25日 現在75名
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日韓関係悪化の原因とされる元徴用工問題については、昨年11月5日に弁護士・学者有志(1月現在298人)が発表した声明が、法的な側面と経緯をわかりやすく説明しています。あわせてご参照ください。



2019年7月25日木曜日

「標的」目標額達成


植村隆さんの闘いの日々を追った映画「標的」の制作を支援するクラウドファンディング(CF)がこのほど、目標の300万円に達しました。7月22日現在、参加者は223人、金額は3,254,030円、達成率108%です。
「標的CF」の期限は8月22日ですが、金額に上限はありませんので、さらなるご協力をよろしくお願いします。
ホームページに掲載されたCF参加者の応援メーッセージを転載します。お名前は省略し、新着順に並べました。
ドキュメンタリー映画映画「標的」支援プロジェクト 
負の歴史にフタをする国は、同じ過ちを繰り返すだろう。 負の歴史を伝えることは、正の未来を創ることにつながる。 
大学の講演会で、植村さんのお話を聞いて、ジャーナリズムを守らなきゃいけないと思いました。応援しています。
植村さんを応援したいと以前から思っていました。 今回この機会に恵まれ心をこめて応援いたします!
ぜひ頑張ってください。応援しています! 名前は非公開でお願いします。
遅れましたが、植村隆さんの闘いと映画を応援しています! 理不尽なバッシングとその本質に迫る映画の完成を楽しみにしています。
日本で一番取り扱うことが難しい問題に正面から取り組んでいる西嶋監督に敬意を表します。
期待しています 真実はひとつ!
応援しています!抗い、を今日観せていただきました。こころから感動しました!標的、も期待していますので、頑張って下さいね
植村さん、『週刊金曜日』ともども応援しています。
応援しています!植村さんを攻撃する、あまりにも卑劣なやり口に憤りを感じ、闘い続ける植村さんに強く共感しています。
西嶋さん、植村さん、植村裁判を支える市民の会、応援しています!映画の完成を楽しみにしています。DVDを頂いたら、周りの友人・知人に広めていきたいと思います。
このことに限らず、人権無視政策は福島原発事故・慰安婦・徴用工・南京大虐殺をなきものとする企ては中国人朝鮮人日本人の区別なく踏みにじってる。 理不尽な「捏造」・ヘイトスピーチをしている者も謙虚な気持ちがあったなら、気づけるのではないか。 最終目標は改憲という明治憲法復元反対に広く闘いましょう。
応援しています!週刊金曜日、創刊からの読者です。植村さんの闘いもずっと応援してきました。益々のご活躍を!
札幌に次ぎ東京でも不当判決 6名もの判事が法理を曲げて アベ友に加勢する異常に驚愕します。 しっかり真実を撮って記録して下さい。
「より多くの方々に理不尽な『捏造』批判の全容を伝えたい」という西嶋監督の言葉に120%賛同致します。この様な形で参加する機会を与えて下さった事に感謝すると共に、この様な形でしか参加出来ない自分の分まで頑張って頂きたく、応援する次第です。
「捏造」に負けることのない、ドキュメンタリーの力を信じています。
応援しています! 権力一体となった植村さんや家族への人格否定と真実を捻じ曲げるバッシングは本当に許せません。「標的」で真実を恐れる側の人たちに市民の底力で正義を示しましょう。
歴史修正主義が「跋扈」するこの時代に反撃を開始しよう!多くの仲間の支援が集まり、一刻も早く映画が完成することを願います。ささやかですが、気持ちは強く応援しています。正しいことが当たり前に通る世の中になりますように。
これは作られるべき映画です。映画の力を信じます。
応援しています!インチキマスコミに負けるな!
真実を多くの人に知って欲しいです
応援しています! このような運動を待っていました。一粒一粒打ちつけていけば大きな力になると信じます。
植村氏の勝利と西島さんのドキュメント完成に期待しています。「ネトウヨ」判決を打ち破るまで先の長い闘いが続きますが、ともに関わり続けましょう!
植村氏へのバッシングの理不尽さが明確になるような、丁寧かつわかりやすい映像作品になることを期待します。微力ながら。 応援しています!
がんばってください
War is over if we want it. 
応援しています! 植村さんご家族の正義が実現されますように、祈ります。
勝利するまで止めないのが、勝利するコツですね! みんなで応援しています。
福岡在住ですので,RKBでよくお顔をみていました。いい作品になることと思います
応援しています! 週刊金曜日の編集長もがんばってください。
応援しています!現在の日本のマスメディアの正念場だと思います。 良い作品を作ってください。
応援しています!私も微力ながらNHKのニュースを監視する運動に関わっています。RKBOBに西嶋さんのような方がおられて誇らしい気持ちです。
権力に都合の悪い事が次々に書き換えられるオーウェルの『1984』めいた社会は真っ平です。 微力ですが、この映画の製作を支持します。
応援しています! 映画の完成を楽しみにしています!
理不尽なバッシングは許さない。 デマやフェイクニュースに扇動され、 間違った情報で気に入らない人を攻撃したり、 憂さ晴らしに炎上に加担して、おかしいことをおかしいと主張する人を黙らせようとする気持ちの悪い社会を変えなければ。 映画期待しています。
応援しています! 韓国で初めて「慰安婦」の名乗りをなさったキム・ハクスンを、植村隆さんが記事を書いてくださったおかげで知ることができました。「慰安婦」問題は、被害女性たちが勇気をもって名乗りを上げられたことから始まり、彼女たちの声を聞くことでのみ解決への糸口が見つかるのだと思います。植村さんが「捏造記者」だとのバッシングを受けたことは、「慰安婦」被害者たちが、「売春婦」「金目当ての名乗り出」とバッシングされたことと内実は同じです。植村隆さんの受けた被害を、「標的」だと言い切った西嶋真司監督を応援します。
