植村裁判札幌訴訟(被告、櫻井よしこ氏と新潮社、ダイヤモンド社、ワック)の第3回口頭弁論は7月29日午後、札幌地裁805号法廷で開かれた。
この日の弁論は、原告側が提出した第2準備書面をめぐるやりとりが中心となった。最初に原告弁護団の竹信弁護士が要旨を説明した。第2準備書面は、札幌訴訟の核心となる重要な主張であり、櫻井氏が書いた雑誌記事6点の17個所にわたる名誉棄損表現のどこが「摘示されている事実」にあたるかを具体的に整理している。この主張に対して、岡山忠広裁判長が、一部は「事実の摘示」というよりは「論評」と読めるのではないか、また今後、「論評」による名誉棄損表現も加えるのかどうか、とやわらかな口調で質問した。さらに、被告側からは準備書面の中の重複した記述など細かな点について質問があった。結局、裁判長も含め、双方のやりとりが10回ほどあった。この回数は前2回に比べ倍増している。裁判は重要な段階に達していることが傍聴席にも伝わってきた。
開廷は午後4時20分、閉廷は同40分だった。開廷は定刻から50分ほど遅れた。被告側弁護士2人が搭乗した東京からの飛行機が機材繰りで延着したためだった。
この日も地裁1階の会議室には傍聴券を求める長い列ができた。73の座席に対して107人が並び、倍率は1.5倍の高率だった。
裁判の後の報告集会は、午後5時から地裁近くの札幌市教育文化会館で開かれた。
はじめに「植村裁判を支える市民の会」共同代表の上田文雄・前札幌市長があいさつしたあと、小野寺信勝弁護士による裁判報告があった。小野寺さんは、「裁判は非常に重要な局面にさしかかった」と述べ、名誉棄損訴訟における「名誉」の定義、その判断の枠組み、「事実の摘示」と「論評」の区別について、パワーポイントを使って詳しい説明をした。そのあと、植村隆さんがソウルの「少女像」をめぐる韓国内の動きを紹介し、韓国政府が設立した「慰安婦財団」が抱える問題点についてコメントした。
つづいて、野田正彰さん(精神病理学者、京都市在住、北大卒)が講演した。演題は「日本軍の性暴力」。精神科医として中国の「慰安婦」被害者を治療・診察・鑑定した経験をもとに過酷で悲惨な「虜囚」の被害を語り、「日本軍はなぜここまで暴力化したのか」、「日本人はきちんと反省をしたのか」と問いかけた。そして最後に、櫻井よしこ氏の言動を厳しく批判し、「自己の生き方や感情を隠してただわめくだけのひとが政治、社会を牛耳っている」「個の感情を国民全体のものとしようとしている、これこそが全体主義だ」と語った。
集会のしめくくりは、東京からかけつけた「支える会」共同代表の崔善愛さん(ピアニスト)。指紋押捺拒否にかかわる自身の訴訟で最高裁まで争った体験を語り、植村さんを支援することの意味を熱く語った。
下=この日の発言者。左から、上田文雄さん、植村隆さん、野田正彰さん、崔善愛さん。