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【吉見義明さん名誉毀損訴訟最高裁決定に対する抗議声明】
1 中央大学名誉教授の吉見義明さんが日本維新の会(当時)の桜内文城衆議院議員(当時)を名誉毀損で訴えた裁判(以下、吉見裁判)において、2017年6月29日、最高裁判所第一小法廷(裁判長小池裕)は吉見さんの上告を棄却し、受理をしないというきわめて不当な決定(以下、最高裁決定)を行いました。
2 この訴訟の発端は、2013年5月に橋下徹前大阪市長が「慰安婦制度が必要なことはだれでもわかる」と発言したことです。国内外からの批判を浴びた橋下前市長は同月、日本外国特派員協会で弁明のために講演しました。その際に、同席していた桜内氏が司会者の発言に関して、「ヒストリーブックスということで吉見さんという方の本を引用されておりましたけれども、これはすでに捏造であるということが、いろんな証拠によって明らかにされております」(以下、桜内発言)と発言しました。
3 研究者の研究業績を何の根拠もなく「捏造」であると公言する行為は、研究者に対する重大な名誉毀損であるだけでなく、研究者生命を奪いかねないほど深刻なことです。そして、この桜内発言が看過できないのは、吉見さんが明らかにしてきた「慰安婦」被害に関する事実を根幹から否定することで、被害者の名誉と尊厳をも冒涜するものであったということです。
4 吉見さんは、桜内発言が名誉毀損にあたるとして損害賠償請求に踏み切りました。しかし、2016年1月20日の東京地方裁判所の判決(以下、地裁判決)は、桜内発言中の「捏造」(「事実でないことを事実のように拵えること」との意味)という言葉が、「誤りである」「不適当だ」「論理の飛躍がある」といった程度の趣旨であるとの認識を示し、被告を免責しました。
吉見さんは控訴しましたが、同年12月15日に出された東京高等裁判所判決(以下、高裁判決)は、「これはすでに捏造である」(桜内発言)の「これ」の意味がさまざまな解釈が可能であるとし、「吉見さんという方の本」を指すとは認定できず、名誉毀損は成立していないと判断しました。
地裁・高裁判決ともに、誰が見ても容易に理解できる日本語の解釈を歪曲させたものであり、非論理的なものでした。
5 高裁判決を受けて、吉見さんは最高裁判所への上告を行いました。上告にあたっては、高裁判決の不当性を最高裁判所に示し、適切な決定を行うように求めました。しかし、最高裁決定は、「門前払い」というべきものでした。
6 吉見さんは丹念な資料調査と聞き取り等により日本軍「慰安婦」問題の実態解明に誰よりも大きく貢献し、日本国内外の歴史学界において高い評価を得てきました。地裁判決に対して、日本歴史学協会をはじめとした歴史学15団体が抗議声明を出したことはその証左です(2016年5月30日)。また、吉見裁判に対しては、日本国内はもちろん世界の市民から、本会への入会、裁判の傍聴、集会への参加や「公正な判決を求める国際市民署名」などの形で、あたたかいご支援をいただきました。
7 今回、日本の司法の最高機関である最高裁が不当な決定を行ったことは、日本の司法の腐敗を白日の下にさらすものです。歴史研究の成果に根拠なく「捏造」と発言しても免責されるというのは、いったいどういうことなのでしょう。この決定は、歴史学界への全面的な挑戦であり、日本と世界の市民の声を踏みにじるものです。そして、「慰安婦」被害者の名誉と尊厳をいっそう冒涜するものです。断じて許すことはできません。
8 地裁・高裁判決、そして、最高裁決定は、吉見さんの研究成果が「捏造」だということを認定したものではありません。
また、吉見裁判では、日本軍「慰安婦」制度が性奴隷制度といえる根拠についても、議論を展開し、桜内氏側の議論をことごとく論破してきました。地裁・高裁判決、最高裁決定のいずれにおいても、「慰安婦」制度が性奴隷制度であるか否かという点については、何らの判断も行われませんでした。したがって、「慰安婦」制度が性奴隷制度であることが否定されたことにはなりません。
「慰安婦」制度が性奴隷制度であるというのは、国際的な常識であり、歴史学界においても広く共有されている認識です。また、この裁判を通じて、「慰安婦」問題の歴史的実態がよりいっそう明らかにされたことも特筆すべきことです。
9 私たちは、不当な決定に強く抗議するとともに、吉見さんの名誉回復と、日本軍「慰安婦」問題の真の解決に向けて、取り組みを続けていきます。吉見裁判をご支援いただいたみなさんにお礼申し上げるとともに、今後の「慰安婦」問題の真の解決のための活動へのご協力をお願いする次第です。
2017年7月1日
YOSHIMI裁判いっしょにアクション
