2019年2月25日月曜日

裁判官忌避申し立て


 東京訴訟  原克也裁判長ら3裁判官

裁判の公正を妨げる訴訟指揮!

判決の直前に弁論を再開し、

「吉田証言」関連の新証拠を

被告側に指示し、提出させた!

西岡力氏と文藝春秋社を訴えた東京訴訟で、植村弁護団は「裁判公正が妨げられている」として原克也裁判長ら担当裁判官3人の忌避を申し立て、2月25日に東京地裁に理由書を提出しました。いったん結審しながら判決の直前になって、裁判所が突然「22日に弁論を再開する」と通告して被告側に新たな証拠の提出を求めたためです。この申し立てが認められるかどうかはわかりませんが、3月20日に予定されていた判決の言い渡しが、ずれ込む可能性も出てきました。

民事裁判では裁判官は原告と被告の双方が法廷に提出した証拠に基づいて判決を下すのが基本ルールです。この4年間の法廷でまったく争点になっていなかった「吉田清治証言」についての証拠(朝日新聞社第三者員会報告書全文)を、結審した後に裁判所がわざわざ指示して提出させるというのは異例であり一方的です。新たな証拠に対しては、主張・反論の機会が十分に与えられなければならないはずです。
忌避申し立てについて、東京弁護団が発表した声明は以下の通りです。

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■忌避申立に関する弁護団声明


本件(植村隆東京訴訟)は、元朝日新聞記者である植村隆氏が1991年に執筆した所謂「従軍慰安婦」に関する報道について麗澤大学客員教授等の地位にある西岡力より、「意図的な捏造」等とくり返し誹謗中傷を受け、その名誉を毀損された事案である。

本件訴訟は、2015年1月9日、西岡力及び同氏の言説を掲載した株式会社文藝春秋を被告として、慰謝料の支払い及び謝罪広告の掲載を求めて提訴された。本件の審理は、2015年4月27日に第1回期日、2018年9月5日の証拠調べを経て、同年11月28日の第14回口頭弁論にて結審し、2019年3月20日の判決言い渡しを待つのみとなっていた。

ところが、判決言い渡しの1ヶ月半前、2019年2月8日になって、本件審理を担当する裁判体より双方代理人事務所に「従軍慰安婦報道に関する朝日新聞社第三者委員会報告書の全文を証拠採用したい。弁論を再開するので、被告からこれを証拠提出するように」等とする電話があった。

これに対して、原告代理人は、同報告書のうち植村氏に関連する部分はすでに甲号証として提出されていること等を理由に反対する旨を述べた。しかし、裁判体の指示で弁論期日の日程を定めることとなり、2019年2月22日に弁論期日が設定されたのである。

裁判長である原克也は、すでに、従軍慰安婦問題に関連する訴訟を2件担当しており、本件訴訟においても極めて偏向的な訴訟指揮を行っていた。
また、本件審理においては、専ら「金学順が『挺身隊の名で連行された』と証言したか否か」のみが争点とされ、吉田証言の真偽等については全く争点になっておらず、これに関する証拠も提出されていなかった。それにもかかわらず、吉田証言の信憑性等に関連する150頁に亘る証拠が、判決のわずか1ヶ月前に採用され判決の基礎となることは、当事者の攻撃防御権を著しく侵害するものであり、そのような手続き進行を裁判所が主導したという点においても異常であり、弁論主義・当事者主義という訴訟法の根本理念に反し、裁判の公正が著しく妨げられているものである。

よって我々弁護団としては、民訴法24条「裁判の公正を妨げるべき事情」が存在すると考え、裁判体3名の裁判官の忌避を申し立てた。

今後も、植村氏の人権と元慰安婦らの尊厳を守り、歴史における正義を実現すべく全力で取り込む所存である。

2019年2月22日
植村隆東京訴訟弁護団


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※注=声明日付が22日とあるのは、同日に忌避申立書を提出したたため。忌避申立理由書は25日付で提出された。

