2017年10月29日日曜日
2017年10月13日金曜日
東京第10回口頭弁論
なおも「論評」と言い逃れる被告側の逃げ道をふさいだ
東京訴訟で今年最後となる第10回口頭弁論が10月11日、東京地裁で開かれた。傍聴券の抽選はなかったが、専修大・藤森ゼミの学生など初めて傍聴に参加する人も多く、同地裁で最も大きい103号法廷は満席となった。遅れてきた数人は入場できずに「立ち見はだめですか」と残念がる一幕もあった。次回から抽選が復活する見通しだ。壇上の裁判官たちは、傍聴席を埋め尽くした老若男女が真剣に耳を傾けている姿を目の当たりにして、植村さん支援の熱意が続いていることを実感したはずだ。今後も傍聴をぜひお願いしたい。
■「論評」の前提となっている事実の記述は「論評」ではない
午後3時前に開廷。被告の西岡氏・文春側は主任の喜田村洋一弁護士が欠席し、若い弁護士ひとりだけ。原告側弁護団は植村さんを囲むように10人が顔をそろえた。原告が提出した準備書面や証拠説明書を確認したあと、原告弁護団事務局長の神原元弁護士が第9準備書面の要旨を朗読した。
裁判の焦点である「捏造」という表現が名誉棄損にあたるかどうか、をめぐって、被告側は「『捏造』というのは事実の摘示ではなく、意見ないし論評」であると主張している。言い逃れとしか思えないような主張だが、神原弁護士は切れ味のよい2段構えの反論を展開した。「捏造」という表現が「意見ないし論評」にあたるがどうかは別としても、その「論評」の前提になった事実摘示そのものが「不法行為にあたる」という主張だ。
たとえば、「(植村さんが)義理のお母さんの起こした裁判を有利にするために、紙面を使って意図的なウソを書いた」と西岡氏は書いている。「捏造」という言葉こそ使っていないが、「意図的にウソを書いた」という記述は「意見ないし論評」ではなく明らかに事実として書いている。新聞記者が利己的な動機で読者をだます記事を書いた、ということを「事実」として述べているわけだ。
神原弁護士は「これは証拠によって存否を決めることができる問題です」と指摘。被告側が「意見ないし論評」と言い逃れる抜け道をピシャリとふさいだ。
■社会的評価を低下させる記述自体が不法行為にあたる
ほかにも、「(金学順さんの)キーセンへの身売りを知らなかったなどあり得ない。分かっていながら都合が悪いので意図的に書かなかったとしか言いようがない。」などという西岡氏の記述を取り上げて、これは植村記者の社会的評価を低下させることを狙っており、「それ自体が不法行為にあたる」と断言した。
もう一つの論点は、西岡氏と文春側は何を、どこまで立証するつもりなのか、という点だ。
週刊文春の記事は、植村さんが就任先の大学で「慰安婦問題について取り組みたい」と述べたと書いているが、被告側はこの点を立証していく意思を示した。神原弁護士は「この点は、被告・週刊文春が植村さんに対するバッシングを故意にあおった部分であり、重要な意味を持ちます」と指摘。取材にあたった週刊文春のT記者の取材メモの提出を求めた。植村さんは当時そのような言動をしていないので、いったいどうやって「立証」するつもりか、被告側のお手並み拝見というところだ。
この「立証」の要求に対して、被告側弁護士は「持ちかえって検討します」と答えただけ。原裁判長は被告側に11月13日までに回答を提出するよう求めた。今度は被告側が、どんな「取材」をしたのか、しなかったのか、その手の内を明らかにする番だ。
次回(第11回口頭弁論)は来年1月31日午後3時半から。
裁判の後、午後4時から参議院議員会館で報告集会が開かれ、神原弁護士と植村氏が報告、楊井人文氏(弁護士、日本報道検証機構代表理事)が「フェイクニュースにどう向き合うか」と題して講演した。
写真上左から、神原弁護士、楊井弁護士、植村さん。
下=会場の参議院議員会館講堂
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