■朝日新聞 3月4日付
慰安婦報道訴訟、二審も請求棄却
元朝日記者、上告へ
元慰安婦の証言記事を「捏造(ねつぞう)」とコメントされ名誉を傷つけられたとして、元朝日新聞記者で「週刊金曜日」発行人兼社長の植村隆氏が西岡力・麗沢大客員教授と「週刊文春」発行元の文芸春秋に損害賠償などを求めた訴訟の控訴審判決が3日、東京高裁で言い渡された。白石史子裁判長は原告の控訴を棄却した。原告側は上告する方針。
植村氏は1991年、韓国人元慰安婦金学順(キムハクスン)氏の証言を朝日新聞で記事にした。西岡氏が週刊文春2014年2月6日号で「捏造記事と言っても過言ではありません」とコメントしたことで名誉を傷つけられたなどとして、植村氏が15年に提訴した。
東京地裁は19年の判決で、記事は「金氏が女子挺身(ていしん)隊の名で戦場に連行され、慰安婦にさせられた」という内容だと認定。植村氏が「意図的に事実と異なる記事を書いた」とし、西岡氏の記述には真実性があると判断し、植村氏の請求を棄却した。東京高裁は、地裁判決をほぼ踏襲した。
西岡氏は、金氏がキーセン(妓生)に身売りされた経歴について植村氏は「認識しながら、あえて記事にしなかった」と主張していた。高裁判決は、植村氏が執筆時に「キーセンの経歴を知っていたとまでは認められないし、あえて記事にしなかったと認めるのは困難」と判断したが、西岡氏がそう信じたことには「相当の理由がある」と認め、西岡氏を免責した。
植村氏は「結論ありきの不当判決」と批判。西岡氏は「公正な判断が下された」、文芸春秋は「当然の判決」とコメントした。(編集委員・北野隆一)
■弁護士ドットコム 3月3日配信
慰安婦報道めぐる名誉毀損訴訟
元朝日・植村氏の控訴棄却
「極めて不当」
文藝春秋「当然の判決」
かつて執筆した「慰安婦問題」に関する記事について、「捏造」などと書かれて、名誉を傷つけられたとして、元朝日新聞記者の植村隆さんが、麗澤大学客員教授の西岡力さんと『週刊文春』を発行する文藝春秋を相手取り、損害賠償などをもとめた訴訟の控訴審判決が3月3日、東京高裁であった。
白石史子裁判長は、請求を棄却した1審判決を支持して、植村さんの控訴を棄却する判決を言い渡した。判決後、植村さん側は判決を不服として、上告する方針を示した。一方、西岡さんは「公正な判断が下された」、文藝春秋は「当然の判決と受け止めている」とコメントした。
●植村さんは1審も敗訴した
ことの発端は、植村さんが1991年8月と12月に執筆した記事までさかのぼる。
当時、朝日新聞記者だった植村さんは、元慰安婦の聞き取り調査をしていた韓国の団体から音声テープの公開を受けて、元慰安婦と名乗り出た女性(金学順さん)の証言にもとづいて記事を書いた。
その記事に対して、西岡さんは2012年12月ごろから2014年11月にかけて、「意図的に事実を改ざんした」「悪質な捏造」とする論文を発表して、著書やウェブサイト、雑誌に投稿した。
また、『週刊文春』(2014年2月6日号)も、西岡さんの「捏造記事と言っても過言ではありません」というコメントが入った「"慰安婦捏造" 朝日新聞記者がお嬢様女子大教授に」と題する記事を掲載した。
植村さんは2015年1月、「捏造はしていない」として、西岡さんと文藝春秋を相手取り、計2750万円の損害賠償や、謝罪広告の掲載などをもとめる訴訟を起こした。
しかし、1審・東京地裁は、西岡さんの記事は、植村さんの社会的評価を低下させるとしながらも、真実性・真実相当性があるとして、植村さんの請求を棄却していた。
●植村さん「これ以上、捏造記者と言われなくなる」
控訴審の判決後、植村さんは東京・霞が関の司法記者クラブで会見を開いて、「極めて不当な判決だ」と述べた。
さらに「この不当な判決を放置するわけにはいきません。このままではフェイクニュースを流し放題という大変な時代になります。最高裁で逆転判決を目指したいと思います」として、上告する方針を示した。
植村さんの弁護団は、控訴審判決について、真実性・真実相当性について言及した最高裁判決(昭和44年6月25日)と相反する判断があるなどとして、「結論先にありきの、あまりに杜撰な判決だ」と批判した。