ファクトチェック(悪意あるフェイクを許さない)。作品完成を期待しております。
応援しています! 頑張ってください。
植村さんに対する理不尽な仕打ちを知り憤っています。戦う植村さんを支援します。 ただし、理不尽な仕打ちが恐ろしいので、匿名での支援とさせてください。
理不尽なバッシングがまかり通る世の中になれば、社会が壊れてしまいます。映画でデマに対抗することは有効な手段だと思います。微力ですが応援しています。
応援しています! 札幌地裁のとんでも判決に対抗するためにもこの映画はたいせつです。
応援しています! 今ヒット中の映画「主戦場」のミキ・デザキ監督が、あの映画を作ろうと考えたきっかけが植村さんへのバッシング問題だったと知りました。作品の完成を待っています。
いい作品になることを期待しています。よろしくお願い致します!
ネトウヨの標的にされた植村さんの無念とその後の戦いの映画楽しみにしています。
応援しています! 無知や無関心の大きな壁がどんどん拡がる時代ですが、地に足をつけて歩む等身大の思想と行動を忘れずに力を合わせていきましょう。
印象で物事をとらえられ、誤った事実が容易に拡散され、誹謗中傷がはびこる現代で、「おかしいことはおかしい」というジャーナリズムの役割と意義を伝えられようとする西嶋さんの取り組みは、人々に真実を伝える、とても意義のある、大切なものだと思います。わずかばかりですが応援させていただきます。何とぞ制作をよろしくお願いいたします。
応援しています! 映画「主戦場」を観て、このクラウドファンディングを知りました。
歴史修正(捏造)文化人達に敢然と立ち向かう皆さんを尊敬、応援しています
映画「主戦場」によって植村さんや慰安婦問題への関心が高まっています。これを期に、誰が誠実で歴史に真摯に向き合っているか示していきましょう。
嘘つき安倍政権とその周辺グループをいっそうして、事実・現実・真実が正しく伝わる世の中にしましょう。そして、子どもたちの健やかな育ちを保障できる世の中にしましょう。
「共犯者たち」に続くメディアと記者の権力周辺との闘いを応援しています!
以前より植村さん活動を応援しています。植村さんを題材とした映画の完成を楽しみにいたしております。監督さん、スタッフの皆様、頑張って下さい!
私たちの知る権利のために誹謗中傷や危険な目を怖れずに戦っていらっしゃるジャーナリストの方たちに感謝します。微力ながら応援しています。
真実を伝え続けた植村隆さんへのバッシングは不当です。こんなことが許される社会であってはならないと思います。 この映画が多くの人に届くことを願い、応援しています。
西嶋監督、『抗い』のときはお世話になりました。植村さんのことは他人事とは思えず、二度札幌にも伺いました。植村さんのお母様が亡くなられたときも札幌におりました。あのとき病院でロケをしておられたんですね。がんばってください。完成を楽しみにしています。
頑張ってください。 海外に住んでいるので、配送の必要なリターンは送付していただかなくて大丈夫です。
本当に応援しています! 今この日本ではファシズムの嵐が吹き荒れていることに気づかない多くの人達の胸に届く作品をどうか作って下さい。
植村さんやそのご家族の方、内定先の大学に対する脅迫。札幌地裁が原告の捏造は認めず、被告が自称ジャーナリストであるにもかかわらず明白な誤りをしていることは指摘したこと。そのうえでのあの判決。こうしたことに対する報道の少なさには甚だ閉口しております。 今の状態が是正されることを望んでおります。
日本を私たちがどんな国にしたいのかが問われています。アジアの皆さんとどんな関係を築いていきたいのかが問われています。新しい時代だと世の中は騒いでいますが、過去に向き合えない中で笑止千万です。「忘れてしまおうとすること、記憶を抑圧してしまおうとすることの誘惑が大変に大きなものであることは確かです。しかし私たちはそれに負けてしまうことはないでしょう。」これはアウシュビッツ解放60年にあたってのシュレーダー首相の言葉です。この映画が忘却への警笛として役に立つことを心から願っています。
応援しています!人を、周りを恐怖のどん底に落とし込むやつらを許してはなりません、映画完成させましょう。
最近のヘイトスピーチなど社会の雰囲気に不安を覚えております。応援しております。
陰ながら応援しています!
植村さんへの個人攻撃はあまりにもひどい、と思っていました。少しですが支援できて良かったです。報道機関が政権におもねってはなりません。
小生は9年前に定年退職し、現在は阿蘇の野焼きボランティアやくまもと被害者支援センター、またはKLCC(地雷廃絶と被害者支援の会・熊本)等で時間をつぶしています。西嶋さんの活動はFBで拝見しています。年金暮らしなのでわずかですが応援を
植村さんの闘いは“歴史修正主義者”たちとの闘いでもあります。 それを一人でも多くの方々に知ってもらうために「標的」の完成、普及に期待しています。
緊張と対立を煽る権力。 盲従する大衆…、いつか来た道としか思えません。 嘘、捏造、隠蔽…、それはまさに政権の十八番です。徹底的に暴いてください!
西嶋真司監督の決意と勇気に敬意を表します。 万全を期した内容を湛えた作品の完成と、全国での公開を期待しています。
応援しています! 期待しております
応援しています! インパクトある良い映画ができますように!!
応援しています!お体にも十分気をつけて正義を貫いて下さい!
植村さんの闘いは、植村さんとご家族の名誉を守る闘いであると同時に、日本の民主主義を守り、戦争を許さない闘いでもあります。「標的」が1人でも多くの皆さんに観て欲しいと願っています。
負けないで頑張りましょう!応援しています
ぜひいい映画にしていただき、それを広めましょう!
応援しています!西嶋さんの心中に燃やす情熱にいつも感心しています。
多くの方に観ていただきたい映画です!こんなことが起きているということを、日本国内はもとより、海外の方にも知ってほしいです。
応援しています!正義を語れる世の中にしたいです!
退職後も、熱意を失わない西嶋さん。思いを実現してもらいたいと思っています。