2019年2月13日水曜日

杉田議員の名誉毀損

日本の女性運動や慰安婦問題などを科研費(国の科学研究費)で共同研究している4人の女性学者が、2月12日、杉田水脈議員に対して名誉毀損による損害賠償と謝罪文掲載を求め、京都地裁に提訴しました。朝日新聞記事と声明文を引用転載します。
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【朝日新聞デジタル、2月13日】より引用

自民党杉田水脈(みお)衆院議員(51)に研究内容を中傷されたとして大学教授ら4人が12日、計1100万円の損害賠償とツイッターへの謝罪文掲載を求めて京都地裁に提訴した。杉田議員から「ねつ造」「活動家支援に科研費(国の科学研究費)流用」などと言われ、社会的評価を低下させたと主張している。
原告は大阪大の牟田(むた)和恵教授、同志社大の岡野八代教授、大阪府立大の伊田久美子教授、大阪市立大の古久保(ふるくぼ)さくら准教授で、ジェンダー論やフェミニズム論の研究者。1人あたり110万~660万円の賠償を求めている。
4人は2014年から4年間、国から1755万円の助成(科研費)を受け、性の平等に向けた日本の女性運動や従軍慰安婦問題に関して共同研究をした。
訴状によると、杉田議員は昨年3~7月、ツイッターやインターネットの番組、雑誌で牟田教授や岡野教授の名前を出し、この研究を批判。ツイッターには「国益に反する研究」「反日活動」「ねつ造」と書き込み、科研費が使われたことを問題だと指摘したという。動画番組でも、原告らが開いた研究目的のワークショップを「送禁止用語を連発」と揶揄(やゆ)したと主張している。
提訴後、4人は記者会見し、牟田教授は「ネットで誤った情報が拡散されて誹謗(ひぼう)中傷を受けた。影響力が大きい国会議員の発言として言語道断だ」と訴えた。杉田議員の事務所は取材に「訴状を見ておらずコメントできない」と話した。
杉田議員は2期目。昨年7月、月刊誌「新潮45」(休刊)への寄稿で同性カップルを念頭に「生産性がない」と主張し、批判が集まった。
(引用終わり)

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声明の全文を、WAN(ウィメンズアクションネトワーク)のサイトより転載します。
 WANのURL こちら
 声明PDF こちら
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2019212

杉田水脈衆院議員提訴にあたっての声明

JSPS科研費基盤B「ジェンダー平等社会の実現に資する研究と運動の架橋とネットワーキング」JP26283013平成26-29年度研究グループ
牟田和恵(大阪大学
岡野八代(同志社大学)
伊田久美子(大阪府立大学
古久保さくら(大阪市立大学


本日、私たちは衆議院議員杉田水脈氏に対し、名誉毀損等による不法行為についての損害賠償等請求を京都地方裁判所に提訴しました。
杉田議員は、私たちが行った研究に対し、無理解と偏見に基づく誹謗中傷をインターネットテレビ、ツイッター、雑誌等種々のメディアを通じて繰り返し、私たちの名誉を大きく傷つけました。その詳細は訴状および今後法廷に提出する書面で明らかにしていきますが、ここでは簡単に3点に触れます。

第一に、杉田議員は、「慰安婦」問題を扱った私たちの研究について「ねつ造」と述べ発信しました。「強制連行」に関する一部の証言に問題があったとしても、それは「慰安婦」の存在、そして日本軍慰安所の強制性を否定するものでは全くありませんし、かつて日本軍が行った戦時性暴力は多くの研究者が調査によって明らかにしています。また、1993の河野官房長官談話ほか、「慰安婦」問題について政府が謝罪し反省を述べた文書は現在も日本政府の公式見解です。杉田議員はこの事実を無視して、「慰安婦」問題はねつ造とし、この問題について検討考察を行う研究まで貶めたのです。研究者にとって研究がねつ造とされるのは、研究者生命を危うくする、きわめて重大な名誉毀損です。

