言語道断、司法の名折れ、暴挙、劣化コピー!
報告集会にあふれる判決批判
2019年6月26日、東京地裁103号法廷。
予想されていたこととはいえ、あまりにもひどい判決だった。
判決を受けた後、報告集会は午後4時から参議院議員会館で開かれた。参加者は約80人。
予想されていたこととはいえ、あまりにもひどい判決だった。
判決を受けた後、報告集会は午後4時から参議院議員会館で開かれた。参加者は約80人。
裁判報告では、東京弁護団の神原元、穂積剛氏と札幌弁護団の小野寺信勝氏が判決の問題点を解説し、不当判決をきびしい口調で批判した。
■3弁護士の発言(要約)
■3弁護士の発言(要約)
神原元弁護士
▽判決は西岡と文藝春秋の名誉棄損は認めたが、相当性と真実性によって免責した。これは名誉棄損の判断基準を逸脱し、さらに歴史の真実を歪めてしまった言語道断の不当判決だ。
▽判決によると、西岡の名誉毀損表現は次の3つの事実を摘示したとされる。
①原告が、金学順のキーセンに身売りされたとの経歴を認識しながらあえて記事にしなかったという意味において、意図的に事実と異なる記事を書いた
②原告が、義母の裁判を有利にするために意図的に事実と異なる記事を書いた
③原告が、意図的に、金学順が女子挺身隊として日本軍によって戦場に強制連行されたとの、事実と異なる事を書いた
▽判決は、このうち①②は相当性を認め、③は真実性まで認めた。①と②の相当性の理由は、西岡の推論に一定の合理性があるというのだが、それ以上の根拠は示していない。とくに②についてはひどい。私たちは、植村さんは義母の裁判を有利にするために記事を書いたのではない、と反証をたくさん提出したが、判決はそれらを一切無視した。
▽相手を捏造などと激しく非難した場合に相当性を認めるには、それを裏付ける取材とそこで得られた確実な資料が必要だというのがこれまでの裁判例だ。この判決が、西岡の勝手な決めつけを認めたことは、これまでの判例を逸脱した暴挙に近いものだろう。
▽相手を捏造などと激しく非難した場合に相当性を認めるには、それを裏付ける取材とそこで得られた確実な資料が必要だというのがこれまでの裁判例だ。この判決が、西岡の勝手な決めつけを認めたことは、これまでの判例を逸脱した暴挙に近いものだろう。
▽相当性というのは、(真実かどうかはわからないが)真実と信ずるに足る理由があるということ。札幌判決はすべての点で相当性を認めて櫻井を免責した。ところがこの判決は③で相当性ではなく、真実性を認めている。これは札幌判決よりもっと悪い。真実性は、それが真実だということ。重要な免責条件だ。判決は、「挺身隊の名で連行」は「強制連行を意味する」と決めつけ、植村さんは「だまされて」と認識があったのに「強制連行」との印象を与える記事を書いたのだから、③には真実性がある、というのだ。しかし、金学順さんはだまされて中国に行き、そこで慰安婦にさせられた、と繰り返し証言している。だから、植村さんが書いた「だまされて」と、「強制連行」は矛盾せず、両立する。
▽「植村さんが読者をあざむくために強制連行でないのに強制連行だと書いた」といわんばかりの認定は、真実を捻じ曲げるのものだ。同時に、慰安婦制度の被害者の尊厳をも傷つけるのものだ。安倍政権の慰安婦問題への姿勢を忖度したような不当判決であり、控訴し、全力でたたかう。
穂積剛弁護士
▽判決は不当だが、裁判所に正しい判断をさせるという弁護士としての責務を果たすことができなかった。私自身に責任の一端がある。支援者の皆さんと原告の植村さんに深くお詫び申し上げます。
▽名誉毀損の訴訟構造というのは、最高裁のこれまでの判決の積み重ねでほぼ確立している。いままでの判例をきちんと解釈して適用すれば間違いようがないのだ。だから、本件も勝てると思っていたし、みなさんも、法律論の難しいところはわからなくても、おかしいと確信を持っていると思う。法律論としてもできあがっている訴訟の結論を正反対にしてしまうのだから、この判決はおかしいに決まっている。
▽判決は西岡の表現について、「被告西岡が、原告が義母の裁判を有利にするために意図的に事実と異なる記事を書いたことについて、推論として一定の合理性があるものと認められる」と言っている。しかし、「一定の合理性」を認める根拠は示していない。ひとつのものごとの解釈について、いろいろな推論があることはわかるが、A、B、C、Dという推論があって、B、C、Dは検討せずにAだけは認める、というのであれば、どんな表現をしても相当性があり、セーフになるではないか。
▽これほどにメチャクチャな判決が通れば、この世の中に名誉毀損は成立しなくなる。この異常性をぜひ認識してもらいたい。こんな判決を維持していくのは日本の司法の名折れだ。絶対に許さないという決意を持って控訴し、やっていく。
小野寺信勝弁護士
▽ある程度覚悟はしていたが、結論もさることながら、想像以上に内容がひどい。札幌判決の劣化コピーだ。札幌判決の悪いところばかりを抽出したような内容だ。
▽じつは裁判所は基本的なこと、イロハのイがわかっていないのではないか、という危機感を私たちは持っている。法曹ならだれでも知っている名誉毀損裁判の判例の枠組みを、もしかしたら裁判官はわかっていないのではないか。私たちが最初から主張しなければ裁判所は分からないではないか、という危機感だ。
▽そのために、札幌控訴審では憲法学者2人の意見書を提出した。言論の自由の観点からみても札幌判決はひどいものであること、また名誉毀損の被害が大きい場合には相当性のハードルはどんどん上がること、を意見書で主張している。
▽7月2日に札幌控訴審第2回口頭弁論がある。相手方がどう出るかによって今後の展開や日程が決まることになる。
■リレートーク
弁護団報告の前後に、新崎盛吾氏(共同通信記者)が司会しリレートークを行った。南彰(新聞労連委員長)、北岡和義(ジャーナリスト、植村裁判を支える市民の会共同代表)、崔善愛(ピアニスト、同)、安田浩一(ジャーナリスト)、西嶋真司(映像ジャーナリスト)、豊秀一(朝日新聞編集委員)、姜明錫(留学生)の各氏が、判決に対する批判、裁判の意味、植村さんへの激励などを語った。
弁護団報告の前後に、新崎盛吾氏(共同通信記者)が司会しリレートークを行った。南彰(新聞労連委員長)、北岡和義(ジャーナリスト、植村裁判を支える市民の会共同代表)、崔善愛(ピアニスト、同)、安田浩一(ジャーナリスト)、西嶋真司(映像ジャーナリスト)、豊秀一(朝日新聞編集委員)、姜明錫(留学生)の各氏が、判決に対する批判、裁判の意味、植村さんへの激励などを語った。
集会の最後に、植村さんは、「私が闘っている相手は一個人ではなく巨大な敵だ。ちょっとやそっとでは勝てない敵だが、これまでの成果はある。もう捏造とは言わなくなった、バッシングがとまった。塗炭の苦しみの中で、たくさんの人との出会いがあり、その恵みの中で希望も感じてきた。私の夢は崩されていない。高裁では逆転をしたい。これからも闘いを続け、歩み続けたい」と語った。
写真=報告集会で判決を批判する(左から)、神原、穂積、小野寺弁護士と植村隆氏
撮影=高波淳