2019年7月24日水曜日

植村さんの九州講演


毎年恒例の植村さんの夏の講演ツアー、2019年は熊本、大分、福岡を駆け巡ります。
演題と日程は次の通りです。

熊本市 8月2日()18:30~
 「慰安婦報道の真実とは・・・」
熊本自治労会館(熊本市中央区神水1丁目8-1)
参加費500円、主催熊本県平和運動センター、いのちとくらし・平和を守る熊本ネットワーク
連絡先:k-rouren@fancy.ocn.ne.jp(熊本県労連 重松)
※植村弁護団の小野寺信勝弁護士も参加します

大分市 8月3日()13:30~
「ジャーナリズムへの期待」
大分市コンパルホール400号 (大分市府内町1丁目5−38)
参加費1000円(前売800円)、主催『週刊金曜日』大分読者会
連絡先 isayama@ae.auone-net.jp(諌山)

福岡市 8月4日()14:00~16:30
「真実を捏造したのは歴史修正主義者たちだった〜
歴史修正主義と闘うジャーナリストの報告」
都久志会館(福岡市中央区天神4-8-10)  
資料代500円、主催 日本ジャーナリスト会議福岡支部、九州民放OB
連絡先  tsuguo@m3.gyao.ne.jp  ( 白垣)

2019年7月20日土曜日

「週刊金曜日」特集

3弁護士が寄稿、原克也裁判長を厳しく批判


「週刊金曜日」の最新号(7月19日号)が、「植村裁判東京地裁判決」の特集を掲載しています。特集は10ページにわたり、6本の記事と2つの資料で構成されています。このうちの3本は、東京弁護団の中心メンバーである3人の弁護士(神原元、穂積剛、吉村功志氏)の寄稿です。
神原弁護士は、東京地裁判決(原克也裁判長)を「判例法理をねじ曲げただけでなく、歴史の真実をもねじ曲げた異様な判決だ」「被告らに有利な証拠だけを採用したとしか思えない」「西岡氏が金学順氏の証言を変更していたことを法廷で認めさせた点は重要だ。しかし判決はこの点を一顧だにしていない」と批判しています。
原裁判長はこれまでに、慰安婦問題をめぐる2件の名誉棄損訴訟でも原告敗訴の判決を下しています。穂積、吉村両弁護士は、それぞれの訴訟にかかわった経験を明かし、「(原裁判長は)まともな事実認定と法律解釈をする意思など初めから持ち合わせていなかった。植村裁判でこの人物が勝訴を書いていたら、そちらの方が驚愕すべき結果だったというべきであろう」(穂積)、「(判決は)原告が問題とする記述を、被告が書いたのとは異なる表現に巧妙にすり替えた。当然ながら控訴審は疑問を呈し、前提事実の整理をやり直した」(吉村)と書いています。穂積弁護士の訴訟は、吉見義明・中央大教授(当時)が桜内文城衆院議員(当時)を訴えたもの。吉村弁護士の訴訟は、金学順さんらの国賠訴訟弁護団長だった高木健一弁護士が藤岡信勝氏と「Will」の発行元ワックを訴えたものです。
詳しくは、同誌をお読みください。

