2019年10月10日木曜日

重要証拠提出し結審

1991年に金学順さんが証言した肉声を

植村さんが録音したテープが発見された!

札幌控訴審、判決言い渡しは2020年2月6日に


updated:2019/10/10 pm11.50
updated:2019/10/13 am10.00


札幌訴訟の第3回口頭弁論は10月10日午後2時半から札幌高裁で開かれ、植村隆さんと渡辺達生弁護士(札幌弁護団共同代表)が最終の意見陳述を行った。この後、櫻井よしこ氏側との意見のやりとりはなく、裁判長は「これで弁論を終結します」と宣言した。判決言い渡し期日は「来年2月6日午後2時半」と指定された。閉廷は午後3時ちょうどだった。

■植村さんの意見陳述「櫻井氏の言説は誤りと矛盾だらけ、地裁判決は異常だ」
植村さんは、意見陳述の中で、重要な証拠として2本の録音テープを提出したことを明らかにした。1本は1991年12月に金学順さんが日本政府を訴えた裁判の弁護団(高木健一弁護団長)の聞き取りに同席して録音したテープ。もう1本は前年の90年7月、植村さんが挺対協共同代表・尹貞玉氏をソウルでインタビューしたテープ。いずれも植村さんが録音したものだが、その後、ジャーナリスト臼杵敬子氏の手に渡り、このほど臼杵氏の自宅で発見された。
金学順さんのテープは、金さんが慰安婦とされた経緯を詳しく語る肉声が収められ、その証言を植村氏の記事が正確に再現したことがはっきりとわかる。尹氏のテープでは、挺身隊との呼称が当時韓国では一般化していた事情と、植村氏が早くから慰安婦取材をしていたことなどが詳しく語られている。

植村さんはこの2本の録音テープの内容などをふまえて、櫻井よしこ氏の言説は誤りと矛盾に満ち、「捏造」決めつけの合理的な根拠が示されていないこと、また、そのような櫻井氏を免責した一審判決も異常だと批判し、公正な控訴審判決を求めた。

渡辺弁護士は、9月17日に裁判所に提出した3通の準備書面の概要を説明し、最後に櫻井氏の政治的立場を批判し、「原判決は、櫻井について真実相当性が認められないにも関わらず、そのハードルを下げて免責し、日韓関係の悪化にも事実上加担した。このような加担は司法の自殺行為であり、原判決は絶対に破棄されなければならない。裁判所の英断を期待する」と結んだ。


この日の札幌は秋日和がまぶしく感じられる穏やかな天気で、正午の気温は22度。
開廷前、傍聴のために整列した人は81人。805号法廷の傍聴席は80だが、1人が辞退したため抽選は行われず、希望者全員が入廷し傍聴した。
植村側弁護団席には、東京弁護団の2人を含め18人が着席。櫻井氏側は6人が並んだが、主任格の高池勝彦弁護士の姿はなかった。
植村さんと渡辺弁護士の意見陳述は控訴審を締めくくるにふさわしく、気迫に満ちたものとなり、終わるたびに法廷に拍手が響いた。


■報告集会で明かされた西岡、櫻井氏の映画取材撮影拒否の言い分
裁判報告集会は午後6時から、裁判所近くの札幌市教育文化会館で開かれた。参加者は80人。
裁判報告は小野寺信勝弁護士(弁護団事務局長)が行った。小野寺氏は、裁判の経過と要点をパワーポイントで説明した後、結審に至った控訴審を振り返り、「今日の弁論で書面は出し切った。あの主張を追加しておけば、とかあれは誤りだった、というものは全くない。この書面をもって、高裁ではよほど特殊な事情がない限り、地裁判決はひっくり返るだろう。そう期待している」と語った。
続いて、映像作家の西嶋真司氏が、完成が近づく映画「標的」の解説トークをし、短縮版を上映した。西嶋氏は撮影と取材の舞台裏のエピソードも披露した。取材や撮影を拒否した重要人物は2人いて、そののひとりは、「捏造という言葉は日本語にある。なぜそれを使ってはいけないのか」と3度も言い放ったという。
その後、韓国から植村さんの応援にかけつけた「植村隆を考える会」のメンバー12人が紹介され、会場には大きな拍手が起こった。同会は9月16日にソウルで結成され、著名なジャーナリスト、大学教授、宗教家らが呼びかけ人に名を連ねている。
集会の最後に植村さんが日韓両国語で挨拶し、控訴審結審までの5年間にあった3つの変化について語った。変化のひとつは、裁判を通じて櫻井、西岡両氏のインチキぶりが徹底的、完膚なきまでにあぶり出されたこと、そして、様々な人が裁判にかかわり、民主主義、歴史の真実、人権を守る大きなネットワークが広がり構築されたこと、3つ目は自身の健康状態はすこぶる良好で食欲は旺盛、胴回りが3センチ増えてズボンがきつくなったことだという。会場には共感の拍手と笑い声が絶えなかった。



写真上段左=裁判所に向かう植村さんと弁護団、右=韓国から訪れた「植村隆を考える会」メンバーと日本の「支える会」メンバーが植村さんを囲んで裁判所前で記念撮影
中段=80人が参加した裁判報告集会と、映画「標的」監督の西嶋真司氏
下段=集会であいさつする植村さんと、「植村隆を考える会」メンバー(右端は任在慶氏=ハンギョレ新聞元副社長)

photo by 石井一弘、高波淳、ハンギョレ新聞(いずれも10月10日)

※韓国ハンギョレ新聞が特派員記事を日本語版に掲載しています