2019年7月6日土曜日

「仲間たち」の訴え


植村さんの朝日新聞記者時代の友人や同期生、先輩、後輩が、2015年裁判開始と同時に結成した支援グループ「植村さんを支える仲間たち」が、次のような呼びかけをメールで発しています。この呼びかけメールは「仲間たち」に向けられたものですが、地裁判決の重要なポイントがわかりやすく書かれているので、公開の許可を得て転載します。

東京地裁前で「不当判決」の掲示を囲んで抗議する市民と支援者 ※「仲間たち」ではありません
  ■不当判決のなんと強引な理屈

判決の言う通りなら、当時の他紙記事もすべて「捏造」だった、ということになるではないか

 「私は捏造記者ではない」と植村隆さんが西岡力氏や文藝春秋社を訴えていた訴訟で、東京地裁は6月26日、植村さんの訴えを退けました。植村さんは7月9日、東京高裁に控訴します。
                     
判決は、西岡氏が植村さんの名誉を棄損したことは認めつつ、「推論として一定の合理性があった」などと免責しています。櫻井よし子氏らを免責した札幌地裁の判決と同じです。しかも、朝日新聞社と植村さんが2014年8月に検証記事を出すまで西岡氏の批判に対する反論や説明をしてこなかったとして、西岡氏が「自身の主張が真実であると信じるのはもっともなこと」と繰り返しています。

一方で、植村さんについては「女子挺身隊として(金学順さんが)日本軍によって戦場に強制連行された、という事実と異なる記事を書いた」と決めつけて、西岡氏の主張の一部に「真実性」まで認めています。「日本軍による強制連行」という印象を強めるために意図的に言葉を選んで書いた、と認定しているのです。
植村さんの記事が掲載された91年当時は、他紙もみな「慰安婦」の説明として「女子挺身隊として強制連行された」などと書いていました。判決の言う通りなら、当時の記事はすべて「捏造」だったことになります。なんと強引な理屈でしょうか。

また、争点でなかった歴史認識でも一方的に「修正主義」に踏み込んでいます。札幌判決にならって「慰安婦ないし従軍慰安婦とは、太平洋戦争終結前の公娼制度の下で戦地において売春に従事していた女性などの呼称の一つ」と認定しているのです。
金学順さんは生前、「日本軍に連行された」と繰り返し訴えていました。その被害者を「公娼制度の下で売春に従事していた女性」と決めつけているのです。職を奪われ家族も脅迫された植村さんの被害を無視しただけでなく、「元慰安婦」までセカンド・レイプする悪質な判決です。
司法も歪める異常な流れを断ち切ろうと、今度は東京高裁でのたたかいが始まります。
       
植村裁判が目指しているのは、元記者の名誉の回復だけではありません。歴史をねじ曲げて人々の憎悪をあおりたてる巨大な勢力に抗して、「慰安婦」被害者たちが残した声を正確に伝えていくことでもあります。
今後も皆さまのお力添えをよろしくお願いいたします。
              
2019年7月6日
「植村さんを支える仲間たち」世話人 水野孝昭