このほかも必読の記事ばかりです。特集の記事見出し・筆者は次の通りです。
▽闘うべき相手は、被告席の背後に、裁判所の奥に存在する/問われているのはこの国のデモクラシー=安田浩一(p22~23)
▽被告らに有利な証拠だけを採用/判例法理をねじ曲げ、歴史の真実をもねじ曲げる=神原元
▽「慰安婦」をめぐる別の裁判でも原裁判長、原告敗訴の判決/曲がりくねった解釈に首捻る=穂積剛(p26)、表現すり替え敗訴に導く手法=吉村功志(p26)
▽新聞労連はなぜ植村さんを応援するのか/ジャーナリスト活動を続けるためのネットワーク作りを(談)=南彰(p27)
▽「慰安婦」強制連行報道の櫻井よしこ氏/番組の「顔」が「原稿を読み上げた」だけと弁明=徃住嘉文(p28~29)
▽東京訴訟関連年表、東京地裁判決文(要旨)=編集部(p30~31)



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メール koudoku@kinyoubi.co.jp

2019年7月19日金曜日

「日韓合意」の失敗

徴用工訴訟問題や輸出規制が原因で日韓関係の悪化が進んでいます。その背景には、慰安婦問題についての「日韓合意」(2015年12月)が大きな影を落としています。最近の日韓関係を正しく理解するための一助として、ブログ「吹禅YukiTanaka」から田中利幸氏の最新の論考を転載します。田中氏は戦争責任や天皇制、慰安婦問題で発言を続けている歴史研究者です。プロフィル、著作は同ブログをご参照下さい。

--以下、見出し、小見出し、本文、敬称略、強調部とも、すべて原文のまま、転載します--

「日韓合意」は安倍政権による「記憶の騙し取り」
―― 記憶の方法と責任問題意識の
関連性についての一考察――


安倍晋三「慰安婦バッシング」の略歴
 
  「日本軍性奴隷(いわゆる「慰安婦」)」問題での「日韓合意」について考える場合、まずはこの「合意」を提唱した張本人である日本国首相・安倍晋三が、「慰安婦」問題でどのような発言と行動を政治家としてとってきたのか、その経歴を知っておく必要がある。

  安倍は、日本軍性奴隷のみならず、南京虐殺など、アジア太平洋戦争(193145年)という侵略戦争中に日本軍が犯した様々な戦争犯罪の歴史事実を全面的に否定し、そうした歴史真実を隠蔽する積極的な活動を、国会議員に初めてなった1993年からこれまでの26年あまり、一貫して続けてきている。その活動内容は、「政治的反対運動」と単純によべるものではなく、欺瞞と虚偽、政治的圧力といった様々な邪悪な手段を使うものであったことは、彼の歴史問題に関する経歴を調べてみれば一目瞭然である。

