2020年3月6日金曜日

植村支援の皆さまへ

東京高裁で植村隆さんが敗訴したことについて、支援グループのひとつ「植村さんを支える仲間たち」がメッセージを発しています。「仲間たち」は朝日新聞時代の同期生と同僚記者、社内の友人らが2015年1月に作った組織です。メッセージにこめられた怒りと願いをブログ読者の皆さまと共有したいと思います。以下に、転載します。

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植村支援の皆さま

ご承知のように、東京高裁も敗訴でした。
植村さんの記事のもとになった1991年11月の金学順さんの聞き取りテープを発見して、取材時の金さんは「キーセン」という経歴には一度も触れなかった 金学順さん自身が「私は挺身隊だった」「(日本軍に)引っ張って行かれた」「武力で私を奪われた」と語っていたことが、法廷で確認されました。それなのに、判決は「(このテープが聞き取り調査の際の金学順の証言の全てを記録したものとは認め難い」と一蹴して西岡氏を免責したのです。
植村裁判は政治案件なのか!?
要するに、記事が事実かどうかに関わりなく、朝日新聞の慰安婦報道が間違っていたのだから、記事を「ねつ造」呼ばわりされても仕方がない、という判決なのです。「ただの慰安婦の訴えなら報道価値は低い」(!)とした札幌高裁判決に続いて、「不当判決」としか言いようがありません。
朝日新聞の慰安婦報道に問題点があったこと、とくに吉田証言の訂正があまりにも遅れたことには、記者はみな痛恨の思いと反省の念を抱いているはずです。ただ、だからといって、事実に基づかない「ねつ造」という誹謗中傷の言論に、司法がお墨付きを与えることにはつながらないはずです。
西岡氏はたんに記事を批判したのではなく、植村記者は「韓国人の義母が理事を務める韓国の運動団体の対日訴訟を有利にするために記事を書いた」「その目的のために金学順さんが訴状で述べていたキーセンの経歴を意図的に書かなかった」と決めつけていました。その主張はどちらも事実ではなかったことが判決でも確認されました。
学者であれ、記者であれ、そこまで書く以上はそれを裏付ける資料のチェックや取材(裏トリ)をするのが常識ではないでしょうか。
司法は、「慰安婦報道攻撃」だけには甘い!
西岡氏は、金学順さんへの取材も、取材テープの入手も、同行した通訳への確認も、何もしていなかったのです。それどころか論拠に使った韓国のハンギョレ新聞の記事の内容をすり替えていて、法廷の本人尋問でそれを認めていました。(『慰安婦報道「捏造」の真実』(花伝社)をご参照)
ふつうの名誉棄損訴訟なら、金学順さんのテープを入手して植村さんの取材に対して「キーセンだった」と述べていたことを西岡氏が立証しなければ免責されなかったでしょう(挙証責任は「ねつ造」と書いた側にある)。高裁判決は、慰安婦報道を攻撃する言論に対してだけ「真実相当性(真実でなくても、そう思い込んだことに相当の事情がある)」を例外的に甘くして認めている、と言わざるを得ません。「強制連行」や「慰安婦」の定義から現政権の見解をうのみにして踏襲する判決が続くことに、「司法は独立した判断を下すはず」という私たちの期待が間違っていたのだろうか、とまで危機感を覚えます。
 
問われているのは、「植村記者は事実を伝えようとして金学順さんの記事を書いたのか、読者をだまそうとして事実を偽った=「捏造」したのか」です。それ以上でも、それ以下でもありません。
 
植村さんは「最高裁へ上告する」と決意しています。 皆様のご支援を引き続きお願いします。

2020年3月5日
「植村さんを支える仲間たち」
呼びかけ人 水野孝昭

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東京高裁前で(3月3日午後2時半ころ) 写真・白谷達也