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【吉見義明教授名誉毀損事件の最高裁決定に対する弁護団声明】
1 2017年6月29日、最高裁判所第一小法廷(裁判長小池裕)は、桜内文城前衆議院議員(当時日本維新の会)の吉見義明中央大学名誉教授に対する名誉毀損事件について、吉見教授の上告を棄却し,上告受理申立を上告審として受理しないという極めて不当な決定(以下「本決定」という。)を下した。
2 この事件は、橋下徹大阪市長(当時)が、2013年5月27日、「慰安婦」問題に関して日本外国特派員協会で講演した際に、同席していた桜内氏が、「ヒストリーブックスということで吉見さんという方の本を引用されておりましたけれども、これは既に捏造であるということが,いろんな証拠によって明らかとされております。」と述べたこと(以下「本発言」という。)により、吉見教授の名誉が毀損されたという事件である。
3 東京高等裁判所の判決(以下「原判決」という。)は、本発言中の「これは」が指示しているものを「吉見さんという方の本」と特定できないとして,名誉毀損が成立しないとした。これは,論理も事実も無視して控訴棄却の結論を導いたというべきものである。
今回,最高裁判所が,このような極めて不当な原判決に何らの批判も加えずに本決定を出したことは,国民が司法権に付託した責務を放棄するものであり,強く抗議する。
4 吉見教授は日本軍「慰安婦」問題について世界的に知られた第一級の研究者であり,その著作は数々の史料と証言に基づく実証的な研究として高く評価されている。
本決定は,桜内氏の本発言が吉見教授の著作に言及したものと認めることができないとの原判決の事実認定を前提としており,吉見教授が著作の中で捏造したか否かについて判断を示していない。したがって,本決定によっても,吉見教授の「慰安婦」問題に関する研究実績への評価は微塵も揺るがないものである。
5 私たちは、研究者に対するいわれ無き捏造非難に対し断固として抗議するとともに,研究者の学問研究の自由を守り発展させ,「慰安婦」の被害実態が人権問題であるということへの正確な理解が社会で共有されるよう,今後も取り組みを続ける決意を表明する。
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【吉見義明教授名誉毀損事件の最高裁決定に対する弁護団声明】
1 2017年6月29日、最高裁判所第一小法廷(裁判長小池裕)は、桜内文城前衆議院議員(当時日本維新の会)の吉見義明中央大学名誉教授に対する名誉毀損事件について、吉見教授の上告を棄却し,上告受理申立を上告審として受理しないという極めて不当な決定(以下「本決定」という。)を下した。
2 この事件は、橋下徹大阪市長(当時)が、2013年5月27日、「慰安婦」問題に関して日本外国特派員協会で講演した際に、同席していた桜内氏が、「ヒストリーブックスということで吉見さんという方の本を引用されておりましたけれども、これは既に捏造であるということが,いろんな証拠によって明らかとされております。」と述べたこと(以下「本発言」という。)により、吉見教授の名誉が毀損されたという事件である。
3 東京高等裁判所の判決(以下「原判決」という。)は、本発言中の「これは」が指示しているものを「吉見さんという方の本」と特定できないとして,名誉毀損が成立しないとした。これは,論理も事実も無視して控訴棄却の結論を導いたというべきものである。
今回,最高裁判所が,このような極めて不当な原判決に何らの批判も加えずに本決定を出したことは,国民が司法権に付託した責務を放棄するものであり,強く抗議する。
4 吉見教授は日本軍「慰安婦」問題について世界的に知られた第一級の研究者であり,その著作は数々の史料と証言に基づく実証的な研究として高く評価されている。
本決定は,桜内氏の本発言が吉見教授の著作に言及したものと認めることができないとの原判決の事実認定を前提としており,吉見教授が著作の中で捏造したか否かについて判断を示していない。したがって,本決定によっても,吉見教授の「慰安婦」問題に関する研究実績への評価は微塵も揺るがないものである。
5 私たちは、研究者に対するいわれ無き捏造非難に対し断固として抗議するとともに,研究者の学問研究の自由を守り発展させ,「慰安婦」の被害実態が人権問題であるということへの正確な理解が社会で共有されるよう,今後も取り組みを続ける決意を表明する。
2017年7月1日
吉見義明教授名誉毀損訴訟弁護団
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