  安倍は、議員になるや、「侵略戦争の歴史否定」を唱える自民党議員の集まりである「歴史検討委員会」のメンバーとなった。1995年には、「戦後50年国会決議」、通称「戦争謝罪決議」あるいは「不戦決議」と呼ばれるものの採択を阻止し、「戦争謝罪決議」のかわりに「戦没者追悼・感謝決議」の国会採択を求める運動を全国で展開する「戦後50年国民会議」に加わり活躍した。96年からは日本軍性奴隷問題のみならず、南京虐殺、強制連行、日本のアジア侵略、植民地支配などに関する教科書記述が著しく偏向していると非難攻撃を展開する 「『明るい日本』国会議員連盟」の事務局次長に就任。「自由主義史観研究会」や「新しい教科書をつくる会」を立ち上げた藤岡信勝(当時、東京大学教授)、高橋史朗(明星大学教授)、西尾幹二(当時、電気通信大学教授)といった右翼知識人らとも密接に連携して、文部省に政治的圧力を加える中心的役割を果たした。安倍はまた、2000128日から12日の間に東京で開かれた「日本軍性奴隷制を裁く女性国際戦犯法廷」を紹介するNHKテレビ・ドキュメンタリーの内容を、自民党の同僚政治家である中川昭一と結託して、NHKスタッフに恫喝まがいの圧力をかけて改竄させるという暴挙を行った。
  20069月に首相の座に着くや、「慰安婦に対する狭義の強制性」の事実を裏づける証拠はないから、教科書でこの問題を取り上げるべきではないと国会で主張。(安倍の言う「狭義の強制」とは「暴行や脅迫を使って女性を慰安所に連行した」ことを意味しているが、騙されて「慰安所」に連れていかれ、「暴行や脅迫」を受けて性奴隷となった女性たちが無数にいたことを隠蔽するための「強制」定義である。)それのみか、「A級戦犯は国内法的な意味では犯罪者ではない」とまで安倍は述べて、東京裁判の法的正当性を根底から否定する発言も行った。
  ところが、20071月、米国民主党の連邦議会下院議員であるマイケル・ホンダらが、「慰安婦」問題で日本政府に被害者に対する謝罪要求を行う決議案を下院に提出し、安倍の日本軍性奴隷問題に関する発言をアメリカのメディアがこぞって厳しく批判するや、態度を一変。同年4月に訪米し、ブッシュ大統領と首脳会談を行った際には、自分のほうから「慰安婦問題」に触れ、「自分は、辛酸をなめられた元慰安婦の方々に、人間として、また総理として心から同情するとともに、そうした極めて苦しい状況におかれたことについて申し訳ないという気持ちでいっぱいである」(強調:引用者)と発言。かくして、安部は、日本軍性奴隷問題で犠牲者とは直接関係のない米国の大統領の前で「謝罪」表明を行い、それを米国大統領が受け入れるという、犠牲者を全く無視したブラック・ユーモアと称すべきような茶番劇を行った。当然、その後現在まで、日本軍性奴隷にさせられた女性たちに直接彼が日本の首相として謝罪するということは1回も行っていない。それが、本当に「人間として」とるべき態度であろうか。
  2012年末の総選挙で自民党が圧勝し、再び首相の座に返り咲いた安倍は、1993年発表の「河野洋平官房長官談話」の見直しを提唱。20137月の参議院選挙でも自民党が圧勝した後は、さらに歴史問題で日本の戦争責任否定の言動を強化。2014年初頭からは、「河野談話」検証要求の強い声を安倍支持派の自民党議員から出させ、同年620日には検討委員会による結果報告『慰安婦問題を巡る日韓間のやりとり経緯:河野談話作成からアジア女性基金まで』を発表。しかし、検討委員会は、談話作成のために使われた肝心の資料そのものに関する調査・検討は一切行わず、「河野談話」は、韓国側からの一方的な強い要求を最終的には受け入れざるをえなくなり、日本側が不本意ながら「強制」を認める形で作成されたという印象を強くあたえようという、悪意に満ちた政治的意図でこの報告書を作成した。
  周知のように、「河野談話」は、日本政府(宮澤喜一内閣)が行った調査の結果を199384日に公表し、日本軍が「慰安所」設置に直接関与していたことをはっきりと認めると同時に、当時の内閣官房長官・河野洋平が「談話」として日本政府の責任を認めたものである。この調査では、1948年にオランダが行った戦犯裁判である「バタビア裁判」記録や戦時中に米軍が作成した関連報告書など、合計260点以上の資料を参考にすると同時に、実際に16名の被害者女性と「軍慰安所」関係者約15名からの聞き取り調査が行われた。すでに述べたように、上記の「河野談話」検討委員会は、これらの調査資料の信憑性については一切言及してない。それもそのはず、なぜなら、これらの資料には疑わしいものが全くないからである。(ちなみに、その後も、「慰安婦」が日本軍性奴隷であったことを証拠づける数多くの資料  その中には東京裁判検察局に提出されたものもある  が発見されている。)
  ところが、20148月には、198090年代に朝日新聞が発表した誤報記事のために「慰安婦強制連行」があったという事実無根の情報が世界中に流れた、とする猛烈な「朝日新聞バッシング」と元朝日新聞記者の植村隆に対する個人攻撃が展開された。この背後にも安倍ならびに安倍支持派の自民党政治家たちの存在があった。この「朝日新聞バッシング」は、「河野談話バッシング」と連結させて画策されたものであったことは言うまでもない。
  こうした一連の安倍内閣による「慰安婦バッシング」に深く憂慮した国連の拷問禁止委員会や自由権規約委員会などが、日本政府に対して、元「慰安婦」に対する人権侵害的言動を改め、国家責任を認め、彼女たちに公的謝罪を表明し且つ十分な賠償を与えること、さらには「この問題に関して学生ならびに一般市民を教育し、その教育には教科書による適切な参考書を含むこと」などの勧告を、これまで再三にわたって発してきた。しかし安倍内閣は、破廉恥にもこうした勧告を一切無視してきた。
  結局、歴史事実を否定しようとするこうしたさまざまな陰険な画策によってもなんら功をおさめることができなかった安倍内閣は、「河野談話をこれからも継承していく」と表面では言いながら、実際には、「河野談話」があたかも歴史事実に基づいていない虚偽の報告書であるかのような発言や欺瞞的な画策を引き続き行い、韓国政府をはじめ関係各国政府の政治的信頼を失う結果をもたらしてきたのである。

