今回の展示を中止に追い込んだ得体の知れない人たちの暴力的バッシングは、5年前に北星学園大学と植村隆さんに加えられた攻撃と相似形であり座視できない。このような暴力に屈することは社会の自由な表現・言論空間の萎縮につながる。実行委員会は、暴力に屈しない姿勢を示し、展示の再開に踏み切っていただきたい――とメッセージは訴えています。
今からでも遅くはない「不自由展」再開を!!
民主主義の破壊を許せない-北の地から送るメッセージ
2019年8月8日
元「負けるな北星!の会」(札幌)有志
伊藤誠一(弁護士)、
結城洋一郎(小樽商大名誉教授)、
七尾寿子(植村裁判を支える市民の会事務局長)ほか
今からちょうど5年前の2014年夏、札幌にある北星学園大学は、得体の知れない人々からの電話・メール・ファクスによる激しい非難と攻撃にさらされていました。標的となったのは、非常勤講師を当時務めていた元朝日新聞記者の植村隆さん。大半は「国賊・売国奴の植村を辞めさせろ」という要求で、中には「大学を爆破する」「学生を痛めつける」といった脅迫もありました。植村さん個人も「娘を必ず殺す」と脅されました。大学は疲弊・動揺し、植村さんの雇い止めを決断しかけました。
この事態を民主主義の危機であると感じ取った札幌市内の公務員と元高校教師2人の訴えをきっかけに多くの札幌市民、有識者が立ち上がり、「負けるな北星!の会」が結成されました。支援の輪は全国・海外に広がり、1457の個人・団体が賛同人・団体として名前を連ねました。その結果、大学は植村さんの雇い止めを断念し、雇用を継続しました。
大学が攻撃された理由は、植村さんが朝日新聞記者として1991年に書いた元日本軍慰安婦の記事にあります。著名なジャーナリストである櫻井よしこ氏らが根拠もなく「記事は捏造」と植村さんを非難したことが、日本社会の底流に蠢いている不気味な暴力装置を起動させました。
今回、あいちトリエンナーレ企画展「表現の不自由展・その後」が突然の中止に追い込まれた経緯について、私たちは札幌の地で5年前に起きた北星学園大学・植村バッシングとの驚くべき相似形を見る思いがします。ただし、結果は異なります。暴力的バッシングに嬉々として参加する得体の知れない人々に対し、植村さんの雇用を大学と私たちが守ることによって、私たちは「成功体験」を与えませんでした。一方で、これらのことが櫻井氏らを名誉棄損で訴える植村さんのエネルギーとなり、その裁判闘争を支える「市民の会」につながっています。
「展示会中止」の現段階においては、残念ながら得体の知れない人々は「快哉」を叫んでいることでしょう。この種の成功体験が重ねられるほど、社会の自由な言論・表現空間は萎縮し、日本の民主主義の基盤は脆弱になります。そして、次の標的探しに向かうのです。
であればこそ、私たちは今回、名古屋で起きたこの問題を座視できません。決して他人事ではないのです。いまからでも遅くありません。展示の再開に踏み切っていただきたい。暴力には屈しない姿勢を示していただきたい。そのために必要な万全の体制を関係機関が連携し、構築していただきたい。私たちは強くそれを望み、札幌の地から連帯のメッセージを送ります。「負けるな!あいちトリエンナーレ実行委員会」
※メッセージPDFはこちら
※地元愛知県をはじめ全国各地で、展示中止に抗議し再開を求める声と運動が広がっています。その動きをフォローしているサイトを紹介します。
■「表現の不自由展・その後」の再開をもとめる愛知県民の会
■女たちの戦争と平和資料館wam