2020年11月26日木曜日

支える会弁護団声明

最高裁が植村裁判札幌訴訟の上告を棄却したことについて、植村裁判を支える市民の会と札幌訴訟弁護団は11月26日、それぞれ声明を発表しました。

歴史を裏切る判決許さず

2020年11月26日 植村裁判を支える市民の会

 「国賊」「売国奴」。過去を直視する言論・報道が暴力をも示唆する卑劣なバッシングにさらされる。そのような社会であってはならない――。植村裁判支援に結集した市民が共有した思いである。植村隆氏の朝日新聞記事を根拠なく「捏造」と断じ、バッシングを呼び起こした櫻井よしこ氏らに名誉毀損の法的責任を求めた札幌訴訟は18日、最高裁の上告棄却によって一区切りがついた。結果は「敗訴」でも、私たち市民の思いはいささかも揺らいでいない。

  「慰安婦」として旧日本軍によって屈辱的な戦時性暴力にさらされた朝鮮人女性、金学順さん(キム・ハクスン、故人)の無念を伝える記事であった。櫻井氏らの言説は、卑劣な集団的セカンドレイプと言うべき社会現象を引き起こしたにもかかわらず、「公益性」「真実相当性」を理由に免責した判決は、旧日本軍に慰安婦とされた金さんはじめ多くの女性たちの魂の叫びをもかき消した。

 判決は櫻井氏らの主張を「真実」と認定せず、植村氏の社会的評価を低下させる名誉毀損に当たるとした。免責の理屈はどうあれ、記事を「捏造」と断じた根拠を櫻井氏らは全く示すことができなかった。櫻井氏がジャーリストを自称するのであれば、「捏造記者」の汚名は櫻井氏こそが引き受けるべきであり、勝ち誇ることは許されない。

 旧日本軍慰安婦問題をめぐる事実に基づかない櫻井氏の主張を、「真実相当性」のハードルを下げることで、札幌地裁、同高裁、そして最高裁は容認した。このことが「司法のお墨付き」と解され、歴史的事実を無視した誹謗中傷を引き起こさないかと私たちは恐れる。すでにその兆候が見られる。

 こうした禍根を将来に残さないためにも、歴史修正主義との闘いを継続する責任を私たち市民は負っている。重い責任ではあるが、あるべき社会を目指す新たな一歩をあすから踏み出す決意を表明したい。

 裁判支援を通して多くの出会いが生まれた。20152月の提訴以来、札幌での報告集会は17回を数える。多彩な講師を迎え、金学順さんの生前の肉声にも触れた。戦時性暴力の加害責任と私たちの社会はどのように向き合っていくべきか、学びを深めたことは闘いが獲得した成果である。植村氏は国内外を講演行脚して支援の輪を広げ、カンパは世界中から寄せられた。この6年近くに及ぶご支援に心から感謝しつつ、残る東京訴訟の最高裁決定を注視したい。


最高裁判断を踏まえての植村弁護団声明

2020年11月26日 植村裁判札幌訴訟弁護団

 植村隆氏が櫻井よしこ氏らを相手取った名誉毀損訴訟で、最高裁判所第2小法廷は去る11月18日付で上告棄却・上告不受理決定を出しました。

 これによって、櫻井氏が植村氏の記事を「捏造」と書いたことが名誉棄損に当たることを認めつつも、「捏造」記事と信じたことに相当の理由があるとして櫻井氏を免責した札幌地裁判決(2018年11月9日付)が確定しました。

 この札幌地裁判決は、「従軍慰安婦とは、太平洋戦争終結前の公娼制度の下で戦地において売春に従事していた女性などの呼称のひとつ」などと、河野談話をはじめとする政府見解にも反する特異な歴史観をあからさまに示した上で、櫻井氏による名誉毀損行為を安易に免責した不当判決にほかなりません。札幌高裁判決もこれを追認しました。

 最高裁がこれまで幾多の判断で営々と積み上げてきた名誉毀損の免責法理を正当に適用せずに、植村氏への直接取材もしないなど確実な資料・根拠もなく「捏造」と決めつけた櫻井氏を免責する不当判決を追認してしまったことに、強い憤りを覚えるものです。

