植村さん 沖縄での講演と交流で実感した「目覚めへの旅」
外岡さん メディアの変質を「同時代現象」ととらえる視点
札幌訴訟第6回口頭弁論の報告集会が、2月10日午後4時半から札幌市中央区の市教育文化会館で開かれた。約110人が参加し、弁護団の裁判報告、植村さんの近況報告、元朝日新聞東京本社編集局長の外岡秀俊さんの講演「トランプ現象とメディア~日本の状況は」に耳を傾けた。
最初に弁護団の小野寺信勝事務局長が現在の到達点を報告した。原告側が被告側(櫻井よしこ氏ら)の名誉棄損表現は「免責されない」と主張したのに対し、被告側は植村さんの記事を「捏造」「意図的な虚偽」などと批判した真実性(根拠)を証明しなければならない段階にある。裁判長が6月までに書面のやり取りを終了するとした訴訟指揮を「スピード感を持って進んでいる」と評価し、「終わりが見えてきた。札幌訴訟の方が東京よりも先に判断が示される可能性がある」と見通しを示した。
植村さん |
外岡さん |
植村さんは2月1日~6日の沖縄講演ツアーを「目覚めへの旅」と題して振り返った。沖縄大学での2回の講義と市民集会、辺野古訪問、ジュンク堂でのトークショーとサイン会(『真実』30冊完売)、沖縄県民に徹底的に寄り添って論陣を張り続ける地元紙記者たちとの交流の様子などが紹介された。
このツアーで沖縄の市民は植村さんを「闘うジャーナリスト」として熱烈に歓迎した。植村さんも「日本の歪み」が最もよく見える沖縄の立ち位置を再認識し、交流をさらに深める意義を痛感したという。「札幌、韓国、沖縄を結ぶ三角形」とその中心に位置する東京を地図で示し、「三つの拠点から東京を包囲したい」と締めくくった。
外岡さんの講演は日米首脳会談のタイミング(日本時間11日未明)と重なった。外岡さんは第2次安倍政権の下で勢いを増した歴史修正主義が朝日・植村バッシング、メディアの変質(批判力の衰退)へとつながっている日本の状況を、「英国のEU離脱」「トランプ旋風」という「世界を驚かせた二つの出来事との同時代現象」ととらえる視点を提示した。
トランプ政権の今後については「グローバル化がもたらした格差で生じた不満を、格差によって生じた権力によって封殺する専制化への傾向を強める」と予測した。既存メディアは既得権益者を擁護する勢力とみなされ、影響力をどんどん失っていく、その現象は日本とも共通する、と分析した。そして最後に、植村さんの著書『真実』の読み方として、①不寛容の時代へのなだれ込み②人権侵害との闘い③日韓相互理解への共感という「三つの軸」を挙げ、植村裁判を支える時代的な意味を強調した。
この後、東京訴訟支援チームの佐藤和雄さん(朝日新聞OB)が、東京訴訟の現状を報告した。東京訴訟はこれまで7回の口頭弁論を終えている。今後の方向性として、植村さんが平穏な生活を営む権利を侵害されたという損害について、『週刊文春』と攻撃者たちとの「客観的な共同不法行為」として裁判所に認めさせたい、と語った。また、弁護団の齋藤耕弁護士が、国会で論議が進む「共謀罪」について、「市民の自由を奪う法律だ。なんとしても阻止したい。法案が提出されてからでは遅い。その前に阻止しなければ」と訴えた。
(text by T.Yamada)