第二に、杉田議員はフェミニズムへの無理解から、私たちの研究を貶める発言を繰り返しています。私たちの研究では、ジェンダー平等の実現のためにはさまざまな社会運動や活動と架橋していくことが重要であることを、理論的にも実践知としても明らかにしてきました。それなのに杉田議員は「あんなのはフェミニズムではない」「活動であって研究ではない」などと、自らの偏った理解や無理解によって研究を貶めました。また、女性の身体や性は第二波フェミニズム以降の重要なテーマであり、国際連合の条約や日本の法律にも盛り込まれています。しかし杉田議員は、それを扱ったイベントについて「放送禁止用語を連発」などと浅薄な形容を繰り返して嘲笑し、研究に価値がないかのような印象操作を繰り返しました。これは、私たちのみならずフェミニズムやジェンダー研究全体に対する抑圧であり、とりわけ国会議員で男女平等を推進していくべき立場にある杉田氏のこのような言動は許されるものではありません。

第三に、杉田議員は、私たちが科学研究費助成期間終了後に研究成果を発表したことについて、助成期間を過ぎて科研費を使用しずさんな経費の使い方をしているかのように複数のメディアで発言しました。しかし助成期間が終わった後に科研費を支出することはあり得ませんし、実際、支出していませんから、経費のずさんな使用などと誹謗されるいわれはありません。また助成期間後に当該研究の成果を発表することは、科学研究費制度にも組み込まれた当然の学問的営為です。研究費や公費の使用に厳正さが強く求められる現在、こうした事実無根の「不正」疑惑をかぶせられることは、研究者として大きな憤りを禁じえません。

以上のような言動は、一般人においても許されるものではありませんが、国民の負託を受け憲法を遵守する責任を負っている、そして文科省はじめ行政に影響力を有している国会議員が行うとは言語道断です。

さらに杉田議員は、私たちに対して「反日」というレッテルを多用し、さらには「国益を損ねる」研究に科研費を助成することは問題であると繰り返しています。自らの偏った価値観から「国益」とは何かを決め付けること自体問題ですが、その上にそれを理由に学問研究に干渉・介入することは、学問の自由を保障する民主主義国家において許されません。私たち科研グループへの杉田議員の発言は、私たちに対するのみならず、学問の自由・学術研究の発展に対する攻撃であり、私たちへの誹謗中傷を放置することは将来にわたる学問の自由への介入の理由づけに利用されることが十分予想され、それを阻止するために今般の提訴に至りました。

学問研究への権力の介入を許さない人々、女性差別に反対する人々、「慰安婦」問題について歴史のねつ造を許さず責任ある解決を求める人々はじめ、多くの皆様に本裁判への注目と支援をよろしくお願いします。

本裁判への支援呼びかけ人2019.2.12現在)
青山薫(神戸大学)、秋林こずえ(同志社大学)、浅倉むつ子(早稲田大学)、庵逧由香(立命館大学)、伊藤和子(東京弁護士会)、伊藤公雄(京都大学・大阪大学名誉教授)、上野千鶴子(認定NPO法人WAN)、江原由美子(横浜国立大学)、岡真理(京都大学)、香山リカ(立教大学)、小島妙子(仙台弁護士会)、佐藤学(学習院大学)、清水晶子(東京大学)、住友陽文(大阪府立大学)、千田有紀(武蔵大学)、髙谷幸(大阪大学)、田中利幸(歴史家・評論家)、角田由紀子(第二東京弁護士会)、中野晃一(上智大学)、西谷修(立教大学)、能川元一(大学講師)、林香里(東京大学)、平井美津子(吹田市立中学)、廣渡清吾(法学者)、ノーマ・フィールド(シカゴ大学)、三浦まり(上智大学)、テッサ・モーリス=スズキ(オーストラリア国立大学)、山口二郎(法政大学)、山口智美(モンタナ州立大学)、山下英愛(文教大学)、雪田樹理(大阪弁護士会)