「日韓合意」の失敗は誰にあるのか

  安倍内閣の「慰安婦」問題へのこうした欺瞞的な対処の仕方に国内外から批判がやまなかったため、安倍は、201512月末に、「日韓合意」という形でこの問題に決着をつけようと考えた。
  2015年末、日韓外相会議を開き、「慰安婦問題」での「最終的、不可逆的な解決」で日韓両政府が合意したと発表。しかし、この「合意」の内実は、日本軍性奴隷の被害者の思いは完全に無視する一方で、日本の法的責任は認めず、「賠償」ではないと主張する10億円という金を出すことで、今後はこの問題を再び日韓間で問題にはしない約束をとるという、甚だしい被害者人権侵害以外の何物でもない。しかも、本来なら加害国である日本が賠償責任をとるべきであるにもかかわらず、財団を韓国政府に設立・運営させることで、責任を被害国におしつけるという破廉恥な要求である。さらには、ソウル日本大使館前に置かれている「平和の碑(少女像)」も移転させるという日本側の要求も、その「合意」の内容に含まれていた。
  「責任を痛感している」はずの安倍政権が、本来の被害者である高齢のハルモニたちに対しては直接に「謝罪」表明は全くしないどころか、結局は「10億円出すから今後はこの問題については黙れ」、「その歴史的象徴である『平和の碑』も人目につかないところに移転させろ」と言ったわけである。つまり、「最終的、不可逆的な解決」とは、結局、10億円という金で日本軍性奴隷の存在という歴史事実に関する記憶を買い取り、その記憶を抹消することを目的とするものだったのである。さらには、「責任を痛感している」と言いながら、20162月に開かれた国連女性差別撤廃委員会の対日審査では、日本政府代表の杉山晋輔外務審議官が、「慰安婦強制」を証明する資料は見当たらないし、朝日新聞の誤報のせいで全く間違った情報が行き渡ってしまったと、相変わらず、世界中から失笑を買うような虚妄発言を続けた。日本にとって絶望的なのは、安倍自身をはじめ安倍政権閣僚たちや安倍支持者たちが、自分たちがやっていることが、どれほど失笑を買う低劣な行為と海外から見られているのかを全く認識していないことである。
  さらに問題なのは、日本軍性奴制の被害者は韓国人だけではなく、アジア太平洋全域にわたっているにもかかわらず、「日韓合意」では韓国以外の被害者の存在は完全に無視されてしまったことである。安倍が本当に「責任を痛感している」ならば、韓国以外の被害者に対する「謝罪」についても具体的にどのような形で「謝罪」するのかの説明をするのが当然なわけである。ところが、この「日韓合意」発表があった数日後には、台湾政府が、台湾の元日本軍性奴隷に対して日本政府が謝罪と倍賞を行うことを要求する方針を発表したが、官房長官・菅義偉は、日本政府はこの台湾の要求には応じないと答えた。「責任を痛感している」というのは、いつもの安倍流の真っ赤な嘘であることがこれで判明した。 

  日本軍性奴隷問題は「政治決着」できるような性質のものではなく、由々しい「人権問題」であり、いかにすれば被害者の「人権回復」につながるのかという視点からのアプローチが必要であるという根本的認識が、安倍をはじめ自民党のほとんどの政治家には最初から欠落している。結論的に言えることは、日本の法的責任も認めない、10億円での被害者記憶抹消を狙った「最終的、不可逆的な解決」とは、実にあさましい、人間として恥ずべき、低劣な政治行為である。したがって、こんな欺瞞的な「日韓合意」が、結局は失敗に終わってしまったことも、全く不思議ではない。それどころか、犠牲者に対するこのような不誠実な対応は、さらに韓国民衆の怒りを掻き立て、「強制労働(いわゆる「徴用工」)」問題での安倍政権批判を一挙に高めてしまった。
  確かに、こんな酷い「政治決着」提案を、主として米韓日の軍事同盟の利害に基づき、基本的には被害者を無視してそのまま受け入れてしまった当時の韓国政府・朴槿恵内閣にも責任の一端はある。しかし、被害者の人権を全く無視して、自国に都合のいいような欺瞞的な「政治決着」をはかろうとした加害国である日本の政府に最も重い責任があることはいうまでもないことである。にもかかわらず、失敗を一方的に韓国政府のせいにし、今度は韓国への輸出禁止という愚策でさらに日韓関係を悪化させるという、本当に情けない状況を安倍政権は繰り返し作り出している。

「記憶」の抹殺を狙う「元慰安婦は嘘つき」という主張と広島での出来事

  有名な哲学者ハナ・アーレント(1906-75年)は、自著『全体主義の起源』第3巻で、ホロコーストの真に恐ろしい本質は、その犠牲者が殺害されるということだけではなく、その人が生きていたという存在そのものの記録とその人に関する「記憶」自体が「忘却の穴」に落とされて抹消されてしまうことであると述べた。「記憶」をめぐるアーレントのこの鋭い洞察を「日本軍性奴隷」問題に当てはめてみるならば、今も存命中の元日本軍性奴隷、いわゆる「元慰安婦」の女性たちに対して、「金をやるからこれ以上話すな」とか、安倍を支援する日本会議のように「性奴隷」など存在しなかったと彼女たちを「嘘つき」呼ばわりすることは、彼女たちに関する「記憶」を「忘却の穴」に落とし込み、「あたかもそんなものは嘗て存在しなかったかのように地表から抹殺してしまう」ことなのであると言える。

