札幌訴訟は4月の第1回口頭弁論から半年が経ちました。東京訴訟のほうは昨年4月の第1回から1年半が経過しています。両訴訟の再開を前に、これまでの経過をまとめました。
札東京訴訟 被告=西岡力・東京基督教大教授、文藝春秋
■第1回、2015年4月27日
植村さんの冒頭の意見陳述は約12分間にわたった。植村さんは、本人と家族に向けられた脅迫と中傷への恐怖を語った後、被告の一連の名誉棄損行為を挙げて、「私は捏造などしていない。私の記事が捏造ではないことを司法の場で証明したい」と述べた。弁護団事務局長の神原元・弁護士も冒頭意見陳述を行い、被告側が提出した答弁書の中で、「捏造」との表現を事実の摘示ではなく論評だとしていることに厳しく反論した。<東京地裁の103号法廷は91席の傍聴席が満員となり、報道関係者の13席も埋まった。被告の西岡氏本人は出席せず、以後、被告側は2、3人の代理人弁護士だけの出席が続いている>
小林節弁護士(慶大名誉教授)が意見陳述し、この訴訟の弁護団に加わったことの意味を語った。穂積剛弁護士は意見陳述で、被告側準備書面にある「推論」記述ほか3点について求釈明を行った。<左の写真=閉廷後、東京地裁前で小林節さん(中央)、中山武敏弁護団長(右)と談笑する植村さん>
■第3回、同10月26日
神原元・弁護士が陳述し、約70ページにわたる原告第2準備書面(「捏造」表現についての①名誉棄損の成否、②真実性抗弁の成否、③その他の不法行為の成否、を詳述)の要旨を説明した。
■第4回、2016年2月17日
植村さんが記事を書いた1991年当時の朝日新聞関係者(ソウル支局長、同支局員、大阪本社企画報道部次長)が裁判所に提出した陳述書の要旨を吉村功志弁護士が読み上げ、「義母の運動を利するために書いた」との言説を強く否定した。<左陪席が小久保玖美裁判官に交代した>
■第5回、同5月18日
神原元・弁護士が、原告第3準備書面(女子挺身隊の記述、キーセン学校の経歴、義母の運動団体についての被告側の主張への補充的反論)の要旨を読み上げた。<右陪席が高橋祐子裁判官に交代し、左、右陪席はいずれも女性となった>
■第6回、同8月3日

札札幌訴訟 被告=櫻井よしこ氏、新潮社、ダイヤモンド社、ワック

札幌地裁805号法廷で、植村さんは被告の櫻井氏と初めて正面から向かい合った。最初に植村さんが立って、本人と家族に向けられた攻撃、脅迫の恐怖を語った後、2014年に櫻井氏が産経新聞に書いたコラムの重大な誤りを指摘し、「調べればすぐわかることを調べず、私の記事をねつ造と決めつけて憎悪を煽っている。ジャーナリストとして許されない行為だ」と批判し、「司法の正しい判断は、表現の自由、学問の自由を守ることにつながる」と述べた。続いて弁護団共同代表の伊藤誠一弁護士が訴訟進行について陳述し、「民主主義のこれからと、言論のあり方の指針となる判断を求める」と主張した。この後、櫻井氏が立ち、「従軍慰安婦問題は朝日新聞が社を挙げて作りだし、植村氏はその中で重要な役割を担った」との持論を展開した上で、植村さんの記事については「私は論評したのであって、捏造記者と評したわけではない」と主張し、裁判で争う姿勢を明らかにした。
<開廷の1時間前から傍聴券を求める長い列ができた。傍聴券交付は抽選となり、198人がクジを引き、57人が当たった。倍率は3.5倍だった。午後3時30分開廷、4時25分閉廷>

原告側は、櫻井氏側が3月31日付で提出した準備書面の中で、「捏造」などの名誉棄損表現を「論評」「意見」だと主張していることに対し、過去の判例などを踏まえ、「捏造」表現は証拠の裏づけが必要な「事実の摘示(事実を暴くこと)」である、と反論した(準備書面の要点を成田悠葵弁護士が朗読陳述)。
<開廷午後3時30分、閉廷同45分。傍聴券交付倍率1.6倍>
■第3回、7月29日
