2017年7月10日月曜日

札幌第8回報告集会

 植村裁判札幌訴訟の第8回口頭弁論報告集会が77日午後415分から札幌市教育文化会館で開かれた。弁護団事務局長の小野寺信勝弁護士が裁判の進行状況を報告した後、植村隆さんが近況報告を兼ねて「文在寅政権の対日政策と日韓関係」と題して講演。「負けるな北星!の会」(20161031日解散)の元呼びかけ人、内海愛子・恵泉女学園大学名誉教授も挨拶した。司会は植村裁判を支える市民の会事務局の益子美登里さん。約80人が参加した。

■マケルナ会記録集刊行を報告
 主催者を代表し、支える会の林秀起事務局次長が挨拶。支える会の母体ともなった「負けるな北星!の会」の記録集『北星学園大学バッシング 市民は かく闘った』(247頁、頒布価格500円)の刊行を報告した。

■年度内に判決か
 小野寺弁護士によると、裁判進行のロードマップは①主張整理②立証(証人尋問)③判決――の3段階。現在は①の最終局面にある。次回期日の98日、次々回期日の1013日をもって①の段階が終わり、1122日の進行協議(非公開)を経た次の期日でいよいよ植村さんや被告の櫻井よしこさんらの証人尋問が始まる見通し。小野寺事務局長は「年度内の判決が見えてきたと言える」と述べた。
 小野寺弁護士はこの日の弁論で、被告ワック社(『月刊WiLL』の発行元)が提出した自らの主張を補強する証拠約120件が「本件訴訟と関係がない」として裁判所が「バッサリ削除」した場面を振り返った。「慰安婦は売春婦だ」といった主張で、被告側の論点すり替えが裁判所に見透かされたとも言える。

■韓国現代史からの学び~植村さん近況報告
 植村さんは韓国カトリック大学(校)で「東アジアの平和と文化」をテーマに客員教授として教鞭を執っている。日本にあまり知られていない大学の知名度アップを目標に授業の中で製作した大学紹介の日本語パンフレットを持参し、「韓国カトリック大学を日本に発信したい」と意気込みを語った。
 韓国では朴槿恵前大統領の罷免・逮捕、大統領選、文在寅政権の誕生と激動の現代史が進行している前大統領の失脚の原因は「お友達」への利益誘導が国民の怒りを買ったこととコミュニケーション能力の欠如にあったと分析。「これ、日本ではなくて韓国の話です」と会場を笑わせた。国民との対話を重視する大統領の姿勢は世論調査でも高評価を得ているという
 文在寅大統領が掲げる日韓慰安婦合意の見直しについても言及。安倍晋三首相が政治家として何を目指してきたか。日本軍の関与と強制性を認めて謝罪した1993年の河野談話の見直しを念頭に、教科書に載った慰安婦の記述に「自虐教育」と反発する国会議員の会を組織するなど、「記憶の継承をずっと妨害してきたのが安倍首相だ」と指摘した。
植村さんが強調したのは韓国で展開している「ひろばの政治」。前大統領の退陣を求め、街のひろばで連日展開された市民による「ローソク集会」は「デモクラシーの原点を見ているようだった」と韓国における「学び」の大きさを語り、その根本にある韓国の憲法第1条を読み上げた。
大韓民国は民主共和国である。大韓民国の主権は国民にあり、全ての権力は国民から発する」
植村さんは「当たり前のことだが、ローソク集会は国民が主権者であることを、身をもって示していると考えさせられた」としめくくった。
 内海愛子さんは短いスピーチの中で、戦後補償から置き去りにされた朝鮮半島や台湾出身のBC級戦犯、空襲の民間人被害者の問題に触れ、「東京裁判は天皇(の責任)、一般国民の被害、植民地支配の問題に触れなかった。何が裁かれ、何が裁かれなかったのか、考えなくてはいけない」と訴えた。

■7.7平和集会に合流
通常の報告集会はゲストを招いての講演を組み込んできたが、この日は午後6時半からかでる27で開かれた第327.7平和集会「アジアから今、問われている あの戦争」(メーン講師は内海愛子さん)への合流を想定していつもより短い約1時間で切り上げた。平和集会は支える会を含む35団体で実行委を構成。植村さんも、会場を埋めた約200人を前に韓国の現状について20分間特別報告した。


Text by YAMADA