 とはいえ、札幌訴訟の一連の司法判断は、「捏造」と決めつけた櫻井氏の表現行為に真実性を認めたものではなく、むしろ、札幌地裁判決でも「継父によって人身売買され慰安婦にさせられた」という櫻井氏の表現が真実であると認めることは困難である旨を認定しています。

 また、櫻井氏自身も、元慰安婦の1人が日本政府を相手取った訴状には「14歳の時、継父によって40円で売られたと書かれている」と真実に反することを述べていたことを被告本人尋問で認め、産経新聞とWiLLに訂正記事を出さざるを得なくなりました。

 何よりも、植村氏が敢然と訴訟に立ち上がったことによって、櫻井氏による一連の「捏造」表現を契機とした植村氏への激しいバッシング、同氏やその家族あるいは勤務先だった北星学園大学に対する脅迫行為を止めることができました。

 私たちは、こうした成果を確信するとともに、植村氏の訴訟をこれまで支援してくださった皆さまに対し、心からの感謝を申し上げます。

 そして、植村氏の東京訴訟の勝利のために引き続き連帯を強めることを決意するとともに、二度とこのような人権侵害が繰り返されることのないよう、取り組みを続けていく所存です。

2020年11月25日水曜日

前首相が流したデマ




安倍晋三氏のフェイスブック投稿はフェイクだ!

植村氏、「内容証明」で削除を要求

ご 通 知

安倍晋三殿

冠省

当職らは、植村隆氏(以下、「通知人」といいます)の代理人として、ご連絡します。

貴殿は、2020年11月20日午前10時8分、ソーシャルネットワーキングサービスである「フェイスブック」に11月19日付の産経新聞記事「元朝日新聞記者の敗訴確定 最高裁、慰安婦記事巡り」と題する記事(以下、「本件記事」といいます)を引用して投稿し、さらに、翌21日午前2時4分、コメント欄に「植村記者と朝日新聞の捏造が事実として確定したという事ですね」と投稿しました(以下「本件投稿」といいます)。

本件記事とあわせて読めば、本件投稿は、通知人が捏造記事を書いた(意図的に事実をねじ曲げて記事を書いた)と認定した判決が、同月18日付けの最高裁決定で確定したとの事実を摘示したものです。かかる投稿は、通知人が捏造記事を書いたことは間違いないとの印象を与え、通知人の社会的評価を低下させるものであります。

よって、本件投稿は名誉毀損として民法上不法行為と評価されるものです。

なお、本件記事を前提としても、本件記事には「1審札幌地裁は30年の判決で『櫻井氏が、記事の公正さに疑問を持ち、植村氏があえて事実と異なる記事を執筆したと信じたのには相当な理由がある』として請求を棄却。今年2月の2審札幌高裁判決も支持した」とあるだけですから、通知人が捏造記事を書いたと認定した判決が18日付けの最高裁決定で確定した事実はないし、貴殿がそのように信じたとしても、信じたことに相当性が認められる余地がないことは明らかだというほかありません。

そして、貴殿が前首相という立場にあり、フェイスブックのフォロワーは60万4810人に及んでいることから、本件投稿の社会的影響は大きく、現に最初の投稿に7431人、本件投稿には728人が「いいね」ボタンを押していることからすれば(23日午前11時現在)、本件投稿が通知人の社会的評価に与える影響は甚大であり、到底看過できません。

よって、通知人は、貴殿に対し、本状到達後1週間以内に、本件投稿を削除するよう、強く求めます。誠意ある対応をお執り頂けない場合には法的措置を執らせて頂くことを申し添えます。

なお、本件についてのご連絡はすべて当職を通して頂ければ幸いです。

不一

2020年11月24日 

***************【解説】*****************

札幌訴訟の上告についての最高裁決定(11月18日)は、「原判決を破棄せよ」との植村氏の請求を棄却したが、「植村氏が捏造記事を書いた」と認定したものではない。植村氏の敗訴が確定したことは確かだが、それは、ひとことでいえば、植村氏の損害賠償請求を退けた札幌地裁、同高裁判決が確定したことを意味するにすぎない。

