会見、集会でも櫻井氏にきびしい批判
「幕切れの朝日ウソつき発言は櫻井氏の捨て台詞、悲鳴だ」(秀嶋弁護士)
「植村氏への非難がみごとに櫻井氏自身に帰ってきた」(能川氏)
「デマと捏造、安倍政権の提灯持ちの櫻井氏、水に落つ、だ」(安田氏)
裁判報告集会は午後6時30分から、札幌駅近くの北海道自治労会館4階ホールで開かれた。朝からの本人尋問の傍聴を終えた人、傍聴券の抽選に外れた人、仕事などで傍聴ができなかった市民ら、約170人が参加した。
最初に、前札幌市長の上田文雄さん(植村裁判を支える市民の会共同代表)が、あいさつ。「前回の証人尋問に出た喜多義憲さん(元北海道新聞記者)と同じジャーナリスト魂、同じ思いを、植村さんがきょうの法廷で示していた。市民の目、耳、頭脳となるジャーナリズムが、民主主義を育て、自由、人権を守っていくのだと思う」。続いて、本人尋問を担当した弁護士3人が順に、尋問で引き出そうとしたねらいなどを説明した。櫻井氏の反対尋問をひとりで行った川上有弁護士は、「櫻井は本件に関してあちこちで書き、発言しているが、十分な調査をしていないことは明白だった。それを明らかにする資料がどれだけ集まるかが勝負だったが、支援グループにリクエストしたら次々に集まった。それらを整理し客観資料を振り分けるだけで、彼女のウソや不十分な調査が浮き彫りになった」と、尋問の舞台裏の一端を明かした。
植村隆氏は「厳しい反対尋問を覚悟していた。被告側の弁護士は私への質問を共有していないようだった。私の名誉を棄損しようとした弁護士もいた。朝日新聞の第三者委員会報告で、吉田証言についての私の調査が『徹底的なものではなかったようである』とあったのを、彼は『ずさん』といった。即座に反論したが、黙っていたら、『ずさん』が事実にされてしまうところだった」と語った。
対談「ネット右翼はいま…」では、哲学者能川元一氏とジャーナリスト安田浩一氏が、旧来のイメージとは様変わりした「右翼」の危険な現状を語り合った。能川、安田両氏とも対談の前、朝から夕方までこの日の裁判すべてを傍聴した。その感想を、対談の冒頭で次のように語った。
能川氏「櫻井さんが植村さんに言ってきた、ずさんだとか捏造だ、に事実誤認があることが動かしがたく明らかになった。植村さんに対して投げかけてきた非難がみごとに櫻井さん自身に帰ってきた尋問だった」
安田氏「櫻井さんは安倍政権の代弁者、というより提灯持ちだ。提灯持ち水に落ち、という言葉もある。主人の足元を照らしているうちに自分の足元が見えなくなって、気がついたら水に落ちていた、ということだろう。日本社会を良くしていくためにはデマと捏造は許さない。そのことを植村さんの弁護団は法廷で示してくれた」
※対談「ネット右翼はいま…」は後日掲載します
記者会見での発言
植村氏と櫻井氏は、閉廷後、札幌市内のそれぞれ別の場所で記者会見をした。
■植村氏側
弁護団事務局長の小野寺信勝弁護士は「櫻井氏は、取材を尽くして植村氏の批判をしたのかが尋問のポイントだった。捏造批判のよりどころとなっていた金学順さんの訴状を参照せず、訴状にそんな記述がないのに櫻井氏は『継父に人身売買され40円で売られた』たとした。自分の都合のいい部分だけ論文から利用するなど、調査の不足、意図的な手抜きがあったと考えられる」と述べた。秀嶋ゆかり弁護士は「被告側は、連行=強制連行、挺身隊=勤労挺身隊に引き付けようとする尋問だった。40円問題は、櫻井さんが繰り返し書いたりテレビで発言しており、その都度確認していないことが鮮明になった。22年前の講演会の架空発言を認め、朝日新聞もウソをついたでしょ、と尋問の幕切れで答えた。そう言うしかない櫻井さんの捨て台詞、悲鳴のように感じた」と語った。
植村氏は「私の記事が捏造ではないことを十分証明できたと思う。櫻井さんがいかに取材せず、捏造記者と言っているかも明らかになったと思う。書いた記事がこうして捏造呼ばわりされることは、みなさんにも起きる。私が直面している問題は、すべてのジャーナリストが直面する可能性がある」と話した。
■櫻井氏側
林いづみ弁護士は「40円問題」について「金学順さんの訴状、40円を記載している月刊誌の論文、ソウルの共同記者会見を報じた現地紙からの出典を、勘違いしていた。間違ってはいないが、勘違いした点については各出版社と相談し訂正する、と主尋問で申し上げている。原告側は反対尋問で、このことだけに絞って質問したが、まったく意味のない尋問だったのではないか」と評した。櫻井氏は「韓国で慰安婦が挺身隊と表現されていたことは事実です。慰安婦という意味で、挺身隊だった、と言っている女性もいた。問題は、従軍慰安婦の生き残りのひとりがソウルにいたことについて『女子挺身隊の名で戦場に連行され』と書かれていることです」と述べた。