  ドイツの哲学者テオドール・アドルノ(1903-69年)も、被害者を「記憶」から抹消してしまうことの本質を、自著『自立への教育』の中で以下のように解説している。「無力な私たちが虐殺された人々に捧げることのできる唯一のもの、つまり記憶ですら、死者から騙し取ってやろうというわけです。記憶こそ私たちが死者に捧げうる唯一のもの」。したがって、日本軍がアジア太平洋戦争中に犯した様々な残虐行為を、「そんなものはなかったのだ」と否定することは、被害者がいなかったことにすることであり、すなわち、その人たちの「記憶を騙し取る」ことなのであるそれゆえ、「南京虐殺などでっちあげ」とうそぶき、元日本軍性奴隷を「嘘つき」呼ばわりする安倍と彼の仲間たちは、「記憶」を「忘却の穴」に落とし込むその「穴の墓掘り人」であると同時に、「記憶の盗賊」なのである。

  アドルノは別の著書で「わたしたちが連帯すべき相手は人類の苦悩である」と述べているが、苦悩と連帯するためには、苦悩を受けた人の「痛み」の「記憶」を、私たち自身が自分の「記憶」として内面化することが必要である。未来への希望は、そのような「苦悩」の「記憶の共有」からこそ生まれるものであって、自分たちが犯した犯罪行為の被害者の「記憶の抹殺」、すなわち「忘却」からは決して生まれない。「忘却というものは、いともたやすく忘却された出来事の正当化と手を結びます」とアドルノが述べているように、まさに安倍とその仲間たちがやっていることは、日本の侵略戦争の「正当化」なのである。

  この関連で言えば、広島市民にとってひじょうに恥ずべきことには、今年416日~24日、広島市が管理する公共施設「まちづくり市民交流プラザ」という建物内にて、日本会議に連なる右翼組織「新しい歴史教科書をつくる会」広島支部が主催する、「これが『慰安婦』の真実だ!日本政府は謂れなき謝罪と賠償を取り消せ!」というテーマの「慰安婦の真実パネル展」なるものが開催された。このパネル展では、被害者のハルモニたちが虚偽の証言をしているのであり、人権を侵害されて強制された性奴隷などではなく、それ相応の金銭的見返りを受けた自主的な売春婦であったと主張。「『日本軍に性奴隷にされた』話は全くの嘘」と主張して、戦争犠牲者を「嘘つき」だと明言することで、犠牲者をはなはだしく軽蔑、罵倒した。これこそまさに、「記憶の騙し取り」行為であった。

  韓国人に対する日本人の憎悪を煽るようなこのパネル展は、元日本軍性奴隷という戦争被害者に対する、明らかな「侮辱罪」あるいは「名誉毀損罪」に当たる犯罪行為であって、二度とこのようなパネル展のために市の公共の建物の使用を許すべきではないという要請文を、「日本軍『慰安婦』問題解決ひろしまネットワーク」が市長・松井一實に宛てて5月末に提出した。これに対し、市長ならびに市役所側は、「表現の自由」があるため、展示内容を直接の理由に使用を制限することは困難であり、しかも展示内容の正確性等は主催者の責任であって市の責任ではないと主張し、その要請を受け入れることを拒否した。

  表現の自由には「他者の人権を侵害しないこと」が必要不可欠であることは世界の常識であり、これを無視して「表現の自由があるから広島市はなにもできない」と主張することは、つまり、広島市が「ヘイト・スピーチ(憎悪表現)」という人権侵害行為に加担しているということを意味しており、市にもその人権侵害行為の重大な責任があるのだということが、市長や市の職員には全く認識されていないのである。ドイツをはじめ、ヨーロッパの多くの国々では、戦争被害者/被害国に対するこの種の暴言・侮蔑行為に加担することは由々しい「犯罪行為」とみなされている。個々人の「自由」にはその自由行動によって「他者の人権を侵害しないこと」が必要不可欠な条件であって、これが国際的にはあたりまえの人権感覚なのであるが、「国際文化平和都市」と自称する広島市の市長や職員には、このあたりまえの人権感覚が完全に欠如しているのである。

  ちなみに、本来ならば、広島市は「日韓合意」についても、「あたりまえの人権感覚」に基づいて、厳しい批判の声をあげていなければならないのである。なぜなら、この「日韓合意」は、広島に譬えて言うならば、原爆無差別大量殺傷という「人道に対する罪」を犯した米国政府が、日本政府や被爆者の人たちに対して、「金をやるから原爆被害体験については今後一切口にするな、反核運動もするな、被爆者の像を平和公園から除去せよ」という「米日合意」を提唱していることと同じことであるからだ。もちろん米国政府はこんな条件付きの謝罪すらするはずはないが、もしもそのような提唱があったとするならば、広島市民は、また日本人は、どのように思うだろうか。安倍政権が提案した「日韓合意」とは、実はこれと同様の提案だったのである。