ところが、前首相の安倍晋三氏は21日未明、フェイスブックに「植村記者と朝日新聞の捏造が事実として確定したという事ですね」とのコメントを書き込んだ(写真上)。しかし、(繰り返して言うが、)札幌地裁、同高裁判決と最高裁決定はいずれも「植村氏が捏造記事を書いた」とは認定していない。したがって安倍氏のこのコメントは、札幌訴訟の経過と結果を歪め、朝日新聞と植村氏の名誉を毀損するデマである。影響は甚大であり看過できない。植村氏は24日、安倍氏に抗議文を内容証明郵便で送り、投稿の削除を求めたうえで、「1週間以内に誠意ある対応がない場合は法的手段を執る」と通知した。

そもそも安倍氏は、植村裁判の当事者ではない。植村氏が訴えた相手の櫻井よしこ氏は安倍応援団の団長格であり、また安倍氏と同じように強烈なアンチ朝日論者だから、その線でつながる安倍氏が植村裁判とまったく関係がないとはいえない。櫻井氏の裁判に関心を持つのも当然だろう。しかし、安倍氏の言動が植村裁判で直接的な争点になったことは一度もなく、したがって安倍氏は植村裁判に関しては部外者にすぎない。それなのになぜ植村裁判についてわざわざ発信をし、デマを流したのか。

安倍氏は9月16日に首相の座から去って以来、今回の投稿までにツイッターもフェースブックも5回しか発信していなかった。いずれも自身の行動や身辺にかかわるプライベートな内容で、政治や社会のできごとにコメントしたものではない(9月19日=靖国神社参拝、10月3日=トランプ米大統領のコロナ感染見舞い、10月6日=独メルケル首相からの電話、10月23日=産業遺産情報センター訪問、11月16日=IOC金賞受賞)。このような投稿履歴の流れの中で、今回の投稿は突出して奇異に映る。

安倍氏はこのデマを書き込むに先立って、ツイッターとフェイスブックに投稿していた。最初は19日午後5時24分。ツイッターで産経新聞の電子版記事をリツイート(引用紹介)した。翌20日午前10時8分には、フェイスブックで再び産経新聞の記事を引用紹介した(写真下)。どちらも自身の意見は書かれておらず、産経記事の引用紹介にとどまっていた。これで終わっていれば、前首相はヒマなんだなあ、と同情を込めた失笑を買いながら、SNSの膨大な情報の海の中に沈んで消えていったにちがいない。ところが、安倍氏は3日目に、前日の投稿に自らコメントする形でデマ情報を流したのである。

安倍氏のSNSフォロワー(登録読者)はツイッターが230万6781人、フェイスブックは60万4810人もいる。今回の投稿は、ツイッター(19日)では1.8万人の「いいね」ボタンが押され、7238人のリツイートがあった。フェイスブックでも20日投稿分に7861人、21日分には833人の「いいね」があった(数字は25日午後6時現在)。

この投稿に対する「いいね」「コメント」「シェアする」などのリアクションは、数も内容も、2014年に広がった朝日・植村バッシングとよく似ている。さすがに脅迫めいたものはないが、悪意、誹謗、中傷、憎悪、曲解、誤解、無恥、無知が腐臭を放っている。安倍氏の真意はフェースブックの短い文面からは読み取れないが、結果的には植村氏の名誉を毀損し、朝日・植村バッシングを煽ることになった。コメントの文末に「ですね」とあるのは、読者に同意を促す扇動表現と受け取ることもできる。首相辞任後も精力的に議員活動を続けている安倍氏だが、支持者たちに健在ぶりを示したかっただけなのだろうか。だとしたら、無責任で軽率きわまりない投稿だと言わざるを得ない。「桜を見る会前夜祭」問題の対応で多忙なことは承知しているが、こちらにもきちんと対応していただきたい。

(支える会事務局H.N=文責)