一方で、東京高裁が、植村さんが(1)金学順さんがキーセン身売りされたという経歴を知っていたのにあえて記事にしなかった、(2)義母の裁判を有利にするため意図的に事実と異なる記事を書いた−−という点について、「真実であると認めることはできない」と判断したことは評価した。
こちらについては、植村さんも会見で「ずっと『捏造記者』と言われてきたが、これ以上、『捏造記者』『捏造記事を書いた』と言われなくなる。大きな前進だと思います」と語った。
●西岡さん「東京地裁に続き、完全勝訴の判決をいただいた」
文藝春秋は、弁護士ドットコムニュースのメール取材に「当然の判決と受け止めています」と回答した。
また、西岡さんは、文藝春秋を通じて「東京地裁に続き、完全勝訴の判決をいただくことができました。公正な判断が下されたと考えます。司法でなく言論の場で議論していくことを強く望みます。関係者のご努力、多くの方々の励ましに心から感謝いたします」とのコメントを発表した。
■ハンギョレ 3月4日付
日本軍「慰安婦」被害者を初めて報道した植村氏
東京高裁での訴訟でも敗訴
「捏造」と攻撃した西岡力氏相手に訴訟
東京高裁「真実の相当性を認める」とし、請求を棄却
植村氏「歴史的事実を消そうとする勢力がいる」として上告
故・金学順(キム・ハクスン)さんの日本軍「慰安婦」被害事実を初めて報道した植村隆・元朝日新聞記者(現『週刊金曜日』社長)が、自分の記事を「捏造」だと攻撃した右翼知識人を相手に東京で起こした訴訟で再び敗訴した。
東京高等裁判所は3日、植村氏が西岡力・麗澤大学客員教授と西岡氏の文章を掲載した雑誌の出版社の文藝春秋を相手に損害賠償金2750万円と謝罪広告掲載を求めて起こした訴訟で、棄却の判決を下した。
裁判所は、西岡氏が植村氏の書いた記事を「捏造」だと攻撃したことについて、捏造と信じられる真実の相当性が認められるという原審判決を維持した。
西岡氏は2014年、文藝春秋が発行する週刊誌『週刊文春』に、植村氏が書いた慰安婦被害記事が「捏造」であると攻撃する文章を載せ、その後植村氏は「娘を殺す」と脅迫する手紙が届くなど大きな苦痛を味わった。植村氏は2015年、西岡氏と文藝春秋が自分の名誉を毀損したとし、東京地方裁判所に訴訟を起こしたが、昨年一審で敗訴した。
植村氏は朝日新聞記者時代の1991年、故・金学順さんの証言録音テープをもとに日本軍「慰安婦」被害に対する記事を書いた。20年後、西岡氏など日本の右翼知識人らが植村氏の書いた記事に「女子挺身隊という名で戦場に連行され」という部分を問題視した。挺身隊は軍需工場の勤労動員で日本軍「慰安婦」とは違うのに挺身隊という用語を使ったと攻撃した。だが、日本軍「慰安婦」被害が広く知られる前の1990年代初めには日本のメディアの大半も政治的性向にかかわらず、挺身隊という単語を日本軍「慰安婦」被害にも使用していた。
植村氏は判決後の記者会見で「直ちに上告する」意向を明らかにした。植村氏は西岡氏が2014年に『週刊文春』に書いた文章で、故・金学順さんが親に売られていったと(日本政府に対する訴訟の)訴状に書き、韓国メディアの取材にもそう答えたと書いた点を指摘し、全部事実と異なると述べた。「訴状にもそのような供述はなく、韓国メディアは『ハンギョレ新聞』と指しているがそのような内容はない」とし、「西岡氏の文章には重大な欠点がある」と指摘した。
弁護人は「最高裁も名誉毀損裁判の場合は真実の相当性を厳格に解釈している。高裁は推論として相当な合理性があるとの判決を下したが、これは判例とも食い違う重大な問題だ」と話した。
植村氏は「日本は歴史で直視しなければならない事実がある。これを消し去ろうとする勢力がある」とし、「今回の不当判決を放置することはできない。このままでは皆さんも記者会見の壇上に上がる可能性がある」と述べた。
これに先立ち、先月6日、札幌高等裁判所は植村氏が他の右翼知識人の桜井よしこ氏などを相手に起こした損害賠償訴訟でも、東京高裁と同様の趣旨で原告敗訴の判決を下した。
東京/文・写真 チョ・ギウォン特派員 =原文韓国語
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