結論:自国の加害責任追及失敗と米国の戦争加害責任を追及しないことの相互関連性

  安倍は、「日韓合意」を、「私たちの子や孫の世代に、謝罪し続ける宿命を負わせるわけにはいかない。その決意を実行に移すための合意だ」と説明したが、この発言には、安倍の「戦争責任」と「謝罪」に関する浅薄な考えが如実に表れている。戦後の世代には、確かに日本軍が犯した戦争犯罪に対する直接の責任はない。しかし、そうした過去の国家責任を十分にとらないどころか、戦争犯罪を犯した事実すら否定してしまう政権に、歴史的事実を明確に認識させ、正当な国家責任をとらせることを追求しなければならない国民としての義務と責任が、戦後世代の我々にはあるということが安倍には理解できないらしい。しかも、安倍のような人物が首相であれば、国民はますます「謝罪を続ける宿命を背負わされる」ということに、当の本人が気がつかず、このような発言を堂々と行うこと自体が、日本国民にとってはひじょうに不幸なことなのである。
  さらに指摘しておかなければならないことは、残虐な戦争犯罪の被害者に対する「謝罪」は、単なる「おわびの言葉」だけで、ましてや金銭ですませることができるような軽いものではないことである。真の「謝罪」とは、我々の父や祖父の世代が犯した様々な戦争犯罪行為と同じ残虐行為を、我々日本人はもちろん、どこの国民にも再び犯させないように、我々が今後長年にわたって地道に努力していくことである。「戦争犯罪防止」という、そのような堅実な「謝罪活動」によってこそ、加害者側は、はじめて被害者側から信頼を勝ちえることでき、「赦し」をえて「和解」に達することができる。
  日本人は全般的に、自分たちの戦争被害、とりわけ太平洋戦争末期に米軍が日本全土で展開した無差別空爆 - とりわけ焼夷弾を使った市民焼き殺し作戦と広島・長崎での原爆無差別大量虐殺  については、常にその被害の惨たらしさについて強調する。日本の「平和教育」も、もっぱらこの自分たちの被害体験に言及するものばかりで、自国の将兵たちがアジア太平洋各地での侵略戦争と朝鮮・台湾の植民地支配で犯した様々な残虐行為を「平和教育」の教材にすることはほとんどない。
  米軍による空爆殺戮の体験と惨状とについては詳しく教えるのであるが、ところがそれほどまでに残虐な市民大量殺傷(推定死傷者数102万人、うち死亡者は56万人)という「人道に対する罪」を犯した米国の責任についてはほとんど言及しない。広島の原爆資料館がその典型的な例である。この資料館には広島市と市民が原爆で受けた破壊と殺戮の惨状については詳しく情報を展示するのであるが、そのような非人道的な惨状をもたらした米国の責任については一切言及しない。つまり、日本人の「戦争被害意識」は「加害者を認識しない被害意識」という不思議な意識なのである。なぜこのような特異な意識が全国民的なものとなっているのか、その原因についてはここで詳しく解説している余裕がないので、別の機会があればと願う。
  問題は、この特異な戦争被害意識が常に再生産的に作り出している以下のような日本の状況である。他者=アメリカが自分たちに対して犯した残虐行為の犯罪性とその責任を徹底的に追及しないからこそ、自分たちが犯した戦争犯罪の被害者=朝鮮人、中国人を含むさまざまなアジア人の痛みとそれに対する責任の重大性にも想いが及ばない。自分たちが他者=アジア人に対して犯したさまざまな残虐行為の犯罪性とそれに対する自己責任を明確にかつ徹底的に認識しないからこそ、他者=アメリカが自分たちに対して犯した同種の犯罪がもつ重要性も認識できない、という悪循環を多くの日本人が繰り返しているのである。
  日本の首相・安倍晋三が、「日韓合意」という恥ずべき提案を厚顔無恥にも出し、その失敗を被害国の韓国政府の責任にしてしまう破廉恥な言動が出てくる背景、さらには、そうした安倍の外交政策を正当なものと見なしてなんの問題も感じない大部分の日本国民とメディアの状況の背景には、上記のような戦争責任問題の認識の仕方に決定的な欠陥があるからだ。
完 -


※田中利幸氏の講演会が札幌で開かれます
■田中利幸さん講演会
「いま考えよう 万人平等と天皇制 天皇制廃止に向けての第一歩」
8月10日(土)13時30分~16時50分 (開場13時)
札幌エルプラザ4階大研修室 (JR札幌駅北口)
集会あいさつ 花崎皐平さん
参加費(資料代)1000円 (予約800円)、高校生以下無料
主催 田中利幸さん講演会実行委員会
連絡先 090-9516-3750(松元)

案内チラシPDF オモテ面 ウラ面