2018年2月16日金曜日

本日!札幌証人尋問

札幌訴訟第10回口頭弁論はきょう16日(金)にあります。
今回は、植村裁判では初めての証人尋問が行われます。証言台に立つのは原告側証人の喜多義憲氏です。喜多氏は1987年から92年まで北海道新聞の特派員としてソウルに駐在しました。植村氏が「慰安婦」についての記事を書いた91年8月当時、植村氏と同じように慰安婦問題の取材にあたり、初めて名乗り出た元慰安婦の金学順さんに最初の単独インタビューをしました。
札幌訴訟で裁判所が申請を認めた本人以外の証人は、原告側の喜多氏だけです。
開廷は午後1時30分、閉廷は午後3時30分の予定です。
傍聴券の発行は抽選となり、混雑が予想されます。抽選は午後1時ですが、早めに来場してください。
■きょう、池田恵理子さん講演
裁判の後の報告集会は、午後6時30分からJR札幌駅北口のエルプラザ4階大集会室で開催します。弁護団と植村氏の報告の後、池田恵理子さんの講演「慰安婦問題はなぜタブーにされたか」があります。
池田さんは元NHKディレクター、現在は「女たちの戦争と平和資料館」館長です。池田さんは、昨年12月に発刊された論考集「『慰安婦』問題と未来の責任」の第10章「慰安婦問題を未来に引き継ぐーー国際女性戦犯法廷が提起したもの」を執筆し、過去の戦争の歴史の抹殺・偽造を許さず、記録と記憶を継承することの重要さを訴えています。講演内容と重なる部分がありますが、その論考の結語部分から一部を転載します。

▽国際的には、「慰安婦」制度は性奴隷制であり、女性への人権侵害で重大な戦争犯罪だという認識が定着しているが、日本政府はいまだにこれを認めず、被害者や国際社会からの批判を無視している。日本のメディアの多くは「慰安婦」問題をタブー視して取り上げないか、民族差別とナショナリズムを煽る政治問題にしてしまう傾向にある。比較的「慰安婦」報道に力を入れてきた『朝日新聞』は、2014年8月に過去の「慰安婦」報道での誤報を公表してから右派による猛烈なバッシングを受け、その後の論調には“ぶれ”が目立つようになった。
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▽このような状況の背景には、「慰安婦」報道の“空白の15年”がある。この15年間、「慰安婦」被害の実態を知る機会を奪われた日本人は、加害の当事国の国民でありながら、その多くが「慰安婦」問題をよく知らないのだ。性暴力の根絶をめざす国際社会と女性運動、人権運動とのギャップはいっそう深まっていく。
▽安倍首相は1993年に国会議員になって以来、先の大戦を「アジア解放の正しい戦争」とし、憲法改正をライフワークと公言して「普通に戦争ができる国づくり」に邁進してきた。2006年からの第2次安倍内閣では「『慰安婦』の強制の証拠はない」と主張。これには国際社会から批判の声が高まり、翌2007年には米国下院、カナダ、オランダ、欧州議会などが日本政府に「慰安婦」問題の早期解決を求める決議を採択した。しかし、2012年からの第2次安倍内閣でも同様の発言を繰り返し、なんとか「河野談話」を否定しようとした。
▽敗戦から70年以上たった日本は、特定秘密保護法、集団的自衛権の行使容認、沖縄・辺野古の新基地建設、原発再稼働、安保法制、そして共謀罪法の成立…といった、日本の民主主義、平和主義、立憲主義を危うくする政権に翻弄されている。
▽私たちは、「女性国際戦犯法廷」が到達した地点を再確認して日本の戦争責任・戦後責任に向き合い、日本政府への働き替えを強めるしかない。政府はただちに第3次「慰安婦」調査を開始して被害と加害の事実を認定し、被害女性が求める公式謝罪と賠償を実現させるべきである。そして次世代にこの記憶と記録を引き継ぎ、再発防止に努めなければならない。
▽日本政府も歴修正主義者たちも、被害女性の寿命が尽きてしまえば「慰安婦」問題は消えていくと考えているだろうが、そうはいかない。日本政府が真の解決に踏み出すまで、被害女性の子や孫の世代が彼女たちの痛みと思いを受け継いでいくのだ。これは、中国やフィリピン、台湾などの次世代の動きからも明らかである。
▽過去の戦争の歴史を抹殺・偽造することは、新たな戦争を始める第一歩だと言われている。私たちに課された課題は重く、大きい。しかし、日本に生まれた私たちは「慰安婦」問題の解決なしには、アジア諸国の人びとと信頼関係を結べない。「慰安婦」を否定し歴史を偽造しようとする“記憶の暗殺者たち”との闘いが、戦争へ向かおうとするファシズム政権との闘いになってきた今、アジア世界の人びととの連帯を力に、この政治状況を変えていくしかないのである。