安倍氏のFB

2020年11月20日金曜日

最高裁への抗議拡散

 ♯慰安婦巡り元朝日記者植村隆さんを敗訴させた最高裁に抗議します

植村隆さんの上告(札幌訴訟)を最高裁が棄却したことについて、弁護士の神原元さん(東京訴訟弁護団事務局長)が19日夜からツイッターで抗議の投稿を続けています。神原弁護士は、「植村バッシングを支持し、権力の犬になり下がった最低裁判所」と最高裁を激しく批判し、「植村さんは捏造記者ではない、という認識はもはや社会の常識だ。植村さんは負けてはいない」と訴えています。これらの投稿には「♯慰安婦巡り元朝日記者植村隆さんを敗訴させた最高裁に抗議します」のハッシュタグが付けられ、そのタグに賛意を示すコメントやリツイートが広がっています。中でも、ジャーナリストの安田浩一さんのコメントには1000件を超える「いいね」が届いています。

 

以下に、神原弁護士と安田さんのツイートのテキスト(書きこみ文字)と、拡散ツイートのスクリーンショット(画像採録)の一部を紹介します。<順とサイズ不同、11月20日13:45起点>

 

神原元・弁護士のツイート

▼植村隆さんは元従軍慰安婦・金学順さんの告発を日本で最初に報道した。植村さんの記事は金さんの証言と完全に一致していた。その植村さんへのバッシングを支持した最高裁は、権力の犬になり下がった最低裁判所だ。

▼例によってネトウヨの諸君は誤解しているわけだが、確定した札幌判決は「捏造」の「真実相当性」を(不当にも)認めたに過ぎない。むしろ捏造に「真実性」がないことも同時に確定したのだから、今後「捏造」批判は名誉毀損になる。

▼真実と正義が我々の側にある以上、我々弁護団は戦い続ける。東京訴訟は継続中だし、新たな裁判もドシドシ起こすだろう。「ネトウヨ絶対○○マン」の異名はダテではない。ネトウヨの諸君におかれては刮目して待ち頂きたい。

▼このタグをシェアしてくださっている人の数と書きこみをみれば、「植村さんは捏造記者ではない」という認識がもはや社会の常識であることが分かる。植村さんは負けてはいない。否、勝負はこれからだ。裁判は今後も続くだろう。

 

安田浩一さんのツイート

▼「植村裁判」を長きにわたって傍聴してきた。一、二審を通して裁判所は植村隆氏が「捏造報道」をおこなったことなど認めていない。法廷では櫻井よし子氏のいい加減な(取材もろくにしていない)記述こそがあぶり出された。最高裁の決定に憤りを感じる。植村氏の家族にも向けられた脅迫は絶対に忘れない。
























 

2020年11月19日木曜日

札幌訴訟の敗訴確定

最高裁が上告を棄却!

(以下引用)

【朝日新聞2020年11月20日、朝刊】 

 元慰安婦の証言を伝える記事を「捏造(ねつぞう)」と記述されて名誉を傷つけられたとして、元朝日新聞記者で「週刊金曜日」発行人兼社長の植村隆氏がジャーナリストの櫻井よしこ氏と出版3社に計1650万円の損害賠償などを求めた訴訟で、最高裁第二小法廷(菅野博之裁判長)は植村氏の上告を退けた。請求を棄却した一、二審判決が確定した。18日付の決定。

植村氏は1991年、韓国人元慰安婦の証言を朝日新聞で2回記事にした。これに対して櫻井氏は2014年、月刊誌「WiLL」「週刊新潮」「週刊ダイヤモンド」で「捏造記事」などと指摘した。18年11月の札幌地裁判決は、韓国紙や論文などから、植村氏の記事が事実と異なると櫻井氏が信じる「相当の理由があった」と請求を退けた。今年2月の札幌高裁判決も一審を追認した。

(引用おわり)


植村氏コメント

上告棄却の知らせを受けて、植村氏はコメントを発した(11月19日)。

「櫻井氏の記事は間違っていると訂正させ、元慰安婦に一人も取材していないことも確認でき、裁判内容では勝ったと思います。」