2017年7月8日土曜日

札幌訴訟第8回速報

入廷する植村さん(前列左)と弁護団と、付き添うチワワ(左端)
■判決の下敷きとなる「主張整理案」めぐりやり取り
植村裁判札幌訴訟の第8回口頭弁論は7月7日午後、札幌地裁805号法廷で開かれた。正面左の植村さん側の弁護団席には22人が、右の櫻井氏側には6人が着席した。
原告と被告双方は、裁判所が前回弁論(4月14日)の後に提示した「主張整理案」(6月2日付)についての意見を書面で提出し、次回以降の進め方についても意見を交わした。
裁判所の「主張整理案」とは、第1回弁論以降の原告側主張と被告側の反論を精緻に要約した文書で、本文はA4判17ページ、別紙主張対照表はA4判8ページにわたっている。ここに書かれている内容は、裁判所の客観的な“理解度”を示しており、裁判の最後に書かれる判決書の争点整理の項の下敷きともなる重要な書面である。
植村さん側はこの整理案について、肩書や日付の誤記の指摘と、表現の補強要請など8点を簡潔に述べるにとどめ(第12準備書面)、この日の法廷では意見陳述はしなかった。原告側の読み上げ陳述なしは今回が初めて。
一方、被告側は、櫻井氏と新潮社が7月5日付の書面を提出したが、追記と部分削除の要求が含まれていたため、主張整理案をめぐるやりとりは持ち越され、次回以降も続くことになった。櫻井氏側はこれとは別に、前回弁論で植村さん側が提出した第11準備書面(ネット上の櫻井氏の記事が植村バッシングを拡大させたことを実証し追及した)に対する反論(第5準備書面)を提出し、「櫻井の論文と第三者による脅迫行為に因果関係はない」と主張している。また、ワック社はA4判27ページの長大な書面(6月30日付)を提出し、戦時中の軍資料類を多数援用しながら、朝日新聞の慰安婦報道や吉田清治証言を批判している。これは「主張整理案」とも植村さんの書いた記事とも直接は関係がない“歴史修正主義”史観の独演会である。温厚で公正な訴訟指揮をする岡山忠弘裁判長は、ワック社の弁護士に対して、「(要するに)捏造との関係では、女子挺身隊と慰安婦は違うということを言いたいのですね」と皮肉たっぷりな質問を浴びせていた。
次回以降の進め方については、岡山裁判長が「次回と次々回も主張整理案の論議は続けるが、同時に証人尋問の方針やその範囲も双方にお伺いしたい」と述べ、簡単なやり取りの後、原告、被告双方が証人尋問の具体的な準備に入ることを確認した。日程は次回(9月8日、第9回)と次々回(10月13日、第10回)が確定した。これにより、第10回弁論で双方の主張のやり取りは終了し、その次に、終盤の対決のヤマ場となる証人尋問を迎えることになった。証人尋問には植村、櫻井両氏が出廷する。両氏の直接対決があるかもしれない。開廷は午後3時30分、閉廷は同3時45分だった。
この日、札幌は最高気温が33度を超え、今年初めての真夏日となった。支援者の夏も熱い。傍聴希望者は定員71人に対して78人だった。午後3時過ぎ、裁判所職員が今回も抽選となったことをハンドマイクで告げると、横7列に並んだ行列から軽いどよめきが起きた。
次回は9月8日、次々回は10月13日に開かれる。いずれも午後3時30分開廷。

■報告集会で内海愛子さんが応援のエール
報告集会は午後4時15分から裁判所近くの札幌市教育文化会館で開かれた。定員72人の302号室が満員となった=写真左。
はじめに、支える会事務局の林秀起さんが、「負けるな北星!の会」(マケルナ会)の記録集「北星学園大学バッシング 市民はかく闘った」が前日(7月6日)に発刊されたことを報告し、購読を広く宣伝するように呼びかけた。続いて、弁護団報告。植村弁護団事務局長の小野寺信勝弁護士が、裁判の進展状況と到達地点を説明し、「いよいよ双方の主張は出尽くし、前半戦は終盤を迎える。その後には、証人尋問が待っている。引き続き支援をお願いしたい」と訴えた。
報告集会の定番となった植村さんの韓国報告は、5月の大統領選挙によって文・革新政権が誕生した後の韓国情勢と「慰安婦」合意をめぐる日韓関係が中心となった。植村さんは、「大統領選の前夜、文候補の街頭演説をソウル市内で聞いた。支持者と聴衆はスマホのライトをキャンドルにして掲げた。その光のウエーブを見ながら、韓国は変わる、新時代が来ることを実感した。キャンドル集会ではいつどこでも、大韓民国憲法の条文がテーマ音楽のように歌われ朗読されていた。その第一条は、大韓民国の主権は国民にあり、すべての権力は国民から発する、とある。私は韓国に教えに来ているが、たくさんのことを教えられてもいる」と語った。最後にあいさつした内海愛子さん(恵泉女学園大学名誉教授)は、マケルナ会呼びかけ人のひとり。植村裁判はこの日、初めて傍聴した。「いまも、傍聴にたくさんの人が並び、抽選になっていることに、感謝します。裁判は勝つことが大事ですが、同時に運動として広げ固めていくことも大事。私の経験からそう思います」とやわらかな口調で感想を語り、エールを送った。
この後、内海さんと植村さんは、道民活動センター(かでる2・7)で開かれた「7・7平和集会」に講演者として参加した。この集会は、盧溝橋事件が起きた7月7日に、道内の宗教者、法律家、市民運動などの団体が1986年から毎年開催している。事件から80年にあたることしは内海さんと植村さんが招かれ、内海さんは「戦後史の中の和解---置き去りにされた植民地支配の清算」、植村さんは「韓国報告---文在寅政権の対日政策と日韓関係」と題して講演した。定員150人の会場は200人を超える参加者で超満員となっていた。

 *報告集会の詳報は後日掲載します。


 マケルナ会の記録「北星学園大学バッシング 市民はかく闘った」
 2014年春から2年近く、北星学園大学と植村さん、そして植村さんの家族にも及んだバッシングに対して闘った市民の行動の全容が記録されている。経過年表、脅迫の実態、シンポジウムや集会の記録、呼びかけ人と参加者の思い、賛同者全氏名、資料(支援声明・アピール・要請書・決議・抗議など)から成っている。A4判246ページ。厚さ13ミリ、重さ635グラム。頒価500円。