入廷する植村さんと弁護団(12月16日、札幌地裁前) |
櫻井氏の代理人発言で法廷に波乱
植村裁判札幌訴訟(被告櫻井よしこ氏、新潮社、ダイヤモンド社、ワック)の第5回口頭弁論が12月16日、札幌地裁803号法廷で開かれました。この日、午後3時の気温は氷点下3.9度。裁判所近くの大通公園は凛とした冬化粧に包まれていました。そんな師走の週末の午後にもかかわらず、この日も傍聴券を求める行列ができ、抽選となりました(傍聴席72、行列は75人)。
午後3時30分開廷。まず、原告側が第4、第5準備書面の要旨朗読を約10分行いました。二つの書面は、前回、新潮社とダイヤモンド社が櫻井よしこ氏の表現は名誉棄損にはあたらない、と主張したことに対する反論です。齋藤耕弁護士は、新潮社が「事実の摘示であっても原告の社会的評価を低下させない」とする理由に対して、「表現を文節ごとに分解などして、一般読者が受ける印象とかけ離れた解釈をしている」と批判しました。また、竹信航介弁護士は、ダイヤモンド社が「表現が具体性に欠けるから原告の社会的評価は低下しない」とする理由について、最高裁の重要な判例を引用して「社会的評価を低下させるものであるかどうかの判断は一般の読者の普通の注意と読み方とを基準として判断すべき」と反論しました。
これでこの日の陳述は終わり、次回以降の進め方について岡山忠広裁判長の考えが示されました。原告と被告の主張を裁判長があらためて整理し直し、土俵をきちんと作って審理の速度を早めようという趣旨の提案でした。裁判長は双方に同意を求め、いくつかのことを確認して閉廷する段取りでした。
ところが、ここで波乱が起きました。櫻井氏の代理人弁護士が、「ワックの陳述を原告は読み違えている」「きょう予定されていた弁論を原告はしなかったため2カ月も空転が生じた」などと発言したのです。傍聴席には失笑があちこちでもれました。呆れた人もいたはずです。原告弁護団は黙ってはいませんでした。伊藤誠一弁護団長、小野寺信勝事務局長、大賀浩一弁護士が次々と大きな声で反論しました。
結局、岡田裁判長のソフトな裁きで混乱には至りませんでしたが、閉廷したのは午後4時10分。波乱気味のやり取りを含め40分も費やした口頭弁論は、植村裁判ではこれまでの最長記録です。このやりとりについて、弁論の後に開かれた報告集会で、大賀浩一弁護士は、こう解説しました。
――そもそもワックの準備書面(9月30日付)は、よくわからない、はっきりしない、煮え切らない内容のもので、私は10回読み直したが理解できなかった。裁判長が、それでは困るので裁判所が内容を整理しますよ、ということなのです。それについて、原告が内容を読み違えたとか変えたというのは、ワックに代わって口を出した弁解、いちゃもんです。2カ月の空転とかいうが、原告側が待っていた櫻井氏の準備書面を代理人は9月30日までに提出せず(出版3社は提出)、その1カ月後に、書面はどうしたのかと問いただすと、各社の主張を援用すると言ったのですよ。各社の中にはワックも入っている。ワックにしても、提出した重要書面を陳述しながら、その内容を変えるというのは、民事訴訟法では「自白の変更」といって、よほどの事情がない限り許されないことなんです。
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報告集会は午後4時20分から6時40分まで、札幌市教育文化会館で開かれました。大賀弁護士と植村隆さんの報告の後、女たちの戦争と平和資料館wam事務局長・渡辺美奈さんが「『慰安婦』問題の現在」と題して講演しました。
<報告と講演の詳報は後日掲載します>
渡辺さんの講演に聴き入る参加者(12月16日、札幌教育文化会館) |