2021年4月11日日曜日

札幌訴訟終結報告会


映画「標的」の上映会を兼ねた「植村裁判終結報告会」は4月10日午後、札幌・自治労ホールで開かれました。

札幌で集会が開かれるのは昨年2月の控訴審判決から1年2カ月ぶり。コロナ禍の下、札幌市では市外との往来自粛が続行中で、道の宿泊割引キャンペーン「どうみん割」も札幌市は除外されたまま。会場の入り口では手指消毒と検温が行われ、座席にはディスタンスが設けられました。参加者は160人ほど。旭川や室蘭からの参加もあり、映画「標的」の上映を地元でも実現したい、と語っていました。

報告会では、伊藤誠一弁護士(弁護団共同代表)と植村隆氏(元朝日新聞記者、週刊金曜日発行人)が、札幌で5年にわたった裁判を振り返り、確定判決の問題点と裁判で得た成果について、それぞれの思いを語りました。

伊藤弁護士は、「勝利報告ができないことに非力を感じ、お詫びを申し上げたい。支援のみなさんの大きな量と高い質の活動には驚くばかり」と語った後、裁判の成果として、▽櫻井氏側からあった審理東京移送の動きを止めた▽植村バッシングを緊急避難的に止めた▽金学順さんの名誉を守るたたかいであることも含め、植村氏は自身の主張と姿勢を貫いた▽元道新記者の喜多氏の誠実な証言は説得力があった▽櫻井氏の尋問も大きな成果を上げた▽言論の名による不法と無法を許さないたたかいは北海道における「法の支配」を貫く上で重要な経験となった、ことを挙げました。背筋を伸ばし古武士然として語る伊藤弁護士の話に、参加者は静かに耳を傾けていました。判決の核心である「真実相当性」のハードルを著しく下げた裁判官の判断については、「慰安婦の問題では、いまだ私たちの社会には、誤った裁判を許さないという強い力、通有力が十分ではないという面もあるのではないか」と伊藤弁護士は分析した上で、「民主主義を傷つける事態には毅然と立ち向かっていく」と結びました。

植村氏は、「皆様と闘えたことの喜び」と題するメッセージを会場で参加者に配布し、その文章に沿った形で語りました。「本当に悔しい。裁判を起こす時には負けるなどとは思っていなかったのです。この裁判で勝った連中は裁判の途中で自分の記事を訂正しているんですよ。なんで私が負けるんですか」と述べ、「しかし、裁判では、支援の市民による調査で、西岡氏や櫻井氏のフェイク情報を明らかにできた。ですから、これは勝利的敗訴なのです」と語りました。口調は終始穏やかで、時にジョークも交え、会場からは笑いと拍手が起きていました。5年間つとめた韓国カトリック大学の教授職は、コロナ禍によって日韓往来の負担が増えたため、2月末に退職したとの報告もありました。「5年前に大学(神戸松蔭女子学院大)から断られた私が、こんどは私からお断りすることになりました」とのことです。映画「標的」は東京の外国特派員協会と日本記者クラブで披露会見があり、いよいよ公開が始まります。週刊金曜日のほうは社長任期が2期目に入りました。「バッシングの被害にあっている人々の側に立ち、日本に言論の自由や民主主義を根付かせることが私のすべき仕事だと思う」とこれからの決意を語りました。

text=H.N. photo=石井一弘